◆出発◆
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「お許しが出たぞー!」
家から出て来たベルゼブブがそう言えば、ラオは一安心と息を吐いた。
ベルゼブブが車を指さした。
「これで行くんだろ?オレ達何人乗れるんだ?」
「荷物もあるから、せいぜい二人か三人…」
「ふーん……じゃあオレと…」
ミーと…、と考えてベルゼブブは仲間を振り返った。
──ささっ
「シーフかな」
「っええーー!?」
誰もがそんな危ない旅になんて行きたくない!!と一斉に顔を背けた中から、無情にもベルゼブブの選択が行われた。
「な、なんでわしが!?ちっとも強くないし…!」
「お前物知りだし、盗むの上手いじゃん。それに、ミーも行くんだ」
「え……」(シーフ)
「え?」(ラオ)
「……え」(魔物一同)
とそこへ、
「お待たせー!…ん?どうしたのみんな?」
旅支度万全のミルナギが現れ、
「あ、あなたも…」
「「「ぇぇえええーー!!!!?」」」
ラオより何より、一番驚いたのは魔物達だった。
「ミーちゃんが人間と一緒に!?」
「どうして!?」
「ムリムリムリ!!絶対やめといた方がいいって!!」
「ミルナギ様、一体…」
「ミルナギっ!!」
シーフを遮ってサキが駆け寄った。
「ほ、本気なの!?あんたが人間と、しかもこんな危ない旅に…」
「お義父様のお許しは貰ったよ」
「っ!!…サタン様が…」
その言葉にざわつく魔物達。
大魔王サタンの言葉は絶対なのだ。
ミルナギは自分の肩を掴むサキの腕に自分の手を重ねて微笑んだ。
「私なら大丈夫。それに、私一人じゃないもの。ベル達も一緒なんだから!」
「あ…」
サキはそれ以上何も言えなくなった。
「ミルナギ様…」
「ほらシーフ!早く準備してくるぞ!」
ベルゼブブに急かされて、シーフも準備のため家に一旦入った。
「…あ、あなたも、来てくれるのか…?」
未だに信じられない面持ちでラオが問いかけた。
「えぇ、行くわ。あなたのその計画は、成功させれば私達魔物も助かるから」
やはり無感情な声で答えた。
だが、ミルナギはかつて空を統べていた最強の魔獣、サラマンダー。その唯一の生き残り。
その背にある翼から、人間の間で片翼でありながらも『悪魔の盾』と恐れられている存在。
心強い旅の同行者だ。
「そうか、ありがとう」
礼を言うと、少し驚いたように目を見張った。
「………」
その目が、ほんの少し陰る。
切ないような、苦しいような…。
だが、それを確かめる間もなくラオから目をそらすと荷台に自分の荷物を乗せに行ってしまった。
(…人間嫌いというのも、本当なのだな…)
…いつか、普通に話しをしてくれるようになるだろうか……。
そんなことを思いながら、その小さな背中を見つめた。
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