すれ違う思い 前編
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「天津飯よ、お主あの鶴からツクヨミ様のことを聞かされておるだろう?」
「え……はい」
突然話を振られて戸惑いながらもその事実に頷いた。
「ピッコロ大魔王の話の折りに、…あの」
「全て、聞いたんじゃな?」
「…やはり本当なのですか、あの方が自らピッコロ大魔王と共に魔封波に封印されたというのは」
「ああ、本当じゃ。あの時、魔封波はツクヨミ様がいなければ成功せんかったじゃろう」
「…ツクヨミという人物は、本当は何者なのですか?人の心を読み、魔封波に入り何百年も生きていられるなんて…!」
「何者、か…。少なくとも当時のわしには、少々お転婆じゃが心の優しい、普通の女の子にしか見えんかったよ…」
懐かしそうに亀仙人は目を細めた。
遠い記憶を辿って、だけど、天津飯には少し悲しそうに見えた。
神殿に吹く風とは別に、ゆらゆらと髪と着物を揺らめかせながら、ツクヨミは神と対峙していた。
──…初めまして、だのう。神よ。わしが何をしにここへ来たか、当然分かっておろうな?
「ツクヨミ…。お前の肉体なら神殿の中に」
──そんなものはどうでもよいわ!!!
神の言葉を、ツクヨミは鋭く一蹴した。
──…わしは、怒っておるぞ、神。封印の中で、ピッコロの奴から色々と話を聞いたわ。無論、お主とピッコロの本来の関係もの。
ギリッと奥歯を噛み締める。
──己が神になるためにピッコロを切り捨て下界へ置き去りにして、自分はここでのうのうと高みの見物か!!
己の未熟さを棚に上げて、よくも神などと名乗れたものだな!!
「ツクヨミ、お前の気持ちはよく分かる、しかし」
──っ黙れ!!!!
ごうっと、ツクヨミの怒りが風となって神殿に吹き荒れた。
──知った風なことを言うでないわ!!お主なんぞに分かってたまるか!!お主なんぞに、お主なんぞに……!
両手をめちゃくちゃにブン回し神を責め立てても、既に実体を持たないそれは空振りするばかり。
ツクヨミはがくりと膝を着いた。
──…いや…、分かっておる。これは、ただの八つ当たりじゃ…わしが一番腹を立ておるのは、許せないのは…、
わし自身じゃ…!!
「ツクヨミ…」
先ほどまでの勢いもなくなり、ツクヨミは両手で自分の顔を覆った。
──…あの時と同じだ……。結局、わしには何も出来ない…!!
時は、遡る。
あの時へ。
……
風が暖かくなり始めた、春の始まりの頃。
人気のない丘の上で、背中は地面と密着して、殺意の込められた手が自分の首にかけられていた。
地面の草の緑に桜色の髪が乱れ、新緑色の瞳が真っ直ぐに男を見上げていた。
物怖じしないその眼を、暗く冷たい眼で見下ろして男が口を開いた。
「…貴様はなんだ?」
「ただの、通りすがりです」
威圧的な問に、にっこりと答えた。
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