第1部
お化け達は今日も某小学校に集う。
テケテケ「は~、寒くなったねぇ。」
口裂け女「本当ね。来週から雪が降る地域もあるそうよ。」
ヒキ子さん「⋯⋯寒いのは苦手です⋯。」
花子さん「うーむ⋯」
テ「どしたの、花子ちゃん。」
口「なかなか落ちない便器の汚れになら、あの洗剤よ?」
花「違うわよっ!」
変わらず他愛ない会話を始める女子達。その中、腕を組み唸る少女、花子さん。
「花子たち、本当にこのままで良いのかしら?」
「「「え?」」」
口「貴女、11月になるといつも変な事言うわよね。」
ヒ「⋯ネタ切れの季節ですから⋯」
テ「何か悩みとか?」
花「ん。毎晩毎晩、喋ったり遊んだりばっかしてるけど⋯はたして都市伝説のお化けとしてのプライドはあるのかしら?」
口「何がプライドよ。お子様がそんな事気にしていて?」
花「うるさい!ちょっと言ってみただけよ!」
ヒ「⋯都市伝説としてのプライド、ですか?」
テ「確かに私達の本業は⋯」
口「裂く。」
ヒ「引き摺る。」
テ「追い掛ける。」
花「驚かす。」
口「⋯で?」
花「い、いや、だから⋯」
注射男「なあアンサー、お前そのシルクハットちょっと外してみろよ。」
怪人アンサー「ん?構わないが、後悔するなよ?」
さとるくん「え、えー!?頭部半分無いじゃないっすか!脳ミソ剥き出しでグロい!!太郎くんは見ちゃらめぇえ!!」
太郎くん「えー?なになにー?」
花「⋯話反れたわね。まあ別に何でもないわ、忘れて。」
テ「アンサーさんの帽子の中身ってああなってたんだ⋯」
口「嫌なもの見たわ。」
ヒ「⋯⋯この作品が文章で良かった。」
何かを言いかけてはいたものの、男子メンバーの下らないやり取りを目にし話す気が失せたらしく、その夜はいつも通り現状報告と世間話、愚痴などを言い合っただけに終わった。
しかし、いくら幼い少女でも、花子さんが言った一言がメンバーの心に留まり底に沈んでいった。
花(なんであんな事言っちゃったんだろ⋯あたしのバカ。)
口(子供の癖に生意気言って⋯プライドくらい有るわよ、全く。)
テ(足の事とか⋯集まってる間は考えない時あったからな⋯。)
ヒ(⋯⋯毎晩が幸せで⋯あの時間は引き摺り回す快感を忘れていた⋯)
帰路に付く彼女達の心境。恐怖の都市伝説として恐れられていた記憶。楽しかった毎晩。寒空の下で彼女達は思う。
『自分達は本当にこのままで良いのか。』
その翌晩。学校に集まる者は誰も居なかった。
テ(皆待ってるかな⋯言い出しっぺは私なのに⋯)
そう。毎晩小学校に集まろうと言い出したのはテケテケである。
テ(引き寄せられる様に何となく学校に入って⋯そしたら女子トイレに花子ちゃんが居て⋯)
花(昨日のアレで行きづらくなった⋯、テケテケ心配してるかなー。⋯そう言えば初めて会ったのもテケテケだったな。急に現れて「何よコイツ!」って感じして⋯)
口(子供の発言に感情を左右されるのも癪だけど、プライドが無いと言われるのも癪だわ。大体、初対面から生意気なのよあの娘は!何となく学校に入ったからって自分のテリトリーだ何だ言って来て⋯)
テ(初対面で花子ちゃんと口裂けさんが喧嘩始めちゃったから 宥めてる内に3人で集まってお喋りしようって提案してみて⋯ )
花(しばらく3人で集まって話してて、それからヒキ子も来たのよね。)
ヒ(⋯今日の引き摺り回す獲物は⋯。⋯テケテケさん達はもう集まってるだろうか。
⋯初めて逢った時から皆は一緒に居て⋯傷だらけだった私を手当てしてくれて⋯沢山優しくしてくれて⋯嬉しかった⋯。)
口(人見知りだったヒキ子も馴染んで来て⋯と言うかあの子テケテケ大好きよね。花子も生意気言うけど 不器用なだけでまあまあ可愛い所もあるわ。)
テ(最初は仲悪かった口裂けさんと花子ちゃんも気が合って来たし⋯)
花(テケテケとか何となーくお母さんみたいで、一人っ子だったからヒキ子もお姉ちゃん出来たみたいだったし、口裂け女は⋯ただの遊び相手!
⋯⋯あれ?)
ヒ(⋯⋯私、こんな時でも皆の事ばかり考えてる。)
テ(やっぱり行かなきゃ⋯!)
口(この私抜きで盛り上がるなんてそれこそ癪だわ。)
ヒ(⋯皆に、逢いたい。)
花(来ないってんならあたしが迎えに行く!)
