短編
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いつの間にか寝ぼけ眼のホップが審判位置に立っていた、聞けばさっき飲み物を取りに行った際ダンデさんが一声かけてきたらしい。近くでバトルを見たいということだっただが、私は周りを気にせず攻撃を仕掛ける質だから大丈夫かなと思ってるとホップは気合いを入るため両頬を叩いていた。二十に重なって聞こえたから視線をずらすとダンデさんも同じ事をしててそのシンクロは兄弟だなあと思わざるをえなかった。
「ホップ!イズはシンオウのチャンピオンと戦ったことがあるらしいぜ、よく見とけよ!」
「アニキそれマジ!すっげーなイズ!後で俺にも色々教えてくれ!楽しいバトル期待してるぞ!」
うん、と言った手前やるほかないけれど、腰にかけたモンスターボールにいる相棒はどう思っているのだろう。戦闘に出たいだろうか、なにより、こんな私がトレーナーであって良いのだろうか、満足なのだろうか。そう問いかけたくて、怖くてできずにいる。
互いに宙へ投げたボールが開き、赤い光に包まれてそれぞれの相棒が姿を見せる。
ダンデさんの前に立ち塞がるようにして此方を眼光鋭く睨みつけ、命のエネルギーでもある尻尾の炎を高く昇らせると大きく咆哮を上げた。
空気を震わせるような威勢を前に、対する私の前で浮遊する影は、背中越しでも分かるくらいあくどい笑みを浮かべ好戦的に睨み返していることだろう。こうなると、クロバットは私の声しか通らなくなる。
私は背を向けるクロバットに声をかける、直ぐ振り向いてくれた彼は良い緊張感を漂わしていた。クロバットの気持ちを無下にするわけにもいかない。
「……クロバット、相手はチャンピオン。
リザードンが相手だし、攻めてこう」
了承しこくりと頷いてくれたクロバットはリザードンに向き直り、合図を待つ。
皆、笑ってくれる。私がなんと言おうと、その本意を理解して受け容れてくれる。
「二人とも準備は大丈夫か?」
「いつでもいいぜ!」
「オーケー」
「それじゃあ行くぞ、バトル、スタート!!」
ホップの振り下ろした合図と共にリザードンが羽を大きく広げた、力のあるリザードンは地面を走って距離を詰めるという闘い方は殆どない。しまった体をも持ち上げる強靱な両羽を羽ばたかせることで空中戦をものとし、地上でもスピードにのったパワーある戦いを見せつける。
旅のパートナーとして最初に選ばれる3匹のポケモンの1匹、これまで何度とリザードンを連れるトレーナーに出逢い戦って、みてきた。
「クロバット」
せっかちな性格がバトルの場では大いに生きる、目に追えない速さで一気に距離を詰めたクロバットは瞠目するリザードンを前に高らかに鳴くと、羽の先からボコリと毒素の強い泡が噴いた。
「クロスポイズン」
毒の刃はリザードンを切り裂き、ダメージはあたえたけれど流石はチャンピオンの相棒、怯むことなく狙いを外さずにいて、内にためた炎で焼き尽くそうとする。
「リザードン、火炎放射だ!」
「みきり」
轟々と激しく燃え上がる炎は一直線に攻撃直後のクロバットに襲いかかったが、敵の攻撃の軌道を読んだクロバットは射出された火炎を見極め避け続けた。それを目に留めたダンデさんは口元に弧を描くと生き生きとした風に声を張る。
「イズイズ!君のクロバットはやはり速いな!初見で俺のリザードンの攻撃を食らわない奴はそういないぜ!」
「お褒めにあずかり光栄です!」
「攻守の切り替えは速く先手をとられた。まずはあのクロバットのスピードを封じないとな……頼むぜ相棒!」
ダンデの声に大きく返事したリザードンは、火炎の渦を放出しながら一気に距離を詰めてくる。熱が空気を伝い辺りはどんどん温度が高まっていく。
「クロバット、炎に向かってエアカッター!」
近接戦は此方が不利、早めに攻撃をいなし距離を取ろうと思った私の指示に従い、クロバットが高速で羽ばたき生んだいくつもの風の鎌が火炎放射とぶつかり合い相殺、激しい黒煙がフィールドに発生する。煙を払うか、そう逡巡した一瞬迫る気配に空気が震えた。
「…まずい、クロバット下がって!」
「リザードン、げんしのちからだ!」
