第三章 前編 (編集中)
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どう転がっても絶望的な状況にしかし、唐突にドドリアのスカウターが反応を示した。
強い戦闘力の接近を知らせるその反応にそちらを見れば、確かにこちらに飛んでくる姿が三つ。
「フリーザ様、あれを!」
「おおっ!!来てくれたか!!」
ムーリと子供達の顔に僅かに笑顔が戻る。
それは、野良仕事で村を離れていた、若いナメック星人達だった。
「困りますね、もう少しでドラゴンボールを出していただけるところでしたのに。わざわざお仕事を中断して殺されにいらっしゃるとは…」
言葉とは裏腹に全く困っていないように言ったフリーザに、村と仲間達の状態から、駆けつけた若いナメック星人達の顔が苦渋に歪んだ。
「くそ…!嫌な予感が的中しやがった……!!」
「…村を襲い、ドラゴンボールを奪っている者がいるという噂は本当だったか…!」
「許さんぞお前達!ナメックの平和を踏みにじりおって…!!」
「気を付けて戦ってくれお前達!こ奴らかなりの強さだ!」
ムーリの言葉に、フリーザは面白そうに目を細めた。
「…ほう、戦うつもりですか。どれ程の戦闘力をお持ちかな?ドドリアさん」
「…くっくっく、ガッカリしないで下さい。三人とも1000前後です」
(…そ、そうか…!!)
フリーザの指示で耳に付けたスカウターを操作したドドリアを見てムーリは確信した。
ナメック星は広い。その上、元々数の少ないナメック星人が更にいくつかの村に分かれて点在し、その所在を知っているのももちろん自分達ナメック星人だけだった。
それを、こんな短期間で四つもの村からドラゴンボールを集めていたことに違和感を抱いていたが、ドドリアが耳に付けている機械で若者達の戦闘力を測定したことでハッキリした。
(あの機械で星にいる者を探すことが出来るからだ…!!あれさえ破壊してしまえば…)
「おいっ!!!」
「「「っ!!?」」」
「あんたら!そこのじいさんと子供達を連れて逃げろ!!戦ってはだめだ!!!逃げろ!!!!」
ドドリアの下から叫んだレギに皆の視線が一斉にそちらに向くが、フリーザの手下の兵士はナメック星人達の戦闘力の数値を聞いて既に臨戦態勢に入っていた。
「へっへっへ、どの道逃げられるわけねえだろうが!!やっちまえーー!!!」
「はあっ!!!」
──バキィ!!
しかし、最初の一人がナメック星人によってあっさり蹴り飛ばされ、離れた岩にぶつかりつぶれたのを見て戦況が一変する。
それを皮切りに、ナメック星人達は次々と兵士達を倒していった。
攻撃で自分の方へ飛んできた兵士を無情にも蹴り飛ばしながら、ザーボンは今一度ドドリアへ尋ねた。
ナメック星人達の強さは、聞いていた数値よりも明らかに上だったからだ。
「どういうことだ、あれが戦闘力1000だって?」
「どうなってんだ!?三人とも3000に増えてやがる…」
(…よし、壊れていないあの機械は、あいつのを含めて三個だけだ…!)