一度自ら離れてみて、彼女たちの思いが一つになった。『皆と一緒に居たい。』
彼女達は小学校へ向かった。
テ「あれ?」
花「ん?」
口「あら?」
ヒ「?」
いつもの小学校の校門前には、ついさっき来たかの如く4人が集まった。今まで4人で同時に来る事など滅多に無かった為、皆呆気にとられる。
テ「皆、今来たの?」
口「貴女達こそ⋯。花子は外に出て来てどうしたのよ?」
花「きょ、今日はちょっと遠出しようとしてただけっていうか⋯!」
ヒ「⋯一度本業に戻ってみようかと思っていたんですが⋯。」
花「⋯ごめん、花子が変な事言ったからでしょ?」
口「誰もお子様の言動に惑わされなくてよ。」
テ「ううん、でもお陰で大事な事に気が付けたの。」
ヒ「⋯私もです⋯。」
口「あら奇遇ね。私もよ。」
花「花子も⋯!」
テ「今までみたいに、皆で一緒に集まるのが一番楽しいな。」
花「もう一人じゃなくなったし。」
口「実を言うなら、妹達が出来たみたいで嬉しいのよ。」
ヒ「⋯私も、皆さんと居られる今が一番幸せです。」
その時。感情を表に出さないヒキ子さんが、口角を上げ目を細めた。
テ「⋯⋯! ヒキ子ちゃん!」
口「今⋯!」
花「笑った⋯!」
ヒ「え⋯?」
口「何よ、笑うと可愛いじゃないの!」
花「ね、もう一回!」
テ「本当!こっちまで嬉しい~!」
校門前で盛り上がる女子達にお約束の男子メンバー達が乱入した。
注「何だ何だ、しんみりしたり盛り上ったり⋯、まるで最終回みたいじゃねぇか。」
口「あら、今いい所なのよ。しっしっ!」
さ「あ、今回で最終回っすよー。」
「「「「えええぇえ!!!!?」」」」
注「って事でアンサー!告白しろ!」
怪「はぁ!?貴様いきなり何を言う!!?」
さ「最終回だから?」
注「おーいテケテケーアンサーが話あるってよー!」
怪「っておい!!」
テ「あの⋯?」
注「男ならいけー!」
さ「僕らが付いてるっすよー!」
太「よく分かんないけどガンバレー!」
怪「貴様ら調子に乗って⋯!!」
テ「アンサーさん?」
怪「っ、テケテケ⋯、いや佐知子!!」
テ「は、はいっ!?」
怪「好きだ!!私と交際してはくれないか!!」
注「言った~!!それでこそ男だ!」
さ「超カッコいいっす!」
注「惚れる!」
怪「やかましい!!」
口「あらあら、唐突ねぇ。」
花「どーするテケテケ~?」
テ「はい⋯ッ!ありがとうアンサーさん⋯!」
ヒ(⋯テケテケさんを不幸にしたら引き殺そう。)
男子メンバーに冷やかされ勢いのまま まさかの告白。怪人アンサーの想いは見事テケテケに届ける事が出来た。
そして更に場を盛り上げる人物“達”が────
車道男「良かったね~アンサー君♪」
トンカラトン「お前さん達はそういう関係だったのか。」
カシマさん「どうも。」
テ「車道くん!それに皆もどうしたの!?」
そう、現れたのは車道男とトンカラトン、カシマさんだった。
ト「どうもこうも、最終回と聞いたもんで飛んで来たさ。」
注「て言うかカシマも乗せて来るとか、お前ら付き合ってんの?」
カ「いえ断じて。」
車「途中で行き合ってはじめましてだったんだけど、イキナリ変な事言わされてさ~。」
ト「それが本業ってもんよ。」
口「何言ってるのよ。」
花「何か急に大所帯になったわね。」
夜の学校に集まった11人のお化け達。滅多にない光景である。
注「んじゃ全員集合って事で大告白大会!口裂けさん好きです!」
ト「いや俺の方が口裂けさん好きだ!」
さ「ヒキ子ちゃん好きだよ!」
太「花子ちゃんだいすき!」
「「「馬鹿じゃないの?」」」
車「お化けとしての初恋は佐知子だったりするんだよね~♪」
怪「何!? 渡さんぞ!?」
そして急に始まった大告白大会。これも今までにないイベントである。しかしお化け達は皆楽しそうだ
花「てか何この展開!」
ヒ「⋯⋯実に下らなく楽しい⋯。」
カ「いつもこうなんですの?ここの男達は。」
口「ええ、そうよ。」
テ「皆はお返事するの?」
口「ほほほ。すぐに返事したら、つまらないでしょう?」
花「そーそー。」
ヒ「⋯⋯そうですね⋯。」
日々の語らい、それが彼女達の望んだ日常。新たに強くなった絆を顔を出した朝日が出迎えた。
ヒ「⋯もう夜明け前ですね。」
花「って本当だ!」
口「もう帰らなきゃいけないわ。」
テ「そうだねぇ。」
かつては人々を恐怖に陥れ、恐れられて来た都市伝説。しかし、恐怖を無くして彼女達の存在は意味を成せない。しかし、この現代でほとんど語られなくなった都市伝説は彼女達にとって耐え難い事実。
そんな中の偶然の出会いが、友を呼び恋を呼び、様々な感情を与えられた。
現代ではあまり語られなくなった都市伝説の終着点。これこそが彼女達の最高の怪談である。
「それじゃあ、また明日!」
第1部 END