黒い霧から覗く鋭い眼光に気付いたときには一手遅く、原始の力を呼び覚ましたリザードンの周囲には無数の岩が浮かびあがっており、クロバット目掛け一気に砲撃する。
クロバットは逃げ切ろうとするも、黒煙が晴れきれておらず視界の不良に合わせ手の内は相手の方が勝ったことで徐々に退路を塞がれもろに攻撃を食らってしまう。
飛行タイプのクロバットに岩タイプの技は有利。
敵の視界を奪い攻撃に転じる。その機転は流石チャンピオンの実力だと考えざるをえない。
「クロバット」
かろうじて耐えたパートナーは地面にぶつかることを避け空中で体勢を立て直す。私の呼びかけにも大丈夫だというように返事をしたため、この戦いはもう暫く続きそうだ。あんな楽しそうに笑ってるクロバットを見るのも久しぶりだったから。
「敵を錯乱するよ、エアカッター!」
「怯まないで行くぞ!エアスラッシュ!」
「背後に回り込んでクロスポイズン!」
「そこを待っていたぜ、火炎放射だ!」
隙を狙いすぎてさっきと同じパターンになった。流石に同じ手は食わないダンデさんは接近するクロバットを火炎放射で落とすようリザードンに指示を出す。ぐっと体に力が籠るも私はすぐクロバットが避けるためのルートを探す。
「地表際に下がって!」
「追い詰めろ!」
「後ろ迫ってるよ!迂回してエアカッター!」
「エネルギー満タンだ!ソーラービーム!」
「強烈ね……みきりで回避!!」
互いに譲らない白熱し続けるバトル。一瞬の油断が命取りになる今、私の耳に届くのはフィールド内のものだけ。風や空気の揺れる音、大地の振動しないを感じ取り視覚の情報を補完してクロバットの進路退路を伝えていく。
しかし、隙をあたえずあたりの強いリザードンだ、攻撃を与えても中々ダメージが蓄積しているように見えず、一撃一撃がおもい。堂々と立ち続けるその様はもはや貫禄があった。だけど、パワーで負けるなら此方は地の利を生かす。
「クロバット接近して」
「くるぞリザードン、火炎放射!」
「きた…!地表すれすれを飛んでかわせ!」
ダンデさんは必ず何処かで炎技を使ってる。チャンピオンとしてのダンデさんのバトルは知らないけれど、あの苛烈な炎の攻撃は辺りを呑みつくさんばかりの威力で自信が感じ取れた。
きっと、彼にとってもリザードンにとっても大切な技なんだろう。
だから、他のタイプの技が出たら攻撃で相殺することもあったけど後半は攻撃を浴びないよう避けることに徹底したクロバットの動きには流石に気付いているようで、目つきが鋭くなった彼を見て背筋にぞくりと冷たいものが這ったが此処で怖気づくようじゃ、私は何も変われない、彼へ私達の実力を見せるためにも、バトルで答えるためにも。備は整ったよ。
「クロバット!準備オーケーよ!天に向かって風を巻き上げて!」
「なに…?!」
私の意図を理解してくれたクロバットは地表すれすれで器用に仰向けの体勢を取り4つの羽を力強く羽ばたかせる。
私達の行動に備えたダンデさんはリザードンにいったん追うのをやめるよう告げる。
「リザードン、今のうちにエネルギーを充填だ」
青天の霹靂から十日あまり、今日はポケモンバトル日和で太陽は雲にかかることなく地上を見下げている。こういう日は炎技の威力も上がるしチャージ技のスピードも速める。ダンデさんにとっては良いコンディションであるだろう。
クロバットは私を信じ指示に答えてくれている、私もそれに答えたい。答えなければならない。
「ダンデさんならどっちかなと思ったんですけど、突っ込んでこなくて良かったです」
「ほう?どんな考えがあるのか知らないがこれで決めるぜ、ソーラービーム発射ッ!!!」
合図に合わせて打ち出された高出力のエネルギーがクロバットに差し迫る。
「エアカッター!!」
身を翻して瞬時にソーラービームに向けて空気の刃を飛ばしていくが技を全て防ぎきれずクロバットはくらってしまい衝撃で爆風が吹き荒れた。
視界を邪魔する砂塵が目に入ろうと私はその瞬間を見逃さないため目を凝らす。
やると言ったからには勝つ。体を張ってポケモン達はバトルしてくれる。私は見てるだけ、何も出来ない口だけの存在。
だから、皆が勝てるように、その力を最大限に引き出して場を支配する。
