第三章 前編 (編集中)
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「…彼は眠ったのか?」
「あぁ、うん…たぶん。いっぺんに色んなこと吹き込んだからきっと疲れたんだよ」
オルイがひと息入れようと持ってきたトレーからお茶の入ったカップを受け取る。
レギが悟空に真相を話終えるまで部屋の外で待っていたオルイは、少し意外そうにしてレギを見た。
「本当に、何も教えていなかったんだな」
「必要ないと思ってた。あの星で生きていく限りは……つかあたしも記憶無くしてたし、悟空が15になるまでずっと寝てたし、どっかの阿呆神様のせいでタイミングも何もなかったし」
「はっはっは」
ヤケ気味になったレギに概ねのいきさつを聞いていたオルイも笑い返す。それから、改めてマシンの中で眠る悟空を見た。
「それにしても驚いたな。この男が、あの時生まれた赤ん坊とは……。バーダックのせがれをこうして見る日がまた来ようとは、な……。『お父さん』と呼ばれていたが、あの子はもしかして彼の息子か?」
「そうだよ。ビックリだよね」
「そうか……バーダックのせがれは子を成したか……。それでお前は、好い人はいないのか?」
──ッブ!!!
レギは丁度カップに口を付けたところで、盛大に中身を吹き出した。
オルイは、なぜかそれで全てを察した。
「なんだ、いないのか……」
すごく残念そうにするオルイ。
「ッゲホ!…い、いないよ、そんな暇ないもん!」
「お前…いっそのこと、記憶をなくしたままで地球という星で過ごしていた方が良かったんじゃないのか」
「……ドクター、それ本気で言ってる?」
「本気で言っている。せっかくフリーザから逃れられたのに、結局ここへ来る羽目になっているじゃないか」
それを聞いて、レギが少し不機嫌そうに目を伏せた。
「……記憶が戻らなくても、地球にラディッツが来た時点でどのみち思い出してたよ。むしろ早めに戻って良かったんだ」
それからレギは持ってきてもらったカップのお茶を一気に飲み干す。
ひと息入れることで気を鎮めるどころか、その瞳はますます強い光を宿したようだった。
何を言っても、レギの中にある思いは一つだけだ。その頑として一度決めたことは曲げる気はないその意思に、オルイはこっそりため息を吐いた。
(…全く、誰に似たのやら…)
その答えが分かってしまって、オルイの目が悲しげに細められた。
「レギ、お前は…一人で何もかも背負いすぎだ」
「…何、どうしたの?」
「バーダックの二の舞になってはいけない。少し休みなさい」
「?…………っこれ…!」
言葉の意味を理解しようとするより早く猛烈な睡魔に襲われてレギの意識は混濁した。
そのままガクンと膝から崩れ落ちたレギの体をオルイは受け止める。意識を手放したレギの手からこぼれたカップが無造作に床に転がった。
「……貴様、それは一体なんの真似だ」
「ベジータ様……」
いつのまにか部屋の入り口にベジータが立ち、床に転がるカップと意識のないレギを交互に見て、問い詰めるようにオルイを睨んでいた。
オルイはレギをそっと床へ寝かせた。
「あなた様も聞いたのでしょう。あの星の最期、この子が何を見たのか」
「……聞いたが、それがなんだ」
「この子は戦うつもりです、フリーザと」
「は!何かと思えば」
険しい表情で言ったドクターの言葉をベジータは鼻で笑った。
「こいつはさっさとこの星から脱出すると言っていたぞ?奴を殺せるものならオレがやってもいいとさえ」
「いいえ、必ず戦います。もう、私は見ていられない。本当にこのままフリーザに会わずこの星から脱出できればよいのですが、もし会えば……私には、止められない」
「…で、こいつを眠らせて、その後どうするつもりだ?」
「お仲間が回復したらそのまますぐにこの星から脱出を」
「そこのヤローは仲間じゃない。それに、そいつは出来ん相談だ。まずドラゴンボールでこのオレの願いを叶えるのが先だ」
「ならばそちらを優先して。レギはきっと自分だけここに残るつもりです。それを自分の役目だと思っている。だからあなた様にも全てを話した」
「……オレが聞いた時はとてもそうは見えなかったがな。だが…」
あの時の自分の状態をレギは自暴自棄(ヤケ)だったと言っていたが、それを差し引いても『役目』というのはベジータの中では余りにそぐわない言葉だった。
そこでふと思い出す。
「貴様は知っているのか?」
その唐突な質問にドクターは目を丸くしてベジータを見た。
「何を、ですかな…?」
「こいつのわけの分からん力のことだ」
「…ち、力?…いえ、一体なんのことで……?」
「知らんか、ならいい」
そこだけが未だに引っかかったままだった。
