第1部



6月になり、ついに梅雨入りする時期。毎日の雨の中、お化け達は某小学校に集まり、校舎の玄関にて日々の語らいを始めていた。


口裂け女「蒸し暑いわぁ、湿気が嫌ね。」

テケテケ「うん。私癖っ毛だから髪広がっちゃうな~。」

花子さん「何日も外で遊べないとつまんないわ。あんたはどう思う?」

ヒキ子さん「⋯雨は⋯⋯割と好きです⋯。」


梅雨の季節。女子は身なりについてより気を遣う季節だ。湿気により広がる髪など、悩みの種である。


テ「へえ、ヒキ子ちゃん雨好きなんだ。」

花「モノ好きもいるのね。」

ヒ「雨の中は⋯醜い顔を隠してくれますから⋯」

口「だからってこんなにずぶ濡れになって来たの⋯?」

テ「えー、ヒキ子ちゃんは可愛いよ。」

ヒ「えっ⋯?」

口「そうよ、私が認めるんだから間違いないわ。整った顔立ちをしていてよ。」

ヒ「⋯⋯⋯。」

テ「照れてる顔も可愛いよ〜。」



────ビチャ、ビチャッ⋯



花「ヒキ子が可愛いなら花子も可愛いでしょー。」

口「性格は可愛くなくってよ。」

花「何よー!」



───ビチャ⋯ビチャッ⋯



テ「もー、喧嘩は駄目だよ〜!」

口「可愛くないと言ったのは性格だけよ。」

ヒ「⋯⋯雨、強くなって来ましたね⋯。」



───ビチャ、ビチャ、ビチャ⋯



会話を続けるお化け達。そんな彼女達に近付く異様な音。


花「てか、さっきから向こうに何か見えない?」

テ「何か這ってる⋯? わんちゃんかな?」

口「犬はそんな動きしないでしょう。」

ヒ「⋯⋯人⋯?」

花「まっさかー。」

口「こっちに近付いて来てるわね。」

テ「何だろ⋯、人の割には随分小さいような…。」

花「花子、怖くなって来た⋯。」

テ「私も…。」



ビチャ、ビチャ、ビチャ、ビチャ⋯


「⋯⋯⋯あの」

「「きゃーーー!!!?」」


「申し訳ありません⋯、驚かせるつもりは、ございませんの⋯。」

口「人?」

ヒ「⋯⋯でも手足が⋯、」


「わたくし、カシマレイコと申します。」


カシマレイコ、もといカシマさんとは、夢の中にカシマレイコと言う両手足が欠損した女性が現れ、「足は要るか?」と聞いて来ると言う都市伝説だ。

このとき、「要らない」と答えると足をとられてしまうのだ。 しかしある呪文を唱えれば助かるらしい。


花「で、そのカシマさん?は何でここに来たの?」

カ「“アンサー”と言う方のブログで。」

口「またアンサーの野郎なのね⋯」


怪人アンサー「私の名を呼んだか?」


「「出たアラサー怪人。」」

テ「アンサーさん!」

カ「──ヒッ!?」

ヒ「⋯カシマ、さん?」


怪人アンサーの突然の乱入、彼の姿を見た瞬間、カシマさんの形相が変わった。


カ「おッ、おお、おとっ、男!?」


表情は恐怖に歪み、短い手足を必死に動かし怪人アンサーから遠ざかろうとする。


カ「わ、わたくし、男は苦手なんですの!!こっちに来ないで欲しいのです」


尚、カシマさんは終戦直後の混乱期に敵兵に襲われ、手足の付け根を銃で撃たれた後に列車に投身自殺をしたと言う。これはその一説であり、他にも軍人の男性であったりする等、様々な説が存在する。



花「キョクタンに男ギライな人っているのねー。」

口「色々あったのね。それにしても全身泥だらけじゃない。」

カ「這うしか移動の術がないのです。」

テ「すぐ綺麗にしなきゃ、風邪引いちゃうよ。」

ヒ「⋯⋯タオル持ってます。」

口「取り敢えず、こっちいらっしゃい。」

カ「あ、ありがとうございますわ⋯。」



新たに仲間入りを果たしたカシマレイコ、もといカシマさん。これから彼女達とどう関わっていくのやら⋯。


怪「はは⋯、私は置いてきぼりか⋯。」


雨は少しずつ止み、黒い雲は風と共に流れお化け達を見送った。



END
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