第2部
都市伝説のお化け達が行動するにはまだ早いある昼下がり。とあるお化け二人が同時に一時の眠りから目を覚ました。そして、目覚めた自分に置かれたある状況を見て同時に叫んだのだった。
「「なんじゃこりゃあぁあぁあああ!!!」」
時は進み深夜0時───
口裂け女「はぁ!?」
テケテケ「まさかそんな事って⋯」
ヒキ子さん「⋯⋯⋯。」
花子さん「あ、ありえない⋯!」
注射男「そのまさかだ。」
怪人アンサー「まさか、な⋯」
注「“私”と」
怪「“俺”が」
「「入れ替わるなんてな。」」
今までにない大事件。どういう訳か注射男と怪人アンサーの精神と身体が突如入れ替わってしまったのだ。
花「一応聞くけど、注射男の身体だけど、中はアンサーなのね?」
怪(注)「ああ。」
注(怪)「名前表記も面倒臭くて堪らんな、全く。」
口「何故いきなりそうなったのよ?まずは説明なさい。」
怪(注)「はいっ口裂けさん!」
テ「アンサーさんが見たことない表情してる⋯」
怪(注)「どうもこうも、昼間寝てて起きたらこうなってました!」
注(怪)「右に同じく。ただし寝ていた場所も違う、心当たりも1つもない。」
花「うん、全っ然分からん。」
テ「あ、でもアンサーさんならこっちから聞けば能力で答えられるんじゃないのかな?」
注(怪)「いや、脳も注射男のものなのだ。精神のみ入れ替わっては能力も使えなかった。」
口「じゃあ逆に注射野郎は出来るんじゃなくて?」
ヒ「⋯多分互いの能力は切られていると思いますよ⋯。」
怪(注)「ああ、さっぱり使えねぇ。何聞かれても特に何もなし。」
花「もー!どうすれば良いのよー!」
解決策を話し合ったが、唯一謎解きの頼みの綱であった怪人アンサーの能力も封じられている状態では最早打つ手はなく、このままでは本業である都市伝説としての活動もも中止せざるを得ない。暫くその状態で待機と言う消極的な結果となった。
さとるくん「それにしてもカオスだよね~。」
太郎くん「なんで注射お兄ちゃんとアンサーさん入れ替わっちゃったのかなー。」
怪(注)「口裂けさーん、こんなヘタレアラサー怪人の身体になっても俺のこと嫌いにならないで下さいね?」
口「うっ⋯、怪人アンサーの声でそんな敬語なんて嫌ねぇ⋯。」
注(怪)「そ、そうだ!気持ち悪い!私の身体で口裂け女に触れるな!!」
怪(注)「あ!?んだとテメー!半分脳みそ出ててキメェんだよ!脳みそがスースーすらァ!!」
注(怪)「帽子を外すな!デリケートなんだぞ!それに貴様こそこの包帯が邪魔なのだ!外すぞ!?」
怪(注)「俺だって包帯無くて落ち着かねぇんだ!よこせ!!」
さ「ちょw ワロスw 草生えるわこれww」
ヒ「⋯生やさないでください。」
花「いつも以上に相性悪いわね、あいつら。」
テ「あ、アンサーさん⋯」
注(怪)「く⋯、視界がこうも違うと立っているのもままならんな⋯」
テ「大丈夫⋯?」
注(怪)「ああ大丈夫だ、さち⋯、⋯⋯!」
テ「え?」
注(怪)「⋯アイツの声でお前の名も呼べん⋯。」
テ「⋯!! (注射男さんの身体なのにキュンってしちゃったよ⋯!)」
今までにないこのシュールな光景。入れ替わってしまった本人達同様、その周辺人物達にもその影響は大きい。
花「さっさと元に戻らなきゃメンドーそうね。」
口「本当、調子狂うわ。」
さ「僕的には面白いっすけどねw」
ヒ「⋯⋯何か一つでも原因となる共通点がある筈なんですけど⋯」
テ「え?どう言う事?」
ヒ「⋯勘、と言いましょうか。昼間の間にお二人に何か些細な事でも⋯、変わった行動か何かがあれば解決策に繋がると思うんですけれど⋯⋯」
怪(注)「あ。」
太「どーしたの?」
怪(注)「んや、行動とかじゃねーけど、変な事ならあったわ。」
花「マジで?」
怪(注)「ん。昼寝してた時、変な夢見てよ。アンサー出て来たのは覚えてるんだけど⋯、後は忘れた。」
注(怪)「む?それなら私も眠っていた際、夢に貴様が出て来た気がするぞ。」
口「確かに共通はしてるわね。」
花「これが原因だって言うの?」
ヒ「⋯夢⋯⋯。成程、繋がりました。」
テ「ヒキ子ちゃん、もしかして何か分かったの!?」
ヒ「⋯⋯はい。」
新たに入った情報、“互いの夢に互いが登場した”。そして推理するヒキ子さん。その僅かな情報で原因の核を導き出した。