「くるよ。クロバット!やると言ったからには勝つんだからね!あくのはどう!」
「まだ立てるのか!?リザードンよけるんだ!」
全身に傷を負いながらもクロバットは全身から悪意のオーラをリザードンの方へ狙い飛ばす。リザードンは黒く染まった波動は避けてみせたが、火炎放射をわざと地面近くで逃げ続け熱せられた地表、タイミングを見計らい巻き上げた風。
「リザードン!」
クロバットは追撃していないにも関わらず、リザードンはダメージを負って膝をつく。
「イズ……ずっと君の手が読めなかったがまさかこれを作るために?」
「リザードンのパワーは侮れませんから、その力利用できないからと思いまして。
あ、ダンデさん、少し下がっていた方がいいですよ。ポケモン達より弱い人は」
耳元を空が斬ったかと思えば、左頬に走る熱とピリッとした痛み。
右手で拭ってみると言った傍から飛んできたらしい。
「簡単にきれますから」
地表が熱せられることで上昇気流が巻き起こることで激しく渦を巻く突風が生まれる。私達がバトルを繰り広げるフィールド上にはリザードンの放出した熱を一定の地面に集約させ、クロバットが起こした風に乗ってできたつむじ風がクロバットとリザードンを隔てるように発生していた。
別称鎌鼬。シンオウにも根付いた一つの伝承、歩いていただけなのにいつの間にか服や皮膚がパックリと避けており、しかし痛みは感じなかったという。その現象の正体は風ポケモンの仕業と噂されることもあったが科学的根拠から自然現象だと指摘することもあったとか。はたまた別の存在が引き起こしたのかはさておき…。
「ホップー離れててねー危ないからー!」
「おう、わかったぞー!ありがとなー!」
ホップにも離れているよう告げれば声は通ってたようで、焦った様子ながらもちゃんと物影まで避難してくれた。
そういえば此処人の敷地だったなあ、やってしまった。
「ハ、ハハ…フハハ!スゴいなあ!まさかリザードンの技を逆手にとって」
ダンデさんは突然笑いを零し、帽子を被り直すと目の前に巻き上がる渦を睨めつけた。
「旋風を起こすとはね!」
1対1と言えども立派な試合、勝ちにこだわった私は旋風を人為的に引き起こすと、あくのはどうの技を利用し空気の通り道をリザードンの方に作った、旋風から発生した真空は出来上がった空気の流れを進むと見えない刃としてリザードンに降り注ぐ。
だけどこうして自然現象を利用すると、人間の思い通りにはならないこともあるわけで当然例外も発生する。あらぬ方向に向かっていった真空の刃は一定の距離ないであればその鋭利さは依然残るからその威力のまま辺りに襲いかかる。元々やろうとは思っていなかったから何の準備もしていないけれど、フィールドが開けたところにあって良かったと熟々思った。
「クロバット!あくのはどう連続、佳境だよ!」
「凄まじい威力だな、だが此処で負けては俺を慕ってくれる皆に顔向け出来ん!やるぞリザードン、竜巻もろともクロバットに向かってげんしのちからだ!」
「リザードンが近付いてる!気を付けて!三時の方向ににエアカッター!!」
竜巻を中心に互いの技がぶつかり合う、激しい衝撃音が鳴り響きその都度フィールドに黒煙が広がってしまう。煙から抜け出した両者は牽制しながら攻撃を繰り出していく。
ああ、終わってしまう。
全身の血が滾って燃えてしまいそうなほどに熱い。全神経を尖らせて、クロバットと同じ世界に立っている。
あなたはどう思っていますか、このバトル、楽しいですか。
私が楽しいだけで、あなたを心の底から楽しませることはできないかもしれない。周りの声に答えられるような、声を受け止められるような出来ではないのかもしれない。
それでも、これが今の私たちの全力で、私とクロバットの絆だと思うから。
「リザードンかえんほうしゃ!」
「負けるなクロバット!!クロスポイズンで打ち消せ!」
「げんしのちから!!」
「みきりッ!!」
リザードンの熱を受けて、弱まった竜巻は再び渦を巻き上げる。砂塵をまとった風に空気の刃を幾つも飛ばすことで、おしだされた高速の刃にはまるで礫のように相互へ襲いかかり体力を削っていく。その中で温存していた“みきり”で、一気に高めた感覚を頼りに攻撃を躱していくクロバット、お互い体力は残り僅か。決めるならここだ。
