第二章 (編集中)
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(…じ、地獄の門を開けおった!?この娘……!)
「で、悟空は今どこに?」
未だ硬直が解けない閻魔に、もう普段の様子に戻ったレギが訊ねる。
「…あ、ああ、先に蛇の道を進んでいるはずだが」
「ふ~ん………あの落っこちてってるヤツがそうかな?」
「え…」
言われた閻魔大王は慌てて水晶のチャンネルを切り替えた。するとそこにレギの言うとおり、地獄へ落ちてそこの番人ゴズとメズと勝負する悟空が映し出された。
閻魔大王は額を押さえ深いため息を吐いた。
「案内人の説明を聞いていたのかあいつは…」
「バカは死んでも治らないってか(笑)じゃ、あたしは一足先に界王様の所へ行きます。悟空によろしくね閻魔様」
「ちょっと待て!よ、よろしくとは…」
「『カイカイ』」
「!?」
短く言ったレギの姿が消えたのを見て閻魔大王は息を飲んだ。
「…………鬼よ」
長く沈黙した後、閻魔大王は重く口を開いた。
「レギの…前世を調べろ。今すぐにだ!!」
「は、はいオニ!!」
命令を受けた鬼が慌てて奥へと消えていく。
地獄の門を開けたこと。
ある界域の者にしか使えない技『カイカイ』を扱う。
そして、
「あれ?ここは…閻魔のおちゃんのとこかあ!?」
唐突に閻魔大王の机の引き出しが開いてついさっき出立したばかりのはずの悟空が顔を覗かせた。
「…よろしく、とはこのことか…」
「なあんだ、また始めっからかよ」
「落ちたお前が悪いのだ。孫悟空よ、レギが先に界王様の所へ行った。お前も早く行け」
「え!?レギもここに来てるんか!?」
「ああ、お前と同じく界王様に会いにな」
「なんだー!今からなら追いつけるかな!?」
「いや、無理だろう。とにかく早く行きなさい」
「そっか、レギ速いもんな!」
もはやそんな次元の問題ではないことも、この男には話しても無駄だと悟った閻魔だった。
孫悟空がここへ来ること、つまり地獄と繋がっている秘密の通路をレギは知っていた…。
「……まさか…」
(もし考えが正しければ、わしはとんでもない方と対面していたことになる…いや、それどころか、あの世も現世も全部ひっくり返るぞ………)
「……閻魔大王様」
「…来ていたのか」
控え目な声が聞こえて閻魔はその人物を部屋に通した。
「本当に会わなくてよかったのか、ミラ」
「ええ、あの子が決めたことですし、私達には何も出来ませんわ」
「父親はどうした?」
「奥で引きこもってます。姿を見たらとても自分を抑えられないって」
「まぁ、無理もないな」
「…あ」
「どうした?」
「隠し撮り頼まれていたのをすっかり忘れてました」
コロコロ笑う女性を見て、わざとだったんじゃないかな、と閻魔は思った。
その思いは、半分は当たっていた。
ミラ自身、直接レギと会って自分を保っていられるか分からなかった。
生まれて間もなく死に別れた我が子を、自分は死者で、レギは生者として……。自分の事を認識出来るかも分からない。それが怖かったのもある。
だから部屋にも入らず、レギがいなくなるまで外で待っていたのだ。
(……本当は会いたい…けど、あなたにはまだやらなくちゃいけないことがあるのよね…それに)
「…ところで、あのレギだが」
「はい?」
閻魔の投げかけた問いにミラの思考は一時中断された。
「あの者は生まれた時、何か変わったところはなかったか?」
「変わったところ?特には…至って普通で目に入れたって痛くないとっても可愛い赤ちゃんでしたよ」
淀みなくニコニコと笑顔のまま言ったミラに閻魔は自分でも顔がひきつるのが分かった。
「そ、そうか、ならばよい(こやつも相当な親バカだの…)」
「では、私は持ち場に戻りますわ」
「ああ」
入ってきた扉へと踵を返したミラがふと何かを思い出したように振り返った。
「あ、一つ気になることと言えば…」
「何か思い出したか!?」
「ええ、あの子、生まれた時から体に痣のようなものがありました。お腹から左脇を通って背中にかけて。…私の生み方が悪かったのかと思ったんですが、ドクター達は何も問題ない、と」
「…腹から、背中へ…」
「お役に立てますか?」
「あ…あぁ、分かった。戻ってよい」
閻魔と鬼達に一礼をしてミラはその場を後にした。
一方、地獄では。
「…う…嘘だろ…」
「嘘じゃない。こんなふざけた作り話するか」
惑星ベジータでの事の真相を聞かされ、ラディッツは愕然とした。
地球で死闘を繰り広げていた相手、レギの言葉を思い出す。
『サイヤは終わった』とレギは言っていた。
何を訳の分からないことをと、その時は鼻で笑っていた。
だが今こうして、かつての身内と対面し聞かされた話が、レギのあの反応と態度に結び付く、なら……。
「じ、じゃあ、あいつは…全部知ってて…」
――『あたしはまだ死ぬわけには行かないんだ』――
「……くそっ!!」
「あ、ラディッツ!!」
「追うなサラヴィナ」
「で、でも…」
「放っておけ。幸い頭冷やす場所には事欠かねえからな。しばらく一人にしておけばいい」
冷たい物言いだが、確かに今はそっとしておくのが最良なのも分かって…。それでもサラヴィナは黙ってはいられなかった。
「…ねぇバーダック。私ずっと考えてたことがあるの」
「……」
「レギを…、あの時一緒に死んで、みんなとここにいた方が幸せだったんじゃないか、って。…生きてて欲しいなんて、エゴだわ。私のわがままであの子、死ぬよりも辛い生き方をさせてしまってる…!」
「…オレ達が今ここでジタバタしたってどうにもならねぇよ。それを決めんのはあいつ自身だ」
「…ええ、分かってるわ、分かってるけど……」
(…どうも嫌な予感がして仕方ねぇ…)
バーダックは空を見上げた。
淀んだ雲しかないその先に、今同じ世界にいるはずの人物を思って。
(…レギ、また昔のお前みたいに、戻っちまうんじゃねえぞ…)
たとえ、届かないと分かっていても、バーダックはそう思わずにはいられなかった。
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