◆砂の世界◆
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「やった!やったぞー!!」
「覚えてなさいよアンタ達ぃ!!次こそは…絶対…っ…」
小さくなるゲジ竜の声も聞こえなくなった頃、車は適当な岩陰に止まった。
「み、見ましたか王子!私のテクニック!!」
「ふん、ただまっすぐ走ってただけじゃんか」
「黙って前見て走れって言ったのはあなたでしょー!!」
一蹴されたシーフは涙目になって抗議した。
ミルナギは、車の陰で一人膝を抱えていた。
さっきのゲジ竜の言葉が突き刺さっていた。
――『飛べもせず、炎も吐けないんじゃ人間と変わりないんだよ!!』――
「……」
抱えた膝に顔をうずめていた。
「…ミルナギ」
いつのまにか側にラオが立っていた。
「大丈夫か?」
「……」
ミルナギは顔を埋めたままだ。
「…まぁしかし、あのゲジ竜がオカマだったとはなあ!」
「………え」
明るく笑い飛ばしたラオに、思わずミルナギは顔上げた。
「そもそも言葉を話したことにも驚いたが、やつらにもああいう種類がいるんだな」
どこか楽しそうに話す。
ミルナギは段々分からなくなっていた。
このラオという、人間が。
自分は、こんな人間知らない、見たことがない。
「……あなたは、私達が怖くないの?」
たまらずミルナギは聞いていた。
家に来た時もそうだった。
緊張こそしてはいたが、恐れというものはなかった。
今も…。
「私達は、魔物なのよ?」
「だが、今は旅の仲間だろう?」
「……な、かま…」
初めてその言葉を聞いたように見上げてくるミルナギに、ラオは少し屈んで手を差し出した。
「さっきはありがとう。あそこで引き上げてもらってなかったら、今頃やつの胃袋の中だったよ」
微笑んで言った。
ミルナギが恐る恐るとその手を取ると、しっかりと握り返してきた。
…あったかい……?
「…おいおっさん」
声に振り返ると、腕を組み仁王立ちのベルゼブブがいた。
二人の握手を見て、ムスッとした顔でラオを睨んだ。
「オレには礼はなしかよ?オレだってあんたを引き上げたんだぜ!」
「ああ勿論だ。ありがとうベルゼブブ」
「ふんっ」
素直じゃないベルゼブブは鼻を鳴らしてそっぽを向く。
それを見て、後ろでシーフがボソリ。
「…ヤキモチ…」
「うっせえ!!そ、それよりこっから先どうすんだよ!?荷物全部なくなっちまったんだぞ!!」
「…」
「……」
「………あぁ」
焦って怒鳴ったベルゼブブの言葉は、核心をついていた。
「…あぁ、そうだったな…」
「おいおい…」
ずどーん、と落ち込むラオにベルゼブブ達もかける言葉がない。
旅は、重要な水と食料と燃料をいきなり失ってしまったのだった。
あとがき→