すれ違う思い 前編
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四年余りの出来事を話すうち辺りはすっかり暗くなってしまった。
それでも全て語れたわけではないが、続きはまた今度と言うことでその日はお開きになった。
「お帰りなさいませツクヨミ様」
「…あ、鶴…」
自室へ戻る途中、通路の向かいから武泰斗の弟子の一人鶴(現代の鶴仙人)が現れて、深くお辞儀をした。
ツクヨミはこの男が苦手だった。
鶴は頭を上げ真正面から対峙する形になった。
「驚きましたよ。随分長いお散歩でございました。よく帰ってこられましたな」
「何が言いたいんですか鶴?」
ツクヨミはあえて鶴の嫌味に乗っかった。
にっこり笑って言えば、鶴も笑顔で応戦。
「いえね、武泰斗様の了承もなしに勝手に寺院を飛び出し、気が済んだらひょっこりのこのこお帰りとは、気ままな猫でもあるまいし。しかし、お元気そうで何よりと思いましてな」
ニコニコ。
「まぁ!言いたいこと言っておいて無かったことにしようとしてません?あなたこそ、そのひねくれた性格は相変わらずなようでとても残念です」
にこにこ。
「…外へ出て、少しはよろしくなったかと思えば、ますます口が達者になりましたな」
「…鶴、あなたが私を気に入らないのは知っていますし、今更仲直りをしようとは言いませんけど、こんなやりとりは不毛ですよ。止めましょう」
鶴はツクヨミの言葉を聞いて笑顔を引っ込めた。
見定めるように目を細める。
「…まぁ、少しは大人になられたようですな。それではこの辺で失礼しますぞ」
「ええ、おやすみなさい」
軽く会釈をして、立ち去っていった。
完全に気配が消えてから、ツクヨミはため息を吐いた。
「…亀、もう鶴はいなくなりましたよ」
呼び掛けると後ろの通路から亀(現代の亀仙人)が静かに姿を表す。
「やはりバレていましたか」
「鶴がいなくなるまで待ってくれたでしょう?」
「はははははは。」
「目が笑ってませんよ亀」
「全くあの男ときたら!!」
苦笑してツクヨミが諭せば、亀は不満を露わにした。
「何かとあなた様に突っかかって行って、申し訳ありませぬツクヨミ様!」
「別に亀が謝らなくても、それに私は気にしていませんよ。確かに、お祖父様の許可無く寺院を飛び出したのは事実ですし、あの人のああいう所なんて今に始まったことではないですからね」
「…ツクヨミ様こそ、言葉とは裏腹に気が怒りに満ちておりますぞ」
「あ……ふふっ」
噴出したツクヨミに釣られて亀も吹き出し、廊下に二人の笑い声が静かに響いた。
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