戦闘に気を取られている内に、スカウターの残数を確認する。それからムーリは、自分にすがり付いていた子供達にそっと言った。
「…子供達よ、私から離れておれ…!」
スカウターさえなくなれば、これ以上他の村を簡単には見付けられなくなる。フリーザ達の侵略をここで止めることが出来れば、そうなれば、まだ……。
「おいザーボン、さっきはお前がやったんだから次はオレにやらせろよ!」
「……別に構わんが。ならそいつは私が抑えよう。また何をするか分からんからな」
そう言ってザーボンが抱えていたドラゴンボールの一つを側へ置いて、レギの左腕を持って無理矢理引き上げた。その時、
「つあっ!!!」
「「⁉」」
一瞬自分達から目を離したその隙に、ムーリが指先から放った一撃がドドリアのスカウターを破壊した。
「こ、このやろう、そんなチンケな技でこのオレを倒せると思ったか……⁉」
しかし、ムーリは追撃はせず飛び上がると、残りのスカウターも同じように破壊した。
「そうか!奴の狙いはスカウターだったんだ!」
「………!」
「お、おのれ……皆殺しだあ!!!」
「お待ちなさいドドリアさん!殺すならまずお若い三人になさい!」
怒りのままにすぐに飛び出したドドリアをフリーザが制する。
(…あのお年寄りにはあともう一押しといったところ…、今殺されてしまっては、『交渉』もまた最初からになりますからね…次のドラゴンボールの在処も吐いてもらわねば…)
「逃げろ…頼むから逃げて……!!」
フリーザの思惑もこの後の展開も、レギには嫌でも分かる。
どうなっても、皆殺しにされる末路に変わりはない。ならせめて、抵抗力のある若いナメック星人達がいる内にムーリと子供達を連れて逃げて欲しかった。
しかし、
「そんなことは無駄だということが、お前が一番よく分かっているはずだ。さてレギ、お前には聞きたいことがある」
ギリ…!と背中に回された左腕をキツく捻り上げられる。
「『あの時』どうやって逃れた?」
「……………なんの事だ…」
「私は、確実にお前を殺したつもりだった。なのにお前は生きていた。一体どうやってだ?あの時のお前に、生き残る術などなかったはすだが……それとも、何者かの介入があったのか?」
そうやり取りをする間にも、ナメック星人達は一人、また一人と、ドドリアの手にかかり殺されていく。
最後の一人も、突進してきたドドリアに成す術なく、そそまま岩に押し潰されて殺されてしまった。
殺戮行動を、始終楽しそうに笑っているのを見て、レギは心の底から軽蔑を込めて吐き捨てた。
「…………お前らには、一生理解できないよ」
「やはりそうか、では、その者の居場所も…」
「ザーボンさん」
ザーボンの言葉をフリーザが遮った。
「そういった尋問は後でもいいです。ようやく話が進みそうなんですよ」
「は、分かりました……」
「さて、これで逆らうのも逃げようとするのも無駄だというのがお分かりでしょう。まあ、とにかく降りてらっしゃい」
「………」
頼りにしていた若者達もあっさり殺されてしまって、ムーリは言われるがまま降りてくるしかなかった。
自分達が助かる道は、もう一つしかない……。
「…や、やむをえん。だが約束しろ。子供達には絶対手を出さんと」
ムーリがドラゴンボールを取りに行く様子に、フリーザは満足そうに微笑んだ。
「そうそう、初めからそうすればよかったんですよ」
やがて村の奥から戻ったムーリの手に、星が四つ入ったドラゴンボールが抱えられていた。
「これを持って、とっとと立ち去れい!」
「ご苦労様。では、後の二個のドラゴンボールのある場所も教えていただきましょうか」
部下が受け取ったタイミングで、当然のように残りの仲間の居場所を聞いてくるフリーザにムーリは歯噛みする。
(……やはり、これで大人しく帰るわけはないか…!)
スカウターを壊されて今までのように探せなくなったからにはここで聞き出すしかない。だがそれは、たとえスカウターを壊していなかったとしても……。
「…我々ナメック星人は、仲間を売るような真似だけは死んでも出来ん…!!」
「やれやれ、あなたもですか。この星のお人は、どなたも絶対に仲間の事を仰らない。やっぱり、あなたも子供達も死んでもらいましょうか」
「ぐ……!」
同じ末路を辿っていただろう。
それにムーリは、さっきから押し黙ったままのレギの様子も気掛かりだった。
自分達ナメック星人だがらこそ感じる、ツフル人に対する畏怖に近い感覚。
レギの中に垣間見えているものに、止めなければと本能が警告していた
(……ツフルのお方、どうかその怒りを収めてくだされ)
心に呼び掛ければ、ハッとしたようにレギが顔を上げムーリを見た。
今のムーリにはもう、頼れる者は一人しかいなかった。
(その力に堕ちてはなりませんぞ。どうにか子供達とお逃げくだされ…!あなたの忠告を聞けずに、申し訳ない…)
最後のムーリの短い謝罪に、レギが何かを言おうとしたが、
──ボキっ!!!
ドドリアがムーリの首をへし折った。
倒れたムーリのその向こうに、とうとう自分達だけになってしまって怯える小さな子供達。
逃げだそうとするその前にドドリアが立ちはだかる。
「こんなガキぶっ潰してもつまらねえがな、とりあえず死ねえ!!!」
「やめ…」
「やめろおおーーー!!!!」
それはレギでも誰でもない。響き渡った第三者の声に、その場にいた誰もが動きを止めた。
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