第2部
寒さが続く毎日。風邪やインフルエンザが流行る季節でもあり予防接種が必要となる。某小学校の保健室にて、ここでもある人物による予防接種が行われようとしていた。
注射男「て事でお前ら、一列に並べ。」
花子さん「い・や!!」
太朗くん「注射こわいよ〜!!」
注「何だよガキんちょだな。一瞬だぜ、こんなん。」
注射の扱いとなるとこの男、注射男。しかしいざ始めようとしても注射器の針が体に刺さるという感覚はは子供にとって恐怖の塊である。
そして嫌がる理由はもう一つ。
口裂け女「貴方がやるとなると信用出来ないのよ。」
怪人アンサー「安全性に欠ける。」
ヒキ子さん「⋯⋯説得力皆無です⋯。」
さとるくん「毒薬しか調合しないのかな~とか思ってたっす。」
テケテケ「私も注射はちょっと苦手かな⋯。」
注「ンな皆してディスるなよ!俺だって一応医師免許持ってんだぞ!大学出てるし!」
「「「「へー。」」」」
注「ひどくね!?」
そもそも注射男と言う都市伝説は道行く子供に接近し毒薬を注射すると言うもの。確かに信用も安全性も説得力もない。注射というその恐怖こそ都市伝説・注射男たる所以なのだが。
怪「そもそも医師も薬剤師も製薬業もどれも職業としては別物だろう。何故薬品の調合が出来るのだ。」
注「分かってらいそんな事。俺が天才だからに決まってんだろ。」
花「信頼感がないのよ、信頼感が。」
太「こわいよ~。」
さ「あ⋯、じゃあ最初は僕がしよっか?」
そこへさとるくんが第一犠牲者の名乗りを挙げた。皆の不安が募る中、彼自身も緊張しながら椅子に腰掛けた。
注「つか知り合いのよしみでタダで注射して貰えるんだぜ?普通に病院行くと正規料金かかるんだぞ。」
さ「お、お願いしまーす。」
袖を捲り消毒液を染み込ませたコットンで腕を拭き、慣れた手付きで針を射し注射を完了させた。その姿はさながら本物の医師の様だった。
注「ほい、終わり。」
さ「うわ、ほとんど痛くなかった!」
注「だから言っただろ。」
花「それで毒薬だったら意味ないわよ。」
さ「大丈夫、大丈夫。ほら生きてるし。」
注「俺の毒薬は即効性だからな。次!」
嫌がる花子さん、怖がる太朗くんと次々予防接種を済ませた。
注「次ヒキ子だぞ。」
ヒ「⋯生まれてから一度も病に伏した事はないので⋯。」
注「何だ怖いのか~?」
ヒ「⋯お願いします。」
結局全員が予防接種を受け、その日限りの診療所は夜明けと共に終了したのだった。
テ「なんか意外な一面を見た感じだね~。」
ヒ「⋯そうですね⋯。」
花「これでインフルになったらぶん殴ってやるわ。」
口「⋯⋯⋯。」
テ「どうしたの口裂けさん。」
口「⋯私弱いのよね、ああいうギャップ。」
「「ええっ!?」」
注「ま、マジっすか口裂けさん!!」
口「なっ!?盗み聞きしないで頂戴!取り消しよ!前言撤回!」
注「そんな~⋯。」
この冬、注射男の予防接種のお陰で誰一人インフルエンザにかかった者は居なかった。しかし数日後。
さ「注射男さんまだ来ないっすね。」
太「どうしたんだろ~。」
怪「心配するな。また口裂け女のストーカーでもしているのだろう。」
さ「それもそうっすねー。」
実は注射男のみ、インフルエンザにかかって寝込んでいたのであった。
END