第2部




────ピッ ピッ ピッ ピッ⋯



年が明けても尚なんの変化もなく時を進める深夜の某小学校。しかし、不可解な機械音が小学校の奥の倉庫から響き渡る。いつもの如く集まったお化け達はその音のする方へ向かい、その音の正体を目の当りにする。



────ピッ ピッ ピッ ピッ⋯



「⋯⋯何これ?」



ドラム缶とコードで繋がる謎の機械、漂う臭いと機械音。それだけでソレが何かをお化け達は薄々と感じていた。



花子さん「コレってさぁ、」

テケテケ「あれ、だよね⋯。」

ヒキ子さん「⋯⋯爆弾?」


「「やっぱりィイイ!?」」



そう、怪しげなその機械は爆弾である。なんの変哲もない土地に建つ小学校に何故爆破装置が音を立て設置してあるのか。お化け達は初めて目にする物騒な物に悲鳴を上げる。


テ「なんか音鳴ってるー!」

花「これガソリン入ってるじゃん!」



口裂け女「一体何を騒いでいて?」


テ「く、口裂けさん!」

花「今すぐ逃げて!」

口「は?」


そこで遅れた口裂け女が騒がしい倉庫室へやって来た。お化け達はこの現状をなんとか説明しようとするがすっかりパニックに陥ってしまっている。


テ「ばっ、ばばば⋯っ!」

花「あばばば⋯!」

口「はぁ?一体何を言いたいの?」

ヒ「⋯⋯爆弾です。」

口「え⋯?」


流石の口裂け女も爆弾なんてそう見た事もない。ヒキ子さんの言葉にタラリと冷や汗を流す。



口「一大事じゃないの!」

テ「だからどうしよ~!」

花「花子まだ死にたくないわ~!」

口「貴女一度死んでるじゃない!」


ギャーギャーとパニックが渦巻く倉庫室、その中一人冷静なヒキ子さんは設置されている爆弾を調べ始めた。



ヒ(⋯⋯コードがドラム缶の底に貼り付けられている⋯。それにドラム缶にこれだけ一杯にガソリンが入っていると⋯コードのみ引っ張り出すのも不可能⋯。⋯私達だけだと重くて遠くに持ち出せない⋯。静電気でも発火してしまうから迂闊に手を出せない⋯。)



ドラム缶一杯に満たされたガソリン、爆発装置に繋がるコードはその底に貼り付けられ引っ張ってもしっかり固定されていて離れない。迂闊にコードを切ってしまえば即座に爆発してしまうかも知れない。打つ手なしだ。



ヒ(⋯⋯どうすれば⋯。)







注射男「あー、何か暇だなー。」

さとるくん「そうっすねー。眠くなって来ちゃう。」

太郎くん「ねーねー、チョコ食べるとねむくならないんだって~!」



そんな中。何も知らない男子御一行が倉庫付近まで歩いて来ていた。



怪人アンサー「⋯ん? 何かおかしな臭いがしないか?」

注「あ?そういや何か騒がしいしな…」


テ「あっ!アンサーさん(達)!」

注「他は(達)かよ。」


口「貴方達!この部屋に爆弾があるわ!」


「「「 なっ⋯、何ィイイ!!!!? 」」」



そして男子メンバーにも爆弾の存在が知らされた。力も度胸もある男が居るだけで心強い、そう思われていたのだが…


注「どーすんだよォオ!」

太「こわいよーっ!!」

花「あ、アンタ男でしょ!しっかりしなさいよ!」


ヒ(⋯⋯面倒が増えた⋯。)



男子メンバーもパニックになり、ヒキ子さんの思う通り面倒が余計に増えただけであった。爆発装置も変わらず音を立てている。そんな中男子メンバーの中で冷静さを保っている怪人アンサーは何かに気付き爆発装置の前に居るヒキ子さんの元へ行く。



怪「 ヒキ子、少し良いか?」

ヒ「⋯⋯ハァ⋯なんですか?」

怪「⋯その明らかなる拒絶を止めて貰えないか⋯。私でも流石にへこむぞ。」


今の所冷静な怪人アンサーとヒキ子さんだがどうも合わない。威圧感を醸し出すヒキ子さんに仕方なく溜め息を吐きつつ、何処からとも無く出したドライバーで爆発装置の蓋を外し始めた。蓋を開けると時間が刻まれたデジタル時計の様な画面と箱の中にぎっしりと詰め込まれたダイナマイト、更に張られた5色のコードが顔を出した。


