すれ違う思い 前編
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男の手は相変わらず首にかけられたままだったが、落ち着き払った声で語りかける。
「私は武者修行に出ていて、これから家に帰るところだったんですよ。あなたは、今巷で噂のピッコロ大魔王さんですね」
笑みは崩さず言うと、不愉快だとばかりに顔をしかめた。
首にかけられた手に力が込められて少し息苦しくなる。
「薄気味悪い奴め、そうと知っていながら何故逃げない?オレが怖くないのか!」
「なぜ怖がらないといけないのですか?」
単純に、不思議に思ったことを口にしただけだった。
しかし、予想外の言葉だったらしくピッコロ大魔王は自分から離れていき、首から重みも消えて呼吸が楽になった。
起き上がって軽く咳払いを一つ。
「あ、そうだ!来る途中で桃の木を見つけたんです。季節はずれだったけど、なぜかたくさんなっていて、よかったら一緒に食べませんか?」
差し出せば、得体の知れないものと遭遇したかのように、ピッコロ大魔王は更に後ずさった。
「…貴様は、一体なんだ…?」
「私はツクヨミ。花果山水簾寺の大老師、武泰斗の孫娘です」
満開の桜を思わせる笑顔が、そのまま桃を頬張った。
「大丈夫。とっても美味しいですよこの桃!」
無垢なまでに差し出されたそれを、ピッコロ大魔王はつい受け取ってしまったのだった。
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