「突っ込めリザードン、かえんほうしゃだっ!!」
「迎え撃つ、あくのはどう!!」
旋風を挟んでそれぞれの技が竜巻に集約する。打ち消し合い、竜巻の均衡が崩れる中零れた互いの攻撃がリザードン、クロバットに命中した。
旋風が消え去ると共に発生した煙から地面へ落下する二匹の姿、地面に叩きつけられ土煙が立ち上り咄嗟に顔を腕で覆う。その晴れた先で立ち続けていたのは……。
「ホップ!イズはシンオウのチャンピオンと戦ったことがあるらしいぜ、よく見とけよ!」
「アニキそれマジ!すっげーなイズ!後で俺にも色々教えてくれ!楽しいバトル期待してるぞ!」
うん、と言った手前やるほかないけれど、腰にかけたモンスターボールにいる相棒はどう思っているのだろう。戦闘に出たいだろうか、なにより、こんな私がトレーナーであって良いのだろうか、満足なのだろうか。そう問いかけたくて、怖くてできずにいる。
互いに宙へ投げたボールが開き、赤い光に包まれてそれぞれの相棒が姿を見せる。
ダンデさんの前に立ち塞がるようにして此方を眼光鋭く睨みつけ、命のエネルギーでもある尻尾の炎を高く昇らせると大きく咆哮を上げた。
空気を震わせるような威勢を前に、対する私の前で浮遊する影は、背中越しでも分かるくらいあくどい笑みを浮かべ好戦的に睨み返していることだろう。こうなると、クロバットは私の声しか通らなくなる。
私は背を向けるクロバットに声をかける、直ぐ振り向いてくれた彼は良い緊張感を漂わしていた。クロバットの気持ちを無下にするわけにもいかない。
「……クロバット、相手はチャンピオン。
リザードンが相手だし、攻めてこう」
了承しこくりと頷いてくれたクロバットはリザードンに向き直り、合図を待つ。
皆、笑ってくれる。私がなんと言おうと、その本意を理解して受け容れてくれる。
「二人とも準備は大丈夫か?」
「いつでもいいぜ!」
「オーケー」
「それじゃあ行くぞ、バトル、スタート!!」
ホップの振り下ろした合図と共にリザードンが羽を大きく広げた、力のあるリザードンは地面を走って距離を詰めるという闘い方は殆どない。しまった体をも持ち上げる強靱な両羽を羽ばたかせることで空中戦をものとし、地上でもスピードにのったパワーある戦いを見せつける。
旅のパートナーとして最初に選ばれる3匹のポケモンの1匹、これまで何度とリザードンを連れるトレーナーに出逢い戦って、みてきた。
「クロバット」
せっかちな性格がバトルの場では大いに生きる、目に追えない速さで一気に距離を詰めたクロバットは瞠目するリザードンを前に高らかに鳴くと、羽の先からボコリと毒素の強い泡が噴いた。
「クロスポイズン」
毒の刃はリザードンを切り裂き、ダメージはあたえたけれど流石はチャンピオンの相棒、怯むことなく狙いを外さずにいて、内にためた炎で焼き尽くそうとする。
「リザードン、火炎放射だ!」
「みきり」
轟々と激しく燃え上がる炎は一直線に攻撃直後のクロバットに襲いかかったが、敵の攻撃の軌道を読んだクロバットは射出された火炎を見極め避け続けた。それを目に留めたダンデさんは口元に弧を描くと生き生きとした風に声を張る。
「イズイズ!君のクロバットはやはり速いな!初見で俺のリザードンの攻撃を食らわない奴はそういないぜ!」
「お褒めにあずかり光栄です!」
「攻守の切り替えは速く先手をとられた。まずはあのクロバットのスピードを封じないとな……頼むぜ相棒!」
ダンデの声に大きく返事したリザードンは、火炎の渦を放出しながら一気に距離を詰めてくる。熱が空気を伝い辺りはどんどん温度が高まっていく。
「クロバット、炎に向かってエアカッター!」
近接戦は此方が不利、早めに攻撃をいなし距離を取ろうと思った私の指示に従い、クロバットが高速で羽ばたき生んだいくつもの風の鎌が火炎放射とぶつかり合い相殺、激しい黒煙がフィールドに発生する。煙を払うか、そう逡巡した一瞬迫る気配に空気が震えた。
「…まずい、クロバット下がって!」
「リザードン、げんしのちからだ!」
黒い霧から覗く鋭い眼光に気付いたときには一手遅く、原始の力を呼び覚ましたリザードンの周囲には無数の岩が浮かびあがっており、クロバット目掛け一気に砲撃する。
