第三章 前編 (編集中)
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「……そういえば、もう一人いなかったっけ?…大人のナメック星人の人…」
ひとしきり最長老の家の周辺を案内されてからふと思い出した。
レギが目を覚ましてから、まだその姿を見てはいなかった。
「ネイルさんですか?」
「さっき家の下の方にいるのを見ました。呼んできますか?」
「ううん、自分で行くよ。その人にも迷惑かけちゃったし……」
一旦デンデ達と離れて、レギはネイルの所へ足を向けた。
柔らかな旋律が静かに響いていた。
ツフルの歌の、ラクランだ。
歌っているのはネイルだった。
本来その時の感情に合わせて歌うものだが、ネイルはレギの記憶の中で聞いたものが頭から離れず、知らず知らずのうちに口ずさんでいた。
「いい声だねネイルさん」
「!」
かけられた声にネイルは弾かれたように振り返った。そこに、レギが立っていた。
「それ、あたしが物心ついた頃から知ってる歌だよ。多分お母さんがあたしに歌ってくれてたんだと思う」
「…か、勝手に、すまない…」
「全然いいよ!」
カラカラと明るく笑うレギを見てネイルは面食らった。
第一印象とはまるで正反対のレギにどう接したらいいかと戸惑っていると、
「会ったことはないんだけどね、その歌だけは覚えてる。もしネイルさんが気に入ったんならあげるよその歌。お母さんもきっと喜ぶ」
好きに歌ってもいということだろう。
ニッ!と嬉しそうに歯を見せた笑顔を見て、不思議と心が落ち着いた。
きっと、これが本来のこの人の在り方なのだと受け入れることが出来た。
だからネイルも笑顔で答えた。
「…ああ、とてもいい歌だ。ありがとう」
「………………………………………」
「な、なんだ?」
ネイルの返事に、レギは笑顔を引っ込めていきなり固まってしまった。
ここへ来た時のレギの状態や過去を知っている分、ネイルの中に不安が広がる。
「どうした?まだどこか痛いのか?」
しかし、レギはそんなネイルの様子を見て今度は小さく吹き出した。それから苦笑しながら否定の意味で手を振って見せた。
「いや、どこも悪くない…ただ、ネイルさんがあんまりにもピッコロに似てるもんだからさ。あいつ、常に仏頂面で戦ってる時と悪いことをする時にしか笑わないような奴だから、その、ちょっとびっくりしちゃって…」
「あの地球人、クリリン…も同じ様なことを言っていたな。そんなに似ているのか?」
「うん。でも性格は向こうのが数倍やんちゃだわ」
腕組んでこくこく頷くレギを見て、今度はネイルが吹き出した。
会ったこともないが、遠く離れた星に行き着いた同胞に僅かながら興味が湧いた。
地球という星で命を落としたが、それを生き返らせるためにレギの仲間達がここへ来た。
無事に目的が果たされれば、レギ達は地球へ帰るのだろう。だから恐らく、会うことは叶わないだろうが…。
「…そうか、一度会ってみたいものだ」
「あいつも、本当はここが故郷なんだから何もなければ来させてやりたいけど…」
「これからどうするんだ?」
「最長老様の力を借りて、もしもの時のためにツフルの力を少しずつ受け入れる準備をする。斬気と、掌波の力を解放するんだって」
先程、デンデ達に案内されながら聞いた話だ。
最長老からも一緒に見届けるように言われているのだとデンデは言っていた。
「ツフルの力…『防ぐ武器』と『守る武器』か」
「今まで特に考えないで使っていたけど、話を聞いて驚いたよ。今のあたしの使い方が、元の狂戦士族ツフル人だった頃の使い方に戻ってきているなんてさ」
二つの技はツフル人特有のものだ。
本来、斬気は防ぐためのもの。そして掌波は衝撃波による攻撃で相手を傷付けず撃退するためのもの。
そうとなったのは、ツフル人が狂気の力を書き換えられながらも自分達の身を守る為に、と残されたからだそうだ。