怪(成程、ダイナマイトか。何処で入手したのやら⋯。指定時刻に自動で発火する仕掛けだな⋯。しかもガソリンを満たしたドラム缶にも繋がっているから爆発の規模も相当だろうな⋯。
そしてこの赤、緑、黄、黒、青の5色のコード…、どれか一本を切ればコレが停止すると言う事か⋯。)



冷静に爆発装置を分析する怪人アンサー。大量のガソリンと爆発装置とドラム缶を誰もいない冬休みに持ち出した。犯人も特定出来ない。爆発装置に刻まれた指定時刻は刻々と進んでいる。




怪「おい、爆発指定時刻まであと20分しか無いぞ。」


「「「「えぇええええー!!!!!!? 」」」」


怪「落ち着け、その先が重要だ! 爆発装置内部にある5色のコードのいずれかを切断すれば起動停止する!」

「「「「お、おおー⋯。」」」」

テ(アンサーさんカッコイイ⋯!)



5色のコードの一本は起動停止のコード、それ以外は起動開始。間違えてしまえば一巻の終わり。見つけた者を嘲笑う様な実に意地悪な仕掛けだ。



怪「⋯という訳で何色のコードを切るか!」

花「ハイ、赤。」

太「みどりー」

テ「黄色?」

注「じゃ黒か。」

さ「イヤ青?」

怪「バラバラだなやはり。」


しかし個性の濃いこのメンバーの意見は合う筈もなく見事に意見はバラバラに別れてしまった。


口「じゃあどうすれば良いのよ!」

注「仕切ってんじゃねーよアラサー怪人!」

怪「アラサー言うな!」


ついに仲間割れしギャーギャーと騒ぐ始末。時間は止まることを知らず爆発装置は音を立てる。その時、どこからか爆発装置以外の音が聞こえた。



⋯⋯プルルルルル プルルルルル…



それは電話の着信音だった。ヒキ子さんはいち早くそれに気が付いた。



ヒ「⋯こんな時間に電話⋯?」

さ「どうしたの?ヒキ子ちゃん。」

ヒ「⋯電話が鳴ってます⋯。」

さ「ホントだ⋯。隣の職員室からかな。」


倉庫室の隣の職員室から着信音が鳴っていた。冬休みの学校、ましてや深夜に誰が電話を掛けているのか。さとるくんとヒキ子さんは倉庫室から顔を覗かせる。


怪「私が出よう。電話の対応なら私が適任だ。それに 犯人からかも知れん。」

さ「アンサーさん⋯!大丈夫なんすか!?」

怪「ああ。お前達はあいつ等を頼む。」


今の所比較的頼りになっている怪人アンサーが謎の電話に出ると名乗り出た。パニックになっている仲間を任せられた中学生2人は心配そうに顔を見合わせた。




⋯プルルルルル プルルルルル


職員室へ入った怪人アンサーは着信音を鳴らす電話機を手に取った。画面には非通知と記されている。


怪「⋯もしもし?」

『あ 通じた。やっぱ宿直いやがったか。』

怪(変声期で声を変えているな。⋯と言うか冬休みに宿直など居る筈がないがな⋯。取り敢えず職員のふりをして話を聞き出すか。)


電話を掛けたのはやはり犯人からだった。怪人アンサーはまず何も知らないふりをし爆発装置解除のヒントを得ようと試みる。



怪「何の事ですか?」

『隣の教室にちょーっとした爆発ブツを、な。』

怪「何だって!?(思っていたよりも馬鹿正直⋯、いける!)」



怪「お前は誰だ? 」

『ま、簡単に言やここの卒業生さ。恨みがあンのよ、昔っから。』

怪「何が目的なんだ!」

『恨みを晴らす為に決まってらぁ!闇ルートで高く買ったダイナマイトでのこら一帯を更地にしてやるンだよ!』

怪(本当に良く喋るな⋯。この犯人は馬鹿なのか?しかし私が質問してばかりだと 何も得られない…、せめて奴が私に質問を投げ掛けたら一番良いのだが⋯。)