(これでは確認のしようもないな…)
眠るレギから視線を外し、ベジータはオルイに背を向けた。
「地球人どもがドラゴンボールの使い方を聞きに行っている。戻るまで少し時間があるから、今のうちに休息をとる。やつらが戻ったらオレに教えろ」
簡潔にそう言うと、オルイからの返事も聞かずに退室していった。
「あの方も変わられていないな」
その背中を苦笑して見送り、レギを抱き上げ部屋に設えた長椅子に横たえる。
髪が短くなった頭をそっと撫でた。…最後に見たのは、肩にかかるくらいの長さだった。
本来サイヤ人の頭髪は変化しない。当時レギは、混血で伸びる自分の髪を、その中途半端な長さにすることで周りの目を誤魔化していた。
短くなったことを言ったら、苦虫を噛み潰したような顔をして『それザーボンにも言われたよ…』とレギは苦笑していた。
『邪魔だから切っただけ』だと。
(…ジープ、ミラ、結局私は何もできずこんなところまで来てしまった。…どうかこの子を見守っていてくれ…)
目を閉じれば、今でもあの二人の姿が鮮明に浮かぶ。
自分が言わなくても十分見守っていそうだが(特に父親は)、現状から強くそう思わずにはいられなかった。
場所は変わり、最長老の場所から少し離れた荒野。
「これが最後の警告ですよ。ドラゴンボールの願いの叶え方を言いなさい!」
フリーザは少し口調を強めて、倒れたナメック星人──ネイルに言った。
「このままでは、ただ死ぬことになりますよ。まさか本気で私に勝てると思っているわけではないでしょう?」
心底理解できないと言った感じで、声には苛立ちと呆れが混ざっていた。
しかし、左手しか使っていない相手に一度も適わず、すでに起き上がる力もないネイルは、小さく笑った。
「ふ…くっくっく…、も、もう、お前がそれを知っても無駄だ。デンデ達が、そろそろ地球人達の所に着く頃だ…、お前が知りたがっている合い言葉を伝えにな…!」
「な、なにっ!?」
その言葉で思い出すのは、最長老の所へ行く途中すれ違ったナメック星人の子共。
「…あ、あのガキ共か…!なら、貴様はただの時間稼ぎだったのか!!!」
「そういうことだ…」
「お、おのれぇ!!!」
害虫くらい問題ない…そう思った自分の甘さと、それとは別の所でフリーザの怒りが爆発した。
もはやネイルには見向きもせずその場を飛び出した。
飛びながらスカウターを操作するが、そこに有り得ない情報が飛び込んでくる。
「ギ、ギニュー特戦隊の反応がない!?ま、まさか全員やられたというのか!?」
いくら呼びかけても誰一人として応答がない。あの暑苦しい(←)ギニュー隊長からでさえも…。
自分が足止めを食らっている間に確実に何かが狂い始めていた。
宇宙船の所へと戻りながらこれまでの事がフリーザの頭の中を交錯する。
……思えば、レギの裏切りから始まっていた。そしてベジータも完全に裏切り、ドラゴンボールも奪われ、ギニュー特戦隊まで呼ぶ羽目になった。しかし、自分が足止めをされている間にそのギニュー特戦隊までも全滅させられている……。
当初、レギとベジータは協力関係にないと思っていたのに、最終的に手を組み、しかも例の正体不明の二人組とも行動を一緒にしている。
その二人組の正体も、今のネイルの言葉でハッキリした。
地球。惑星ベジータが消滅した後レギが逃れた星、そこで新たに得た仲間だと。ナメック星で最初に自分の所から逃げた時の事をフリーザは思い出していた。
ーー『っおいそこのお前‼』ーー
(……なる程、アレはその地球人が自分の仲間だと私に悟らせないためのものだったのですね……全く、まんまと騙されましたよ……!
…だがザーボンの報告でも、レギはベジータに連れ戻されて一人地球を出ていたはず。地球からかけ離れたここに今地球人がいるのは偶然か………いや、そんなことよりも今は……!!!)
どの事象も、とるに足らないと思っていたのに、現状この結果は……。そして、ドラゴンボールは……!!
そこまで考えて浮かんだのは、最悪の結末。
その瞬間、フリーザの怒りが頂点に達した。
「おのれぇーー!!!願いを叶えるのはこのフリーザ様だ!!!貴様等下等生物なんかではなーーーい!!!!!」
爆発的なスピードで海を割き飛ぶフリーザ。
その様子を、最長老は心の目で見ていた。
「こ、こんなことになるとは…。ネイルも酷い目に遭わせてしまった…。カルゴ、デンデ、急いでくれ…、私も寿命が近付いてきたようだ…!」
自分が死んでは元も子もない。
少しでも寿命を削らないように動かず、無事に願いが叶えられるように強く祈るしかなかった。
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