レギの場合、掌波でさえ殺傷力を上げて使用していた。そうでなければ、あの星では生き抜くにしろ身を守るにしろ、とてもやっていけはしなかったからだ。
「あたしは、防御としても使ってるし、武器としても使ってる。新しい技も色々考えてた…、でも、もしかしたら元々彼らが扱っていた技かも知れない…」
『帳』、『ツミハ』、『ナミハ』、『斬刀鞭』、それ以外でも斬気はナイフにしたり剣のようにしたりして使っていた。
そして、少しだけだが記憶に残る、地球での斬気と掌波の合わせ技、
『ホウセンカ』。
斬気と掌波を掛け合わせての使用はこれまで考えたこともなく、無意識に発動させていた。あれが始めてだった。
ピッコロがあの時止めてくれなかったら、どうなっていたことか…。
「…暴走、したらきっと見境無く仲間も傷付ける。このままじゃダメなんだ。もっともっと強くならなきゃ…!!」
その時、
──……ぐぅぅううぅ………
「………」
初めて聞くその音に、ネイルがこてんと首をかしげる。
「……なんだ、今の音は?」
「……………………………………………」
レギは静かに手を挙げた。物凄く気まずそうに顔を背けているのにネイルは更に疑問をぶつける。
「…どうしたんだ?」
「…あー、ナメック星人が水しか飲まないのは知ってるんだけど、あたし達は食べ物を食べないと生きていけない……。い、今のは、腹の虫が鳴ったってやつで、要するに、ものすごくお腹が空いたというか……」
しどろもどろになりながらも説明をしたレギに、しばしネイルも固まり、そして、
………ぷっ
「ふっ…くくくく…」
「Σわ、笑わないでよ!!」
「いや、す、すまん…っ」
言いながらもネイルの笑いは止まらない。
レギの腹の虫もさっきのを皮切りに、獣のうなり声のような凄まじい音を立てていた。
──グゴゴゴゴゴ……グルルルルルル…
「なんというか本当、凄いな。人間は腹に獣のような虫を飼っているのか?大丈夫なのかそれ?」
『お腹が空く』という感覚のないがために、本当に虫がいると思っているのかもしれない。その心配すら含んだ実直な質問にも、レギは冷静に説明するよりも羞恥心の方が勝り真っ赤になって叫んだ。
「し、仕方ないでしょ!ここに来るまでロクに食べてなかったんだから!!」
「それは、『餌』…を与えるべきなのか?」
「あたしがあたしにね!!!!」
「?……」
微妙に噛み合わない会話をしながらも、腹の虫の音は尚も鳴り続けていた。
実を言うと、カルゴが持ってきてくれた水を飲んだら、思い出したように猛烈な空腹が襲ってきたのだ。
ここ、最長老の家にレギが来てから数日が経過していたが、レギ自身はずっと眠っていた。とはいえ、体の機能が止まっていたわけではないので、飢餓状態に陥っていた。
言うて、彼女も半分はサイヤ人である。
燃費はすこぶる悪い。
「こっ、ここ、魚とかいる!?」
「あ、ああ、いるにはいるが…」
「食べていい!?」
「え?」
ヤケ気味に叫んで、ポカンとしているネイルの目の前で、レギは着ていた囚人服を躊躇なく脱ぎ捨てた。
「え、おい……」
「いただきます!!!」
──どっぱあーん!!
ハーフトップと下着一丁になって、盛大に水しぶきを上げて湖へと飛び込んでいった。
「………狂気とは、程遠いな…」
最初に会った時は、憎しみにかられて我を失っていた。
だがこうして話をしてみれば、突拍子もないことを言ったり、恥じらったり、笑ったり。
全く普通の人だ。
(守らねば…)
レギの記憶を見たからではなく、純粋に、強くそう思った。
後に、レギが獲ってきた大魚を焼いて食べる様を、ネイルもデンデもカルゴも神妙な面持ちで見ることになる。
自分達は水しか飲まないから、『食べる』という行為を間近に見るのが初めてだったからだ。
「食べる?」とレギが進めてくるのを三人は断るも…。
焼きたてで湯気の立つ魚の身を口一杯に頬張るレギ。
その様子に、『……美味しそう』と三人が思ったのは、ここだけの話。
.