第三章 前編 (編集中)
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~メディカルルーム~
メディカルマシーンに入れられた悟空は、徐々に液体に沈みながら、マシンのガラス越しにレギを見ていた。
その顔はほとんど無表情だったが、なぜか悲しそうに見えた。どこか見覚えがあるような気がして記憶を辿って、
(……そうだ、兄貴ってのが来た時の…死ぬ時の顔に似てんだ…)
ラディッツが死ぬ間際、会話をしていた時もこんな顔をしていた。
どうしてそんな顔をするのかと、マシンの中からでは問いかけることもできない。
周りが完全に液体で満たされ、外ではレギと先程ドクターと呼ばれた老人が何やら話しているのが見えた。
名前は確か、オルイ・リオーブ、と言っていた。
あいにくとマシンのガラスが厚いのか、液体に阻まれているからなのか、二人が何を話しているのかは全く聞こえなかった。
ここに運ばれる間にも色々と聞きたいことはあったが、自分の状態が状態なだけに会話をするのもままならなかった。
このオルイという男が何者なのか、レギにとってどんな存在なのか悟空には分からず仕舞いだ。
(レギをよく知ってる奴みたいだったな…あ、肩に手ぇ置いた…何の話してんだ?)
特にすることもないので、悟空は見たまんまを脳内独り言で実況する。
レギは今にも泣き出しそうな表情で何かを話す。
オルイはそれを聞きながら何度も頷き、そしてレギの頭を優しくなでた。
それから、何かを持ってくる、と言うような仕草をしてオルイは一旦部屋を出て行った。
しばらくその後を見つめていたレギが、ふいに振り返る。
目が合うと、クスッと笑ったのが分かった。
─『さっさと寝ればいいのに、その方が治りも早いよ?』
頭の中に直接届いた声に少しばかり驚いたものの、自分も使ったことがあるから悟空も苦笑しながら返事を返す。
─『気になって寝れねぇよ。あのおっちゃんとなんの話してたんだ?』
─『………』
しかし返ってきたのは、沈黙だった。
それがあの時のものと重なる。
以前、無くした記憶が何だったのか聞いた時のあの沈黙に。今になって、あれはきっとこの事だったのだと悟空は確信した。
レギはほんの一瞬迷うように視線を泳がせ、それから意を決したように悟空をまっすぐに見た。
─『…もういい加減、話してもいい頃だしね。お前にも知る権利はあるよな』
伸ばされた手が、マシンのガラスに当てられた。
─『お前にとってもショックな部分があるかもしれないけど、それでも聞くか?』
─『ああ、後悔はしねぇ』
悟空も手を伸ばし、ガラス越しにレギの掌に重ねた。
むしろ知りたかった。
本当の事を──。
─『分かった、話すよ』
そうして、レギは語った。
サイヤ人とツフル人の関係から、フリーザとの関わり。
惑星ベジータ消滅の真相、そして、自分達が地球に来たわけを……。
話し終えて、レギの手がガラスから離れていった。
話しながら様々な映像が頭の中に流れてきた。
レギが見てきたもの。
惑星ベジータでの生き方、そこでの出会いと衝突、ほんの僅かな間の穏やかで楽しかった記憶。
そして、別れ。
─『………っ』
両目が熱を持っているのが自分でも分かって、悟空は周りが水に覆われてて良かったと心底思った。
初めて聞いた自分の出生…。
そして、語られた記憶の中で、一際強くレギの心に残っていた人物。
髪の長い女性と、自分と良く似た髪型で顔に大きな傷のある男…。
(…もしかして……)
そう思ったら、レギが微笑んだような気がした。
悟空はもう目を閉じているから本当はどんな顔をしていたかは分からなかったけど。
レギは、きっと笑っていた。
そして懐かしそうにその名を紡ぐ。
─『お前の両親、父親はバーダック、母親はサラヴィナ。二人共、最後までフリーザ達に立ち向かって行った誇り高いサイヤ人の戦士だ。地球で育っても、お前にはその誇りと優しさがちゃんと受け継がれてる。こんなに強くなったお前を、きっと二人も誇りに思ってるよ。自慢の息子だってね』
そして、レギは踵を返す。
─『怪我、早く治せよ』
コンコンとガラスを叩いてレギは離れていった。
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