すれ違う思い 前編
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思い起こせば四年と二月と二十七日前、
ツクヨミが家出も同然で寺院を飛び出した理由。
武泰斗に拾われ寺院ではただ一人女子のツクヨミも、武泰斗や弟子達の修行に興味を持ち、弟子達も遊び半分で稽古を付けたことから始まった。
まずは基礎から、と始めたまではよかったのだが、ツクヨミは天賦の才か筋もよく、その上達振りは龍が天へ昇るがごとく。
めきめきと力をつけていき、本格的に修行を始めると、2、3年で弟子達でも適う者が両手に収まるほどにまで強くなってしまった。
その中には若かかりし頃の亀仙人や鶴仙人もいたのだが、相手は曲がりなりにも自分達の大恩師のお孫様。
他の男の修行僧相手にするのとは訳が違う。
なかなか本気で戦うことも出来ずにいた。
ツクヨミもその事には気付いていたし、これ以上弟子達に無理強いするのも申し訳ないとも思い始めていた。
そして、ついに行動を起こす。
ある日武泰斗の下へ行き、こう言ったのである。
『お爺様、ちょっとそこまで武者修行に行こうと思います』
『は?』
いつも威厳ある険しい面立ちを、目と口をぱっくり開けて呆けている祖父に、ツクヨミは深く頭を下げた。
すると、長く美しかった後ろ髪も襟足の所でばっさりと短く切られているのが見えて、そのダブルパンチの衝撃に武泰斗の思考回路が完全に停止した。
『では、行って参ります』
『……』
ぽかんとする武泰斗に背を向け躊躇することなく寺院を出て行ったツクヨミ。
武泰斗が正気に戻った時には、すでに下山した後だった。
後を追うにも目的地も分からないでは連れ戻しようもなかった。
何度か弟子達に探しに行かせたりもしたが、さすがというか、手掛かり足掛かりを残しつつも絶対に見つかることもなく、時々思い出したように届く文で近況(というのか)を知ることも出来たから、最初の一年ほどでのツクヨミ捜索は打ち切られた。
(…清々しい顔をしおって全く…)
出て行ってからの月日の中で、随分大人びた顔立ちになったが、土産話を披露するツクヨミは武泰斗にとっていつもと変わらない孫の姿で。
愛情深い笑みを浮かべて、ツクヨミの声に聞き入る武泰斗だった。
「世の中には、男性から女性になったり、女性から男性になったりする人もいたのには本当に驚きましたよ!」
「……お前は一体どこで何を見てきたのだ…」
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