第三章 前編 (編集中)
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何故ここに
何故このタイミングで
嬉しいはずなのに
心はどこか
冷たかった
第十五話
≪過去と現在と≫
「貴様等にも戦闘服をくれてやる」
ベジータにそう言われ、クリリンと悟飯は船の中へと案内された。
レギは重体の悟空の治療のため、ドクターと呼ばれた老人と共に別の部屋へ。
少しの間だけだが、離ればなれになると余計に気になる。
レギと、ドクターとの関係。
最初に会った時、レギが自分達の事を紹介すると、ドクターは軽く頭を下げて「私はオルイ・リオーブと言います」と名乗った。しかし、いつフリーザが戻ってくるかも知れず、一刻も早く悟空を治療しなければならない状況でそれ以上オルイと会話をすることはままならなかった。
「悟空なら、旧式のメディカルマシーンでも一時間くらいあれば完治するだろうって。その間に二人も休んでて」
別れ際、レギがクリリン達にそう告げて来たのが会話の最後だった。悟空の容態を気にかけていた自分達に、心配ないと安心させるためだったのだろう。
それからベジータの案内でフリーザの宇宙船内を歩きながら、その地球よりずいぶん進んでいる文明に感嘆しながらも、モヤモヤしたものが残る。
そういえばレギが以前、『世話を焼いてくれたドクターがいた』と言っていたのを思い出す。あのオルイと名乗った老人の事なのだろうとは思うが、
「…なぁベジータ」
クリリンは、黙って先を行くベジータについ声をかけてしまった。
「あの…オルイって人のことは…よく知ってるのか?」
「よく知ってると言うほどでもない。あれくらいの者ならフリーザの星にいくらでもいたからな。遠征先で負傷した者を看るのが主な仕事で、やつもその内の一人だった。今回ナメック星に来ているのは星のデータ採取とか、そんなところだろう」
「…そ、うなのか…」
思ったよりも普通に返答が返ってきてクリリンは少しばかり面食らった。
(あれ……こんなに接しやすかったっけかこいつ…?)
そんなクリリンの気持ちに気付いているのかいないのか、ベジータが立ち止まって振り返った。
「貴様等は、あいつから何も聞いていなかったのか?」
「え?…いや、あんまり詳しくは聞いてない…」
「レギさんが、昔にお世話になった人だって聞いてたけど」
「昔、か…」
ベジータはそれだけ言うと、また歩き出した。
クリリンと悟飯は顔を見合わせて、でもとくに交わす言葉もなくその後を追いかけた。
結局、そのまま何も話さず戦闘服が置かれた部屋まで来てしまった。
ポイポイと無造作に投げてよこされる手袋やプロテクターを手にとって着替え始める。
クリリン達が素材や特徴に感心していると、
「…奴のことはそんなに深く知ってる訳ではないが、あえて言うなら…育ての親、の様なもんだったんだろう」
思い出したようにベジータがさっきの話の続きを始めた。
奴、とはオルイのことなのだろう。
実際にベジータも今の今まで存在そのものを忘れていたが、戦闘員でもない者の事など一々記憶に留めておく必要もないと思っていたからだった。
「あいつの親がすぐに死んでいるのは聞いてるのか?」
「あ、ああレギの親…か、それなら聞いてる。後、惑星ベジータが元は別の星で……なんて言ったっけな?」
「プラント星か」
「そうそう!母親がそのプラント星のツフル人ってので、父親がサイヤ人だって」
「それだけか?」
「え……あぁ、後は、星から逃げる時、そこでの仲間が命懸けで助けてくれたとか…(そういえば…)」
答えながら、ふとあることに気付いた。
自分達はレギのことをあまりに知らない…。さっき感じたモヤモヤも、たぶんそれが原因だ。
悟飯も同じ様で、黙って話を聞いていた。
「……やはり話していないのか…」
「え?」
小さな呟きに聞き返したつもりだったが、ベジータはそれには答えることはなかった。
「貴様等これからどうするつもりだ?」
「え…どうって…」
「ドラゴンボールは、貴様等の知っている言葉では反応を示さなかったんだろう。このまま黙っていてもラチが明かん。何か考えはあるのか?」
「あ、そうだな……とりあえずもう一度最長老様の所に行ってこようと思う。もしかしたらフリーザがいるかもしれないけど、神龍を呼び出す合言葉を聞かないとどうにもならないからな」
「そうか」
「…ベジータは、どうするんだ?」
「オレはここの連中には信用ないからな。貴様等が行った方が話は早いだろう。フリーザが戻ってくる前にさっさと行ってきやがれ」
「あ、ああ…」
結局、ベジータはどうするのかという質問には答えず、一人どこかへと行ってしまった。
会話の所々をはぐらかされていたような気がする。
--『それだけか?』--
(…ベジータは他に何を聞こうとしていたんだ…?)
「…あの、クリリンさん」
悟飯が口を開いた。
「最長老さんから、何か聞きませんでしたか?」
「え?……何かって…あ、そう言えばなんか聞いてたような、気がする…」
悟飯の言葉で思い出したが、それだけだった。
内容が、全く思い出せない。いや、思い出せないというより…、
「…ボクもこれ、どう言ったらいいか分からないんですけど……何か変な感じで…。何を聞かされたか覚えてますか?」
「いや……なんだこれ?…最長老さん、オレ達に何をしたんだ?」
体の内に眠っている力を解放してもらった時に、確かに何かを受け取った。
物凄く大事なことで、でも必要ないような…。
すぐ手の届く所にあるのに、見えない壁に阻まれているような。
手を伸ばしてみても、それはその分だけ遠ざかるような。
それなのに、消えることなく頭の中を漂っている。
掴むことのできない、消えない煙の様だった。
「…これ、もしかしてドラゴンボールの使い方なんじゃ…?」
「いや、だったら今ここで分かるはずだろ?でもボールを前にしてもなんにもなかったし。あー駄目だ!こんな所でグダグダしててもしかたなねえ!さっさと最長老様の所に行って願いの叶え方聞いてくる!」
「あ、ボクも…!」
「いや、オレ一人で十分だからここで待っててくれ」
そう言ってクリリンは飛び出して行ってしまった。
色んなことで心の中はモヤモヤとすっきりしない状態だった。
聞くに聞けないレギの過去、オルイとの関係。
ベジータの曖昧な質問。
最長老が自分達に送ったもの…。
その上、重傷の悟空は怪我を治す機械に入っても、完治するには一時間ほどかかってしまうという。
(…クリリンさんが最長老様の所へ行って帰って来るまで二時間くらい…こんな状態でフリーザが来たらどうしよう…)
せめて悟空が完治するまでは…と悟飯は不安げに空を見上げた。
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