第三章 前編 (編集中)
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「だったらなぜあの時その力が使えなかった!!?そんな余計な封印なんかなかったら、みんなは死なずに済んだんじゃないのか!?見殺しにすることもなかったんじゃないのか!!!
何が神々だ!!それで世界を救ったとかで英雄気取りか!?傲るのも大概にしろ!!!!!」
「あなたのお怒りもごもっともです」
苛烈なレギの怒号にも、最長老は静かに頷くだけ。
レギはチッ、とあからさまに舌打ちをして、踵を返す。
「ならもうこれ以上話すこともないな。あたしはフリーザを殺しに行く。二度と邪魔するな!!!」
(さ、最長老様…!)
余りの気迫に圧されながらも、ネイルは立ち去ろうとするレギを止めるかどうかと最長老を見た。
それを、最長老は穏やかに制した。
(大丈夫です。お前も見ていなさい。決して目を背けてはいけない)
「あなたのお邪魔はしません。ただ、目的を果たそうとするその前にやるべきことがあるはずです」
「何なんだ一体!?」
苛立ちも限界に達しているレギは、今にも最長老に飛びかかりそうな程殺気立っていた。
そんなレギに向かって、ゆっくりと最長老の手が伸ばされ、レギの頭に置かれた。
その優しい重みに、レギの体がビクリと震えた。
「なっ…」
「…ずっとお辛かったでしょう。…よくここまで生きてこられました。
…封印から、どれ程の歳月が経ったのかは分かりませんが、今こうしてあなたが無事ここにたどり着けて、本当に良かった」
「………」
かけられた言葉に、レギは呆気に取られ最長老を見上げた。
自分がここへ来ることは、元々視野に入れてはいなかった。
ナメック星へ来たのは確かに自分の意思だが、ここに来るまでの経緯はそうではない。ナメック星へ行かなければとは、たどり着かなければなどとは微塵も思ってはいなかった。
……そういえば、なんで自分はここにいるんだろう……。
ぼんやりとそんなことを思っていると、最長老が微かに頷いた気配がした。
「あなたのやろうとしていることを止めはしません。私達には止める権利はない。ただ、ほんの少しで良いのです。ここで休んでいかれなさい」
「や……やす…む……?」
何を言っているんだと、レギの目が動揺に揺らいだ。最長老は穏やかに続ける。
「過去を変えることは出来ません。あなたの中にある後悔も苦悩も、誰にも代わることは出来ない。
今のあなたの唯一の恐れは、あの時の様に今のお仲間を失うこと。たとえ自身がどれだけ傷付こうとも、守るためにはそれを厭(イト)わない程に……。
レギさん。先ほどのムーリの村で、本来あなたはドラゴンボールを破壊しに行ったのにお仲間との脱出を優先しましたね。なぜでしょうか?」
「な、ぜ……って………………」
唐突にそんなことを言われて、レギは絶句する。
なぜそんな当たり前のことを聞くのかと。
『仲間』を守りたい、助けなければと思うのを『なぜ?』と。…それに、理由なんて必要あるのか?
あの状況で、ドラゴンボールを破壊する余裕なんてなかった。いや、もうそんなこともレギにはどうでも良かった。
二人の命が危ない。何がなんでも、この場から脱出しなければと、レギにはあの時それしか考えられなかった。
「あなたにとって、それ程までに大切な存在だと言うことではありませんか?そしてそれは、今のお仲間にとってもきっと同じのはずです」
「……………」
「今のあなたには、今のお仲間がいます。決して、あなたは一人ではありません。それを思い出して欲しいのです」
「……で、でも………っ」
最長老の言葉に、一瞬レギの背筋を悪寒が走ったが、最長老はそれすらも認めて、
「分かっています。そのために、我々がいるのです。
あなたが一番に恐れていること。それに対抗しうる術をここで見付けて欲しい。お手伝いします。ですのでどうか、たった一人で行かないで下さい」
「…っ!………」
『たった一人で』。その言葉が、レギの胸中を一変させた。
よく知る人物を思い出させたからだ。
ーー『お前は生きろ』ーー
自分の命を、生きることを、望んでくれた人達が、どんな思いであそこから助け出してくれたのか……。
考えている内に、ゆらりと視界が歪んでレギは思わず瞬きをした。
すると、それが溢れて頬を伝い、初めて涙だと気付いた。
「っ……」
ダメだ!とレギはとっさに口元を抑え涙を振り切るが、頭に置かれた最長老の手から、懐かしい感覚と共に暖かなものが流れ込んできて、涙は止まらなかった。
とても振り払えなかった。
折れた右腕が、熱いほど熱を帯びる。
それとは別に、あの星での出会い、衝突、別れが次々と脳裏に甦った。
……あの日から、ずっと、心の奥にしまい込んでいた。
もしもあの時、『予言』をちゃんと聞いていたら、もう一緒にいられなくなるとしても、早めに警告出来たんじゃないか。そうすれば、みんなは助かったんじゃないか……。
そう、幾度後悔しても事実は変わらなくて。
自分は、それを知る機会はあった。調べる術も持っていた。それなのに、そいつのいつもの戯れ言だと相手にもしなかった。
真相を知った時には、何もかもが手遅れだった……。
誰も知らないから。
誰にも知られてはいけないから。
誰にも言えずに、誰にも言わずにいた。
今それが、一気に押し寄せて、もう堪えきれなくて、レギは左腕で顔を覆った。
「もういいのですよ。本当によく頑張りましたね」
「っ…うっ……っ…!」
とうに忘れていたその感覚に、最長老の優しい声が重なる。
必死に堪える嗚咽も、次第にしゃくりあげるようになっていって、肩を震わせて、
レギは泣いた。
「…そう…だ、あ、あの時に…あたしに…もっとちゃんと、力があったら…よかったのに……!!
…ま、守れなかった……!ご、ごめん……みんな…ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい………!!」
ひたすら謝るレギの頭を、最長老は優しく、優しく撫でてやった。
最長老には、少なくともこの星で起きている事は今までのことも含め全て見えていた。
フリーザ達が村々を襲っていることも。
同じくドラゴンボールを求めてベジータ、そして地球からやって来た三人とレギとのやり取りも。
(…お仲間を守るために気丈に振る舞い苦渋の決断を下された。…結局はお仲間はあなたを助けにやって来てしまいましたが、それでも守ろうと懸命に戦った。その行いを、狂気に蝕まれ意志を無くした力で無駄にさせたくないのです…)
そのために、自分達の存在があるのだと。
封印に綻びが生じていることで、最長老自身もその片鱗を思い出していた。
ナメック星人は宇宙の中でも長寿の種族。
その性格も穏やかで、だからこそツフル人の封印を行使した当時の『神々』はその役目をナメック星人に与えた。
封印が解かれるようなことがある時は、いち早くその記憶を呼び覚まし、ツフルの狂気の解放を食い止め導くこと。
それがこの封印において、ナメック星人だけに与えられた使命だと。
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