犯人は声色を変え身元が割れていないのを良い事にこの小学校での悪い思い出話をベラベラと語る。怪人アンサーの“質問されると答えが脳に浮かぶ”能力で爆発を止めたいのだが時間が無駄に過ぎて行く。犯人が自分に質問する様に怪人アンサーは促す。


怪「止めろ、本当にお前は誰なんだ!」


『⋯⋯誰だと思うか?』

怪(⋯犯人の顔、名前、住所は分かった⋯、ここから結構近いな。後は爆発装置の停止コードの色か⋯。)


犯人の個人情報は確定した。しかしこれでは何の進展もない。お化け達は犯人を捕まえる事が目的ではないからだ。



怪「頼む、教えてくれ。どうしたら止まるんだ!」

『誰が教えるかよバーカ!⋯ま、強いて言うなら装置の中にあるコードのどれかを切るだけだけどな。』

怪「本当か!」

『だけどコードは5本、アタリは一本だけだ。』


被害者の職員のふりをしながら焦る演技を続けていた怪人アンサーだが、いよいよ本格的に焦りを見せた。時間があと残り5分弱に差し掛かっているからだ。


怪(このまま私に質問してくれ⋯!)



『⋯さーて、どれが正解でしょう?』


「⋯!!」



最後の最後に発した犯人の発言に怪人アンサーは目を見開いた。そして静かに微笑んだ。



怪「貴様に1つだけ 言わせて貰う。」

『は?』


「今の内に笑っていろ。そして後に激しく後悔するが良いその行いをな⋯。」



最後に一言を残し電話を切った。そして電話を終えたにも関わらずある電話番号を押した。

一方その頃の倉庫室では⋯。




注「あと1分しかねぇよぉお!あのアラサー怪人何ちんたらしてんだよぉナメやがって!」

さ「注射男さん落ち着いて!」

注「落ち着いてられるか!まさかあの野郎1人でさっさと逃げやがったんじゃ!」

さ「絶対ないっすからぁ!」

注「あと40秒だぞコラァ!」



注射男を筆頭にまだパニック状態であった。


注「くっそー⋯こうなったら勘でどれか一本切るしか⋯。」

さ「それだけはらめぇええ!」

花「アンタがヤル気出すとロクな事ないじゃない!」

口「あと20秒しかないわよ!」

太「うぇえん怖いよーっ!」

注「死ぬ時は皆⋯一緒だぜ⋯」

花「何言ってんのバカ!」

テ「縁起悪い事言わないで!」

ヒ「⋯⋯!!」


注射男はニッパーを適当なコードに当てがう。残す所あと10秒となった爆発装置は激しく音を鳴らす。あと9秒、8秒、7秒⋯



怪「お前達!黄色だ!」





あと3秒、2秒、




────パチン!




1秒⋯⋯。



「「「「「 !!!!!! 」」」」」





お化け達は目を瞑った。しかし何の変化もなく、ゆっくりと目を開ける。ニッパーで切られたコードは偶然にも黄色だった。



注「⋯⋯と、」

怪「と、」

「「「「「 止まった~~!!!!!! 」」」」」



お化け達は歓喜した。注射男が勘で切ったコードによって爆発装置は見事停止したのだった。



口「もう、本当心臓に悪いわね。」

テ「でもみんな無事でよかった~。」

注「な!俺が止めたんだぜ!どうだスゲーだろ!?」

花「なによ、ぎゃーぎゃービビってたくせに!」

注「う、うるせー!」

太「あれ?パトカー来たよ?」

怪「ああ。犯人の身元が分かったんでな。通報しておいた。」

さ「流石アンサーさん!頼りになる~!」

ヒ「⋯では後は警察に任せて帰った方が良いですね⋯。」

テ「そうだねぇ。」

口「もう夜明け前だものね。」

花「にしても怖かったわ~。」


テ「それじゃあ⋯」



「「「「 また明日! 」」」」




お化け達は静かに校舎を後にした。この後、小学校に爆弾を設置した犯人は見事逮捕。犯人は「宿直に恐ろしい発言をされた」と供述したそうだが宿直など居なかったと小学校側から言いくるめられたそうだが、電話の通話記録は残っており、 警察の調査でも爆発装置を停止した者の正体も分からぬまま謎だけを残した。この事件はいずれか忘れられる。


まさかお化け達がこの爆弾と対峙したなど誰も信じられない話なのである。そして平和の戻った小学校に今夜もまたお化け達は集うのだった。




END
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