第1部
10月31日。ハロウィン。近所の商店街や街の店にもカボチャのランタンやお化けのモチーフの装飾を施しハロウィンムード。
そんな中、既にお化けである彼女達もハロウィンを楽しもうとしていた──────
花子さん「じゃじゃーん♪魔女っ子よ!」
テケテケ「わあ~!皆可愛い~!」
口裂け女「この季節に肌を露出するのは少し寒かったかしら⋯」
ヒキ子さん「⋯⋯似合っているんでしょうか⋯」
いつもの女子メンバーもハロウィンの仮装をし、手作りお菓子を持ち寄りハロウィンパーティーを開始させていた。因みに彼女達の仮装は以下の通り。
花子さんは魔女。口裂け女は黒猫。テケテケは天使。ヒキ子さんはシスターである。そして勿論、お約束の男子メンバーも⋯
注射男「なんてセクシーなんだ口裂けさん!!」
さとるくん「漸くヒキ子ちゃんのコスプレを拝めたよ⋯!尊い⋯!」
怪人アンサー「本物の天使にしか見えん⋯!」
太郎くん「うわ~い花子ちゃん可愛い~!」
花「やっぱ居るのねこいつら⋯」
口「もう恒例ね。」
テ「やっぱりパーティーは大勢居たほうが楽しいからねっ!」
ヒ「⋯⋯プリン美味しい」
口「それにしてもあいつらは仮装には参加していないようね。」
テ「さとるくんと太郎くんは着てるけど⋯」
花「あんた達いつも通りね」
怪「失敬な⋯。私も一応仮装くらいはしているぞ?ほら。」
テ「牙?⋯あ、吸血鬼だ!似合ってるよ!」
注「口裂けさ~ん、俺一応包帯男のつもりなんですけど分かります?」
口「いつも包帯巻いてるじゃない。」
注「あ。」
花「さーて、花子も何か食べよー」
太「一緒に食べよ花子ちゃん♪」
さ「プリン食べるヒキ子ちゃんも可愛いなぁ⋯」
そしてそれぞれのやり方でハロウィンパーティーを楽しむのであった。
注射男×口裂け女
口「薄着はやっぱり寒いわね⋯上着着ようかしら。」
注「黒いミニスカドレスに赤いコートもお美しいです口裂けさん!猫耳もまた素敵っ!!」
口(この男はまた性懲りも無く⋯)
いつものように騒ぐ注射男に少し苛立ちながらも無視をする口裂け女。
注「因みに俺は悪戯を希望しますのでいつでもどうぞ!!」
さあカモン!と両手を広げる注射男に彼女は鎌を構え一言。
口「次視界に入ったら裂くわよ下衆野郎。」
注「しゅん⋯」
口(やっと静かになったわ。私も早く戻りましょ。)
くるりと方向転換し皆のいる元へ戻ろうとした時。肩を捕まれ行くのを阻まれた。そしてもう一度黙らせようかと振り向いた瞬間。
注「Trick or treat?」
ハロウィンならではのあの言葉が彼の口から紡がれた。発音良く、円滑に、妖艶に。
口「⋯ええ、Happy Halloween⋯」
そしてそんな彼にドキリと驚きながらも菓子の入った小さい袋を手渡した。
注「⋯それ手作りですか?」
口「まあ、ね⋯。」
注「ひゃっほーい!口裂けさんの手作りお菓子ー!!」
口「は⋯?」
受け取った瞬間子供の様に飛び跳ねオーバーに喜ぶ注射男。いつもの調子に戻ったとも言える。
口「⋯な、何なのよ一体⋯」
口裂け女はただ呆然とするしか出来なかった。
(⋯さっきまでアイツにドキドキした私が馬鹿みたいじゃないの!
でもそう思ってたなんて、口が裂けても言えないわ!!
⋯もう裂けてるけど。)
太郎くん×花子さん
太「トリックオアトリート~!」
テ「ハッピーハロウィン。はいっ!」
太「ありがとーテケテケお姉ちゃん!」
花「ふんっ。やっぱ子供ね!怪獣の着ぐるみ着てアホみたいだしっ!」
大人達からお菓子を貰う太郎くんを見て呟く花子さん。そう言いつつお菓子を摘まむ。仮装をしお菓子を食むその姿は十分に子供らしいものである。
太「花子ちゃ~ん!一緒に遊ぼ~」
花「だ、誰がガキと遊ぶもんですか!」
太「じゃあ、かいじゅーごっこねっ!」
花「聞いてんの!?」
(あ~もう!これだからコイツはぁ!!)
無駄に前向きで純粋に遊びたがる太郎くんは意地っ張りな花子さんにとって一番関わりづらい相手なのだ。
花「花子は忙しいのっ!また後にしてちょーだいっ!」
太「そっかぁ、ざんねん。じゃあ、これあげるー!」
花「は?」
太郎くんは笑顔である袋を花子さんに渡す。透明な袋の中には不格好なキャンディーが。
花「花子⋯まだ何も言ってないわよ?」
太「そだねー。でも言われなくても花子ちゃんにあげたくて⋯お姉ちゃん達に教えてもらってがんばって作ったの!」
花「⋯ッ!!」
満面の笑みを見せる太郎くん。それと同時に勢い良く赤面する花子さん。
太「じゃねー!」
花子さんはぎゅっと袋を握り締める。彼女が彼を苦手とする最大の理由。それは純粋に彼女を好いているその笑顔だった。
(レンアイの意味もよく分かってない癖に⋯ドキドキさせないでよ、バカ!)
