すれ違う思い 前編
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ツクヨミが寺院に帰ってから数日後。
ツクヨミはまたあの丘へ来ていた。
『ツクヨミ、お前が今の時期に帰ってきて良かった』
土産話の途中で、武泰斗が急に険しい表情になった。
『ピッコロ大魔王という人物の名を聞いたことがあるだろう?』
『はい…』
そうして武泰斗から語られた内容は、噂で聞いてきたものそのままだった。
だが、実際に会ったツクヨミには、そんなに恐れるような人物にはとても見えなかった。
…その心内を読んでしまったせいもあった。
荒ぶる怒りや憎しみに埋もれるようにしてそこにあったもの…。
それを見たとたんに、どうしても放っておけず声をかけてしまったのだ。
結果、首を絞められ地面に押し付けられる羽目になったのだが、ちっとも恐ろしくなどなかった。
だから、また訪れていた。
初めて会った丘の上。
今度は桃だけじゃなく葡萄や饅頭も持ってきてみた。
しかし、先日会えたのは偶然だったのか、待てど暮らせどピッコロは現れない。
(…もう、ここには来ないのかしら…)
抱えた膝に顎を乗せて、いつしか眠りについていた。
「………ん」
ふと、目が覚めて辺りを見てみると、もう日が傾き始めていた。
「いけない!もう帰らなきゃ!……?」
慌ててカゴを持って立ち上がった時、違和感を感じた。
来た時よりも、軽かったのだ。
被せてあった布をどけて中を見てみて、『あ』と小さく声を漏らす。
カゴの中は、桃だけがなくなっていた。
急いで辺りを見渡し気配を探ってみたりもしたが、目当ての人物は影も形も見あたらなかった。
「…お饅頭とか、他のも食べてよかったのに」
桃だけがなくなっていたことに、無性に笑いがこみ上げてくる。
「ピッコロー!また明日も持ってきますねー!!」
返事は返っては来なかったが、それでも満足げにツクヨミは寺院へと帰っていった。
そして、次の日。
この日もピッコロはなかなか姿を見せずにツクヨミはまた膝を抱えて目を閉じた。
静かに、その後ろに気配が降り立つ。
物音を立てないようにそっと近付いて、カゴへ手を伸ばすと、中の桃を取っていった。
「いただきますが聞こえませんよ?」
「っ!?」
ピッコロは飛び上がるほど驚いた。
「きっ…き、貴様!起きて…」
「ええ、最初から起きてましたよ。ピッコロ、あなたまた黙って持ち逃げするつもりでしたね!」
腰に手を当てて頬を膨らませたツクヨミ。
「き、昨日は貴様寝ていただろうっ!!」
「貴様じゃないです。ツクヨミ!ちゃんと教えたじゃないですか!!」
「う……」
ますます怒って口調が厳しくなるツクヨミに、天下のピッコロ大魔王ともあろう者がタジタジになる。
それを見て、ツクヨミの顔がみるみる赤くなっていき。
「ぷっ…!!」
「………は?」
急に吹き出したツクヨミに、ぽかんとしているピッコロを後目に、ツクヨミは必死に笑いを堪えるように肩を震わせた。
「………なんだ…?」
心底不思議そうにする声に、ツクヨミは限界を超え腹を抱えて爆笑した。
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