◆出発◆
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焼けただれた腕が伸ばされる。
見るからに痛々しいのに、それはむしろ自分をいたわるように差し出されていた。
「ほら、大丈夫」
そう言って、小さなその腕を背中に回し、まるで硝子細工を扱うかのように自分を包み込んだ。
「怖かっただろ、もう大丈夫だから」
とん、とん、と小さな子供をあやすように背を叩いた。
触れる少年の、その温もりが、長い間閉ざしていた少女の心に日を灯した。
ずっと強ばらせていた身体から力が抜け、そのまま少女は意識を手放した。
くたり、と自分に体を預ける少女を、少年は、今度はしっかりと抱いて立ち上がった。
一呼吸。
瞬く間に全身の火傷が完治し、少年を中心に魔法陣が開く。
「もう、大丈夫…」
もう一度呟いて少女を強く抱き締めた。
魔法陣が発動し辺りに光が溢れた。
光がおさまった後には、二人の姿は跡形もなくなっていた。
物語の歯車が、少しずつ動き出す。
それはやがて、世界に大きな変化をもたらすものだとは、この時はまだ、太陽でさえ知らないのだった。
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