第1部
8月某日。季節は盆。人それぞれ故郷へ帰省する時期。しかしお化け達はそんな行事もお構い無しに某小学校へ集まっていた。
注射男「口裂けさんが居ねぇ。」
怪人アンサー「時期も時期だ、盆休みに実家にでも帰っているのだろう。」
さとるくん「そもそも実家があるんすかね?」
太朗くん「ちょっとさみしいねー。」
主役である女子メンバーを含まない、男子メンバーのみだが。
注「何が悲しくて男だけで集まって駄弁るんだよ!帰る!」
太「え~つまんないのー。」
さ「あ、あの、じゃあお互いの良い所教え合うってのどうっすか?」
怪「良い所?」
さ「特技とか⋯まあ要は自慢大会っすよ。」
注「男だけで自慢し合っても何も面白くねぇだろ。」
さ「あ、ほら読者にも良い所アピールして人気を得られるかもですよ!」
怪「メタ発言はスベるリスクが増えるから控えた方がいいぞ。」
太「よく分かんないけど面白そ~。」
こうして、男子メンバーだけの男の夜、自慢大会が幕を開けたのだった。
⋯ギーコギーコ、チリンチリン⋯
怪「む?何か聞こえるぞ。」
注「うわ、すげー嫌なデジャヴ⋯」
「トン、トン、トンカラトン⋯♪トン、トン、トンカラ、トン♪」
太「トンカラトンのお兄ちゃんだ~!」
注「ぎぇ~⋯」
トンカラトン「『ぎぇ』とは失礼じゃねぇか注射男。そんなに斬られたいのかい?」
注「うるせー。今日来ても無駄だったな、口裂けさんは居ねぇよバカめ。」
ト「ああ、そうかい。ならこの土産も要らないな。宮城のずんだ餅。
⋯所で何やらお取り込み中の様だったが何をしてたんだい?」
太「じまん大会ー!お兄ちゃんもやろ~!」
注「その前にずんだ餅よこせ。」
そして男達の自慢大会にトンカラトンも加わった。
さ「⋯と言う訳で何事も無かったかの様に注射男さんどうぞ!」
注「俺一番手かよ!まあ良いけどよ。俺は薬品の調合。あとはギターだな。」
怪「薬品はともかくギターは意外だな。」
注「おう、楽器はモテる男の代表だ。」
怪「何か勝手に弾き始めたぞ。」
ト「べらぼうめ!こちとら三味線歴15年だ!負けてたまるか!」
さ「セッション始まっちゃった。」
怪「軽く近所迷惑だな。」
太「二人とも上手だね~。」
?「全くだねぇ~」
「「うわっ!?」」
怪「お前はまた⋯」
車道男「前回に引き続きまた来ました、車道男だよ~♪」
そこへ車道男まで乱入した。男だけの自慢大会はまた一つ盛り上がりを増した。
車「特技か~。やっぱスケートだね。トリプルアクセルだって出来るんだぜ!」
怪「ローラースケートでも出来るのか。」
車「からのイナバウアー!」
注「さとるは地味だけど何か出来るか?」
車「あれスルー?」
さ「“悟る”事⋯っすかね。」
ト「何だい、それは。」
さ「うーん⋯、誰かがこれから言いそうな事とか、やりそうな事とかがなんとなーく分かるんすよね。⋯ヒキ子ちゃん相手だと分からないんだけど⋯。」
注「だからお前空気読める奴なのな。太朗はあるか?」
太「えっとね~、おそうじ!」
さ「そっかぁ、偉い偉い。」
太「えへへー。」
次々特技を言い並べて行く男子達。普段はお騒がせな彼らでも一つでも何か出来る事があるのだから驚きだ。
車「後言ってないのアンサー君だけだね。何でも出来そうだけど何かある?」
注「やっぱその知識豊富なアタマだろ?ハイハイ。」
怪「いいや?」
「「「え?」」」
怪「私は質問されるとその“答え”が脳にすぐ浮かぶ。それただを言っているだけなのだ。」
車「つまり?」
怪「私の脳に全ての知識が入っている訳ではない。」
さ「えええ!?そうなんですか!?」
ト「じゃあ試しに⋯口裂けさんは今何処に居る!?」
怪「岐阜県だ。地元の様だな。」
車「すげー!」
注「つか頭脳キャラに見せかけておいてそうじゃないとか、お前正にダメンズだな。」
怪「何がダメンズだ!お前が言うなトラブルメーカー!」
さ「他に特技とかないんすか?あ、ほら楽器とか!」
怪「ピアノなら⋯」
ト「おお、良いじゃあないか!」
さ「あ、僕はドラム出来るっす!」
車「あ、俺ベースやってた!てかメンバー的に出来るんじゃない?」
注「じゃあ俺らでバンドやろーぜ!じゃ早速⋯」
ト「馬鹿野郎!坊っちゃん寝ちまっただろう!起こす気か!」
太「すぴー⋯」
さ「じゃあヒキ子ちゃん達来るまで練習しましょうよ。」
注「ああ、そうだな!」
そしてその数日後。バンドを結成した男子達が女子メンバーを待っていたのであった。
注「バンド名は“ダメンズバンド”だぜ!」
END