怪人アンサー×テケテケ
テ「皆楽しそうで良かった~。ふふっ。」
実はこのハロウィンパーティー、彼女が主催したものである。全日から皆に配るお菓子を作ったり作り方を教えたり、更に仮装の衣装までも製作していた。料理、裁縫は得意らしい。
テ「でも張り切り過ぎて寝不足⋯ふぁあ⋯」
怪「天使が欠伸とは中々珍しいものだな。」
テ「アンサーさんっ!」
怪「大丈夫か?無理はするなよ。」
優しく心配する彼の言動にテケテケの心臓はもう爆発寸前である。
テ「でも皆が楽しそうにしてるの、凄く嬉しいんだ。頑張った甲斐があったよ本当。」
怪「そうか、お前らしいな。⋯お、そう言えばまだアレ言ってなかったな。」
テ「“アレ”?」
怪「Trick or treat.菓子をくれないと悪戯するぞ?」
テ「!!」
以外な人物から唐突に告げられた言葉に戸惑いながらも袋に入れた菓子を取り出そうとするテケテケ。しかし。
テ「あれ!?ないっ!ちゃんと人数分用意したのに!」
どういう訳か袋の中はもう空になっていた。あたふたするテケテケを余所に怪人アンサーはニヤリと笑む。
怪「⋯無いのなら、“悪戯”だな?」
テ「お、お手柔らかにお願いします⋯。」
怪「今日の私は“吸血鬼”だ。覚悟は良いな?」
それは一体どんな悪戯なのか。色んな意味でドキドキしながら悪戯を待つ。すると。
ちゅ、と小さい音と共に突然テケテケの頬に柔らかいものが触れた。
テ「え!?」
怪「吸血鬼の悪戯だ。」
テ「~~~!!」
ペロリと悪戯っ子の様に舌を出し笑う怪人アンサーに少しの間を挟み、ボンッ!と物凄い勢いで顔を真っ赤にする。そんな二人を見て周りは何やってんだと冷やかな目をしていたそうな。
(ちゅーされた!?ちゅーされた!?あ~⋯!!ドキドキするっ!!)
さとるくん×ヒキ子さん
さ「う~ん惜しいな~⋯。」
ヒ「⋯何がですか」
さ「僕が執事なら予定では君がメイドだったのに⋯。ヒキ子ちゃん、絶対恥ずかしがってシーツとか被るだけだと思ってたからさ。」
ヒ「⋯それではいけないと皆さんが別の衣装を用意して下さったので。」
さ「やっぱシーツ被る予定だったんだね⋯。でも似合ってるよシスター。可愛い。」
ヒ「…べ、別に可愛くなんか無いです…!」
さ「ああ、照れ隠しに首を絞めるなんてかわい⋯ぐぇえ!!」
ヒ「⋯⋯もう構わないで下さい。」
さ(あ、怒らせちゃったかな⋯?)
さとるくんに褒められ恥ずかしくなったヒキ子さんは堪らず首を締め付けた。
放っておいて欲しいと言わんばかりに後ろ向きになりプリンを食べるヒキ子さんにさとるくんは怒らせてしまった罪悪感を残しながら彼女の様子を見る。
さ(かぼちゃプリン⋯ずっと食べてるけどテケテケさん達が作ったのかな?ヒキ子ちゃん、皆の事大好きだよなぁ⋯。特にテケテケさん。)
羨ましいや、そう思いながらもう一度彼女を呼ぶ。ヒキ子さんは嫌そうに眉間に思い切り皺を寄せながらも振り向く。
さ「トリックオアトリート、ヒキ子ちゃんっ!」
ヒ「⋯⋯⋯⋯。どうぞ⋯。」
さ「まじで!?ありがと~♪」
貰えないかと思っていたが手渡されたお菓子が入っているであろう小さい紙袋を驚きながら受け取った。早速その中身を開けてみると、少し焦げた形の歪んだクッキーが顔を出した。
さ「⋯もしかしてこれ、カボチャの形かな?」
ヒ「⋯!! い、嫌なら捨てて下さい⋯」
さ「いただきま~す♪」
ヒ「⋯あっ⋯、」
サクリ。クッキーを噛み締める音が響いた。
さ「ん、美味しい♪流石ヒキ子ちゃんだね♪」
ヒ「⋯そ、 そんなお世辞⋯いらないです⋯!」
恥ずかしそうにその場を離れるヒキ子さん。しかし焦げた部分の苦味もまた美味。そう思えたさとるくんだった。
(⋯⋯自分で作ったお菓子をあげるのがこんなにドキドキするなんて⋯思わなかった⋯⋯)
お化け達それぞれがドキドキする、そんなハロウィンだった。彼女達の心境になにか変化があったのか無かったのか、それは彼女達しか知らない。
END