すれ違う思い 前編
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「ただいま戻りました」
「え……ツ、ツクヨミ様!?」
ツクヨミが帰ってくると、その姿を見て驚き慌てる弟子達で寺院は騒然となった。
「お帰りなさいませ!!」
「お祖父様は?」
「ほ、本堂の方に…」
「ありがとうございます」
「あの…ツクヨミ様!!」
礼を言って去ろうとしたら大きな声で呼び止められた。
振り返るとその場にいた門下生達がずらりと並んでツクヨミを見ていた。
「本当に、おかえりなさいませ」
「はい、ただいま!」
元気いっぱいに返事をして、皆の所を後にする。
本堂に着くと、祖父、武泰斗は部屋の真ん中で座禅を組み瞑想しているかのようだった。
ツクヨミは中には入らず入り口で正座し三つ指を着いて深々と頭を下げた。
「お祖父様」
「…ツクヨミか」
「はい、只今戻りました」
「よく、無事で帰ってきた……などと安々受け入れると思うたかこの爺不幸者め!!!」
突然怒鳴った武泰斗にツクヨミは顔を上げた。
「何をそんなに怒っておられるのですか?」
「怒るわ!!お前がヤケを起こして寺院を出てから何年経ってると思っとるんじゃ!?」
こてんと首を傾げたツクヨミに、だん!!と床を踏みつけ恫喝した。
ツクヨミは指折り数え始める。
「ん~、四年と二月(ふたつき)と、二十七日目ですね」(ケロリと)
「たわけーーっ!!!」
顔を真っ赤にして怒鳴った武泰斗に耳を押さえながらツクヨミは困ったように眉根を寄せた。
「そんなに怒らないでも…ちゃんと文は出したでしょう?」
「そういう問題か!!大体書いた日から何ヶ月も経ってから来る文など聞いたこともないわ!!」
「でもちゃんと届いてたじゃないですか」
「ああ言えばこう言う~~~!!!」
どこまでもマイペースなツクヨミに地団駄を踏み出しそうな武泰斗。
だが、陰で様子を窺っている弟子達の手前それは出来ない。
それに、言いたいことは、もう大体言ってしまった。
つり上がっていた眉が下がり、祖父らしい優しい面持ちになった。
「まぁよい。何はともあれ、お帰りツクヨミ」
「ただいま、お祖父様!」
無邪気な笑顔につられて武泰斗も笑ったのを見て、影で隠れていた弟子達もほっと胸をなで下ろしたのだった。
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