第1部



深夜12時。この時間帯となれば学校内は氷点下に値する寒さとなる。
さて、そんな身も凍りそうな中お化け達は​───




花子さん「ふぇ⋯っくゅん!!」


テケテケ「花子ちゃん大丈夫?」

花「あ〜〜寒っ⋯」


お化け達もこの寒さに正直参っているようだ。
先程からくしゃみを連発する花子さんにテケテケはティッシュを差し出す。


花「うぅ⋯ありがと⋯。ずびー」

テ「花子ちゃん風邪?」

花「たぶん⋯」

口裂け女「あら、馬鹿でも風邪を引くのね?」

花「何ですって!?」

テ「口裂けさん、今日だけは勘弁してあげて?ね?」


口裂け女はいつもの様に花子さんをからかう。そんな彼女を庇うテケテケ。花子さんは言い返す最中にもティッシュで鼻をかみ続ける。


口「⋯それにしても、今年は凄い寒さね。私も凍えてしまいそうだわ。」

テ「北海道は毎年こんな感じだったなぁ。」


お忘れかも知れないがテケテケは北海道出身の都市伝説。冬の寒さには慣れたものである。


花「う〜もう無理、コート着よ⋯」

テ「あ、花子ちゃんコート似合う〜!ふわふわで可愛いよ〜!」

花「ああ、ありがと。」

口「ふん。私もコートは沢山持っていてよ。ほーら、美しいでしょう?」


口裂け女は自慢気にトレードマークの真っ赤なロングコートを翻す。


テ「素敵だよね〜。良いなぁ。私は長い丈の着れないから⋯」

口「あら、短いのデザインも素敵よ?貴女も着ると良くってよ。」

テ「私はマフラーだけで良いよ。あと霜焼けするから手袋と。」

花「あんたも可愛い系似合うわー。」

テ「本当?ありがと〜。パステルカラー好きなんだ〜。」


珍しく女子会な雰囲気のお化け達。
そんな中、口裂け女はぽつりと呟く。


口「でも冬場はこたつで暖を取りたいものね。」

テ「あー、良いよねこたつ!。暖かくて!」

口「でしょう?学校の備品は使えなくても こたつさえあれば何とか乗り切れそうよ。」

テ「だよねぇ。」

花「でもそのこたつを誰がどこから持って来るのよ。」

テ「そうだね⋯。うーん、どうしよう⋯。」



頭を抱える3人のお化け達。そんな彼女らを陰から見る4人のお化け達が​──────




注射男「口裂けさんはこたつを欲している!?」

太郎くん「は、花子ちゃんが風邪⋯!?」

怪人アンサー「テケテケは私が暖めてやらねば⋯!!」

さとるくん「ヒキ子ちゃん⋯まだ居ないきっとどこかで寒がっているかも⋯!?」



女子メンバーに想いを寄せる、毎度お騒がせな男子メンバーである。
彼らで身を寄せ合って教室を覗いていた。


さ「僕らでこたつ作ってプレゼントすれば良いんじゃないっすか?」

怪「おお、良い考えだな。しかも好ポイント獲得のチャンス⋯」

太「さんせ~い!」

注「きっと口裂けさんは俺に!ハァハァ…」



怪「よし、では早速炬燵製作を開始しよう!」


「「「お~~!!」」」





花「へっ⋯くちゅん!!」

口「くしゅんッ」

テ「⋯くちっ!」


口「あらやだ、私も風邪かしら?」

花「さっむ⋯」

テ「皆大丈夫?」


女子メンバーはそんな男子メンバーがこたつ製作をしているとは、知る由もなかった。




そして数時間後────


太「できた~~!!!」

注「これで口裂けさんは⋯ハァハァ」

さ「これでヒキ子ちゃんも寒くない!!寧ろ猫耳も付けてにゃんこ化に⋯!」

怪「私もテケテケと共に冬越しを⋯!」

漸くこたつが出来上がり、妄想を膨らませながら4人でわいわいと騒ぐ。
因みに彼らが作ったこたつの材料は勝手に学校内の備品を拝借している。


注「早くこのこたつを口裂けさんの所へ⋯!」

怪「待て、早まるな。我々が行った所ですぐに追い返される。」

さ「そうそう近くに置いときましょーよ。」

太「僕も早く入りた~い!」


未だ騒いでいる男子メンバー。すると――――



花「もっと暖かい所ないわけ~!?」

口「子供は風の子って言うでしょう。それくらいの寒さに負けてどうするの?」

テ「やっぱりどこも暖房も付かないね⋯。すぐいいとこ探すから⋯。」



男子メンバーの近くから愛しき女子メンバーの声が。先程までわいわい騒ぎ立てていた男子メンバーは急に慌て出す。



怪「おい貴様達、あくまで自然だぞ、自然に!」

注「ああああ、なんてコートが似合うんだ口裂けさん…!」

太「お、押さないでよぅ~」

さ「ヒキ子ちゃんは!?まだ来てない!?」


あわふためく男子メンバー。果たして彼らのこたつで好ポイント獲得作戦は成功するのか────


テ「あ!」


「「「「!!!?」」」」



テ「ヒキ子ちゃん!」

ヒキ子さん「⋯⋯どうも⋯。」



そこへヒキ子さんがいつものように遅れてやって来た。


さ「ヒキ子ちゃ⋯んむ!?」

怪「落ち着け、まだ早い。」


壁一枚を挟んで会話に聞き耳を立てる男子メンバー。他人が見たら明らかに挙動不審である。



テ「ヒキ子ちゃん、誰か引き摺ってたの?」

ヒ「⋯いえ⋯。⋯皆さんに、これを⋯」


ボソボソとか細い声でヒキ子さんは後ろから何かを引き摺って来た。人間よりサイズの大きいそれは、


花「あー!こたつ!!」


(((( え!!!!? ))))



なんとヒキ子さんはこたつを引き摺って持って来たのだ。


テ「重かったでしょう?どうして?」

ヒ「あの⋯最近毎晩寒いので⋯持って来たんです⋯。」

花「ありがと、ヒキ子〜!!」

ヒ「!?⋯え、えと⋯」


口「わざわざご苦労かけたわね。」

ヒ「いえ⋯大丈夫です⋯。」



ヒキ子さんの機転にきゃっきゃとこたつを囲む女子メンバー。そんな彼女らとは裏腹に男子メンバーは⋯


怪「はは、終わった、な⋯」

さ「僕たちの努力は一体⋯」

太「ふえ~ん⋯」

注「口裂けさんとの愛の物語が~⋯」


暫くはショックで立ち直れない男子メンバーであった。

そして──────




花「暖か~い!」

テ「本当、なんか懐かしい~。」

ヒ「あの⋯みかんも⋯、持って来ました⋯」

口「あら、気が利くわね。一つよろしくて?」



こたつのお陰で冬を乗り越えそうなお化け達なのでした。
因みに男子メンバーが作ったこたつは彼らが使う事によって意味を成したのであった。


END
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