第二章 (編集中)
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「弱いくせに出てくんじゃないよ」
「おとうさーん!!」
慌てて駆け寄ろうとした悟飯をラディッツが捕まえてその首根っこを取ると乱暴に持ち上げた。
「カカロットよ、子供は預かっておく。生きて返して欲しければ兄の言うことを聞くんだな」
「あ…、レギが、悟空を攻撃、した…」
「…なんということじゃ…!!」
吹き飛ばされた悟空は、未だ起き上がれない。
打たれた衝撃とは違う別の痛みが、体中にびりびりと響いていた。
突然の、自分の兄だと言い張る男の登場で何もかもがおかしくなった。
レギとの久しぶりの再会も、ずっと待ち望んでいたはずだった。
大きくなった悟飯も見せて、またあの笑顔が見れるんだと、悟空はそう思っていた。
だからこそ、今日この日をずっとずっと楽しみにしていたのに…。
状況は、最悪だった。
「なに、難しいことではない。明日のこの時間までにこの星の人間を百人ほど殺してここに死体を積んでおけ。そうすればお前のことは見逃してやろう。息子も返してやる
弟の子供だ。できれば殺したくはない」
そういいながらもラディッツは笑っていた。
「もちろん命令が聞けなければ、息子が死ぬことになるがな」
「ひ、卑怯だぞ!子供を利用するなんて!!」
「そうじゃ!だいたい悟空に人など殺せるわけがない!!」
「いいとも。こいつが死んでも良ければ百人の死体は必要ない」
当然のように語るラディッツは、更に恐ろしいことを口にした。
「だが、この星の人間どもはどのみち近いうちに滅びる運命だぞ。
今の星を攻め落としたら、次のターゲットはこの星に決めた!」
「い!?」
「な、なんじゃと!?」
「俺達がかかればこんな星一か月足らずで滅ぼせるだろう。今カカロットが百人殺して見せても同じことになるかもなぁ」
「ひどすぎるぜそんなの…!!」
「まあ、その時までせいぜい楽しんでおくんだな」
「ラディッツ」
その時、レギがおもむろに腕を伸ばした。
「貸せ。ひどい持ち方だ」
「ふん、ガキの扱いは女のお前の方がいいか」
ずっとわんわん泣いていた悟飯をラディッツから受け取ってレギはそっと抱きしめる。
ようやく体を起こした悟空に、悟飯がレギの腕の中で必死に手を伸ばした。
「おとうさーん!!」
「レ、レギ…悟飯…!!」
「逆らおうなどとは考えても無駄だぞ。貴様の未完成な戦闘力では、この兄はもちろん、レギにすら適わんのだからな!!」
そうして、泣き叫ぶ悟飯をつれて二人は浮かび上がった。
「ではな、明日を楽しみにしているぞ!!」
「悟飯ーー!!」
なすすべもなく、ラディッツとレギが遠く空のかなたへ見えなくなるのを見送るしかできなかった。
「…ちくしょう…!!」
「悟空…」
砂浜に拳をぶつける悟空。
それが怒りなのか、レギへの戸惑いなのか、悟空にはもう何が何だか分からなくなっていた。
「…ショック、だよな。せっかく見つかった肉親があんなんでよ…。レギも…」
「とんでもないことになってしまったのう…」
「…レギ、本当にオラ達をずっと騙してたんか…」
「バカ言ってんじゃないわよ!!」
「!?」
声を上げたのは、ブルマだった。
今にも平手の2、3発は飛んできそうなくらいブルマは怒りに震えていた。
「…あんた達、レギが……本当にそんな風に見えたわけ!?」
「で、でも……」
言い淀むクリリンを、ブルマはキッと睨み付けて黙らせた。
ブルマには、分かっていた。
あのラディッツという男がレギから悟空へ矛先を変えた瞬間、レギの表情が強ばった。
そのほんの一瞬の反応が、ブルマに違和感を覚えさせていた。
その後の会話の、わざと悟空を蔑むような言葉を使うのも、ラディッツから悟空への興味をなくさせようとしていたものだとすれば筋が通る。
そして、進み出たラディッツに代わり悟空を攻撃したことで、それは確信に変わっていた。
ブルマははっきりと言った。
「レギはあんたを庇ったんじゃない!!あんなの芝居よ!あんたをあの男に連れて行かせないために!そうでなきゃ、さっきのでもっとひどい目にあってたわよ!!」
「……」
言われて悟空は、掌波で吹き飛ばされた時のことを思い出して青ざめた。
たしかに、衝撃はあったがダメージと呼べる程のものもなく、今はもう何ともなかったからだ。
「レギ…!!」
レギの裏切りの裏切り。
恐らくラディッツもその事には気付いている。気付いていながらレギの芝居に乗りこの場を去った。
レギとしても、今この場で事を構え戦闘になれば悟飯も仲間達もただでは済まないと分かっていたからラディッツについて行くしかなかった。
それがどういう事を意味するのか。
今のレギも悟飯も明日の期限まで無事である保証など、もはやどこにもなかった。
カメハウスを離れ、高速で空を移動する。
突然父親と引き離された悟飯は不安と恐怖に震えていた。
不意にぎゅっ、と抱きしめられている腕が強められたのを感じて、その震えが一瞬止まった。
「…大丈夫だよ」
小さな囁きが耳に届いて、腕の中でレギを見ようとそっと顔を上げた。
レギは、少し先を行くラディッツを見つめたまま、もう一度呟く。
悟飯の不安や恐怖を拭い去るように、優しい声で。
「…絶対に、お父さんとお母さんの所に返してあげるから…」
そしてまた、強く抱きしめられた。
空を高速で飛んでいるのに、強い風に当たることも寒さも感じない。
それが、レギの斬気で張った幕で守られていることを、幼い悟飯にはまだ分からないのであった。
…ただ、この感覚を、もうずっと前から知っているような、そんな感じがして。
包み込まれる暖かさと鼓動の音がひどく安心できて、いつの間にか恐いのも体の震えも止まっていた。
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