第二章 完結
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「フリーザ様、ご報告があります。………レギが、見付かったそうです」
「……なんですって?」
1拍の間のあと、少しだけ驚いたように振り返った上司に、部下であるザーボンは今しがた入った情報を再度伝える。
「…地球での、ベジータのスカウターの通信を追っていた者が、それらしき特徴の人物がいることを認めていましたが確証がなくご報告が遅れました。しかし、先程ベジータがその人物と一緒に戻ってきたと連絡が入りまして…」
「……それは本当にレギさんなのですか?人違いでは済まされませんよ」
「ベジータが『レギ』だと言い、その者は、左腕に赤い腕輪をしていたと……」
「……なる程、そうですか。ベジータさんがそう言ったのなら間違いないのでしょうね」
フリーザは正面へ向き直ると、肩を震わせて静かに笑った。
「全く、こんなにも良いニュースばかり飛び込んで来るなんて、日頃の行いが良いからですかねぇ」
「……い、良いニュース、ですか…?」
「レギさんが生きていたとなれば、大変喜ばしいことですよ。なんせ、あの人の扱う技は稀有なものでしたからねぇ。惜しいものを亡くしたと少し後悔していたのですよ。それが、生きていたんですから...」
「………」
本当に機嫌が良さそうに揺れ動くその尻尾にも、報告をしたザーボンは内心穏やかではなかった。
「……あの、フリーザ様」
「なんですかザーボンさん?」
背中を向けたままのフリーザの声は変わりなかったが、それでもザーボンは次の言葉を言うのを躊躇した。
喉を鳴らし、殺されるのを覚悟で腹を括る。
「あの時、レギを取り逃がしてしまい、申し訳ありませんでした…!」
深く頭を下げるザーボンに、しかしフリーザからの返事は想像とは違うものだった。
「なぜ謝るのですか?私は『良いニュース』と言ったのですよ」
「は、し、しかし……」
「良かったじゃありませんか。生きていたなら」
言い募るザーボンの言葉を、フリーザはもはや聞いてなどいなかった。
「レギさんが戻ってきて下されば、ますます仕事が捗りますねぇ。レギさんを見付けたベジータさんにも、ちゃんとご褒美を差し上げないといけませんね。これまでの勝手な行動も全て不問にしましょう」
フリーザは、思い描く理想の未来へと一人想いを馳せるように、眼前に広がる宇宙を見つめていた。
「ベジータさん共々、今回の事が済んだら是非ゆっくりレギさんとお話がしたいですねぇ。いやはや、楽しみが一つ増えました」
その声はどこまでも上機嫌だったが、ザーボンは『あの』レギが、大人しく言うことを聞くのかと内心危惧していた。
だがそんな思いも、このフリーザという存在の前では無意味だとすぐに考えを改めた。
誰も、逆らうことなど許されない。
「……さて、そろそろ見えてきますね、ナメック星が。あると良いですねぇ、どんな願いでも叶えてくれる、ドラゴンボールとやらが…」
「……」
絶対の帝王の前にザーボンはただ片膝を折り頭を垂れ服従の意を示す。
ガラスに映るその目の奥の、人知れず燃える野心を見たのは、その場に居合わせたザーボンだけだった。
時間は少し遡って、ここは死者の世界、あの世。
そこで、地球で死んだ神とピッコロが対峙していた。
本来なら別々の場所へ行くはずだが、どちらからともなく閻魔に申し出ていた。
一つだけ、どうしても確認しておかなければならないことがあったからだ。
「丁度いい、貴様に聞きたいことがあった」
「…私もだ」
向き合い僅かな間の後、タイミングを合わせたわけでもく、二人は同時に口を開く。
「「ツフル人とは何だ?」」
質問の答えが見えてしまって、ピッコロはため息を吐いた。
「…貴様なら何か知っていると思ったんだがな」
「残念だが私も同じだ。ずっと何かが引っかかっているが、それが何なのかが分からない」
「いつからだ?」
「分からん。気付いた時からあった」
「…この妙な感覚もか?」
「ああ。……やはり、お前にもあるのだな」
ピッコロの指摘にも、神は首を横に降るしかなかった。
二人の中にあるそれは、今までにない不可解な感覚だった。
記憶のようなそれは手を伸ばせば届きそうなのに、思い出そうとすれば遠ざかる。
それなのに消えることもなく、わだかまりのようにいつまでももやもやと頭の中を漂っている。
いつからあるのか分からない。だが、そこに何かあると認識した時からそれはあり、時折無視できない程ハッキリと存在を突き付けられる。
まるでそれは自分達へ『忘れるな』と知らしめているようで、その感覚に僅かばかりの畏怖さえ感じていた。
ピッコロはあの時、間近でその力を感じて止めなければと無意識に手を伸ばしていた。
レギの頬に触れて自分が言ったのは、
--『そっちに行くな』--
ピッコロは、最後の感覚を思い出すように自分の手を見つめる。
「…これは何かの警告か?」
「分からない…思い出すべきなのか、思い出させないためなのか……」
思い出させないため……。それはまるで、何者かの意図があるような…。
自分のその言葉に、神は心の中で問う。
──……一体誰が
──なんの為に……
「オレ達だけなのか?」
「恐らくな…」
この感覚を同じ場所にいたクリリンと悟飯も持っていたのかは、もはや確認のしようもなく。
いくら考えても一向に出口が見えなくて、ピッコロは二度目のため息を吐く。
「奴(レギ)の中のサイヤ人の戦闘民族としての力が暴走したのならまだ納得は行くが、あれはツフル人のものだった」
なぜか、そう直感していた。今思えば、ラディッツと戦った時に感じたあの殺気もそうだった。
しかしナッパの時のものは、あれよりも数段濃く、強いものだった。
ピッコロの意見に、神も頷く。
「確かに。だがツフル人は科学の民、サイヤ人とは間逆のはずだ」
「それがあんな殺気を持てるのだとしたら、あるいは正反対の種族同士だからこそ生まれた『狂気』か…」
「……うむ、今はそれ以外に考えられんな」
結論として答えは出したものの、判然としない。
(…レギ、お前は一体…)
思いを馳せても、もう届かない。
次回
ナメック星編突入
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