すれ違う思い 前編
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ツクヨミはかけられた言葉には緩く首を振っていた。
「そんなつもりはありません。ただ、私はあなたの心を見てしまったから。だから、見せしました」
それからツクヨミは顔を上げ空を見つめた。
新緑色の瞳に雲の白と空の青が入り混じり光を帯びて不思議な色合いになった。
「…今はもうあの場所がどこかも覚えてはいないんです。忘れてしまいたかったのかもしれない。
だけど、思い出せなくても私、今はちっとも悲しくはないんです。私を家族として受け入れてくれた人がいるから」
「………」
「その人にも最初は力のことは言えませんでした。でも、到底隠しきれなかった。自分がいて迷惑をかけてしまうんじゃないかって、心の声が聞こえる度に怖かった…。
追い出そうとしているわけではなかったけれど、それでも私は怖かった。
だから私は、自分の力のことを打ち明けました」
「……それで、どうなったのだ?」
ツクヨミはにこ、と微笑んだ。
「最初は驚いていたけど、こう言ったんです。
『どんな人間でも、生まれてきた理由が必ずある。お前がまだそれを見つけられていないなら、これからここで、捜していけばいい』と。
だから私は今ここにいるんです」
「…………理由…」
「そうだピッコロ!あなたがその『理由』になってくれませんか!?」
あまりに突然な申し出に、ピッコロは返事を返すどころか言葉の意味が読み込めなかった。
きょとんとするピッコロに、ツクヨミはどこか嬉しそうに言った。
「だってあなたが初めてなんです。私を押し倒した人vV」
「は?…な!ちょっと待て!?」
意味が分からない。
意味が分からないからこそこのままいいなりになってはいけないと自身の本能が警告していた。
だがツクヨミはこれ決まった!とばかりに満足げににんまり笑うと、
「ふふふ。明日もまた桃を持ってきますね!」
「待てと言って…人の話を聞けーーーっ!!!!」
驚くべき脚力でその場から走り去り、丘にはピッコロの声だけが虚しく響いた。
その二人をこっそり見つめている人物がいた。
気配を殺し完全に死角になる場所から一部始終を眺め、
「…………不埒な。今しばらく様子を見るとするか」
誰に言うでもなく一人ごちて静かにその場を後にした。
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