ヒ「⋯この入れ替わりは、ある方の能力で意図的仕組まれています。」
「「「「えええっ!!!?」」」」
ヒ「⋯⋯まあ詳しくは“犯人”に聞きましょう。⋯今頃この近くで高らかに傍観しているんでしょう?」
太「ヒキ子お姉ちゃん探偵さんみたーい!」
さ「果たしてその犯人とは!続きはCMの後!」
花「いや今言わせなさいよ。」
ヒ「⋯⋯⋯犯人は⋯、」
((((ごくり⋯))))
?「はいはい、私でぇーす。」
テ「え!?」
口「はぁ⋯!?」
ヒ「⋯やっぱり見ていたんですか。悪趣味⋯。」
怪(注)「一体どういうつもりだよ!?」
注(怪)「貴様⋯!こんな事をして⋯!」
そこへ、へラッと笑いながらやって来た人物....もといこの入れ替わり事件の犯人とは⋯、
「「猿夢!!!!」」
猿夢「お久しぶりですねぇ、皆さん。」
なんと、犯人は猿夢であった。
花「え、なんで!?」
テ「ヒキ子ちゃん⋯、」
ヒ「⋯お二人の見た⋯⋯いえ、見せた“夢”。それが全ての元凶ですよね⋯。」
猿「ええ。よく分かりましたねぇ、森妃姫子。」
ヒ「⋯見せた夢を“現実化”させる⋯、それが貴方の能力なんでしょう?」
さ「夢を、“現実化”⋯?」
都市伝説としての猿夢の一説では、猿夢の見せた夢の中で殺されてしまえば現実でも死んでしまうというものがある。それが能力ならば夢の中で注射男と怪人アンサーの身体を入れ替えれば、現実でも入れ替わってしまうと言う事だ。
注(怪)「確かに⋯、うろ覚えではあるが夢で入れ替わっていた様な⋯気もするな⋯。」
怪(注)「くそが⋯、何が目的だよ!さっさと元に戻せ!」
猿「えー?折角面白いのにぃ。」
怪(注)「はぁ!?毒薬注射(さ)すぞテメー!」
注(怪)「まぁ落ち着け、言い訳だけでも聞こう。」
猿「言い訳も何も、最初から意味なんて無いんですけどねぇ~。」
怪(注)「やっぱ注射(さ)すぞコラ!?」
猿「まあ簡単に言えば怪人アンサーで遊びたかっただけですよぉ。」
注射男の身体ではあるが怪人アンサーの全身に鳥肌が立った。猿夢は以前悪夢電車に招待した際に反抗的な態度を取られて以降 何故か怪人アンサーを気に入っているのである。
猿「でも夢に招待した所でさっさと帰ってしまうでしょう?折角いたぶりたいのに帰ってしまわれればつまらないじゃないですかぁ。
だったらマゾヒストと噂の注射男と身体を入れ替えて外見は怪人アンサー、中身は注射男で私も彼もオイシイ思いをしようかと。」
「「⋯なん⋯っだそりゃあああ!!!!」」
怪(注)「何考えてんだこのクソ猿が!俺のドMは口裂けさん限定なんだよ!!なんでコイツのクソ性癖の為にいたぶられなきゃいけねーんだよ!」
注(怪)「貴様の“遊び”には毎回死ぬ思いをするのだ!脳以外の損傷は致命傷に至らないにしても痛い事には変わりは無い!帰るに決まっている!」
猿「そんな二人がかりでディスらないで下さいよぉ~。」
口「呆れた⋯。」
花「なんも言えないわね。」
テ「いつもそんな事されてたのアンサーさん⋯」
さ「てかあれからもちょくちょく招待されてたんすね〜。」
猿「仕方無いですねぇ~、元に戻してやりますよ。」
怪(注)「お、話分かんじゃねーか。」
注(怪)「早く戻せ。」
あっさり元に戻すと宣言した猿夢。しかしパッと明るい表情を見せたかと思えば、ニヤリと舌を出し人を嘲笑ういつもの表情に戻った。
猿「ええ、いいですよぉ~。一通り遊んでから♪」
「「え?」」
猿「いっそのこと、二人まとめて可愛がってあげます♪ さぁ一緒に悪夢電車へ参りましょう♪」
「「ぎゃあぁあああ!!!?」」
がっしりと注射男と怪人アンサーを捕まえ、猿夢はそのまま笑みを崩さぬまま某小学校から姿を消した。入れ替わったままの二人の断末魔の様な悲鳴を残して。
ヒ「⋯⋯⋯⋯事件、解決。」
花「って何そのカメラ目線で無表情なドヤ顔!?」
さ「自信満々なヒキ子ちゃんも可愛いー!!」
太「ヒキ子お姉ちゃんカッコイー!」
テ「大丈夫かなアンサーさん⋯、と注射男さん⋯。」
口「ご愁傷様ね。」
あの後あの二人は猿夢に一体何をされたのか⋯、後日、元の姿に戻った二人に問いただしても二人は青ざめたまま何も語らなかった。
しかし猿夢は満足したのか、この身体が入れ替わるという珍事件はもう二度と起きる事はなかった。
END