クロバットは逃げ切ろうとするも、黒煙が晴れきれておらず視界の不良に合わせ手の内は相手の方が勝ったことで徐々に退路を塞がれもろに攻撃を食らってしまう。
飛行タイプのクロバットに岩タイプの技は有利。
敵の視界を奪い攻撃に転じる。その機転は流石チャンピオンの実力だと考えざるをえない。
「クロバット」
かろうじて耐えたパートナーは地面にぶつかることを避け空中で体勢を立て直す。私の呼びかけにも大丈夫だというように返事をしたため、この戦いはもう暫く続きそうだ。あんな楽しそうに笑ってるクロバットを見るのも久しぶりだったから。
「敵を錯乱するよ、エアカッター!」
「怯まないで行くぞ!エアスラッシュ!」
「背後に回り込んでクロスポイズン!」
「そこを待っていたぜ、火炎放射だ!」
隙を狙いすぎてさっきと同じパターンになった。流石に同じ手は食わないダンデさんは接近するクロバットを火炎放射で落とすようリザードンに指示を出す。ぐっと体に力が籠るも私はすぐクロバットが避けるためのルートを探す。
「地表際に下がって!」
「追い詰めろ!」
「後ろ迫ってるよ!迂回してエアカッター!」
「エネルギー満タンだ!ソーラービーム!」
「強烈ね……みきりで回避!!」
互いに譲らない白熱し続けるバトル。一瞬の油断が命取りになる今、私の耳に届くのはフィールド内のものだけ。風や空気の揺れる音、大地の振動しないを感じ取り視覚の情報を補完してクロバットの進路退路を伝えていく。
しかし、隙をあたえずあたりの強いリザードンだ、攻撃を与えても中々ダメージが蓄積しているように見えず、一撃一撃がおもい。堂々と立ち続けるその様はもはや貫禄があった。だけど、パワーで負けるなら此方は地の利を生かす。
「クロバット接近して」
「くるぞリザードン、火炎放射!」
「きた…!地表すれすれを飛んでかわせ!」
ダンデさんは必ず何処かで炎技を使ってる。チャンピオンとしてのダンデさんのバトルは知らないけれど、あの苛烈な炎の攻撃は辺りを呑みつくさんばかりの威力で自信が感じ取れた。
きっと、彼にとってもリザードンにとっても大切な技なんだろう。
だから、他のタイプの技が出たら攻撃で相殺することもあったけど後半は攻撃を浴びないよう避けることに徹底したクロバットの動きには流石に気付いているようで、目つきが鋭くなった彼を見て背筋にぞくりと冷たいものが這ったが此処で怖気づくようじゃ、私は何も変われない、彼へ私達の実力を見せるためにも、バトルで答えるためにも。備は整ったよ。
「クロバット!準備オーケーよ!天に向かって風を巻き上げて!」
「なに…?!」
私の意図を理解してくれたクロバットは地表すれすれで器用に仰向けの体勢を取り4つの羽を力強く羽ばたかせる。
私達の行動に備えたダンデさんはリザードンにいったん追うのをやめるよう告げる。
「リザードン、今のうちにエネルギーを充填だ」
青天の霹靂から十日あまり、今日はポケモンバトル日和で太陽は雲にかかることなく地上を見下げている。こういう日は炎技の威力も上がるしチャージ技のスピードも速める。ダンデさんにとっては良いコンディションであるだろう。
クロバットは私を信じ指示に答えてくれている、私もそれに答えたい。答えなければならない。
「ダンデさんならどっちかなと思ったんですけど、突っ込んでこなくて良かったです」
「ほう?どんな考えがあるのか知らないがこれで決めるぜ、ソーラービーム発射ッ!!!」
合図に合わせて打ち出された高出力のエネルギーがクロバットに差し迫る。
「エアカッター!!」
身を翻して瞬時にソーラービームに向けて空気の刃を飛ばしていくが技を全て防ぎきれずクロバットはくらってしまい衝撃で爆風が吹き荒れた。
視界を邪魔する砂塵が目に入ろうと私はその瞬間を見逃さないため目を凝らす。
やると言ったからには勝つ。体を張ってポケモン達はバトルしてくれる。私は見てるだけ、何も出来ない口だけの存在。
だから、皆が勝てるように、その力を最大限に引き出して場を支配する。
「くるよ。クロバット!やると言ったからには勝つんだからね!あくのはどう!」
「まだ立てるのか!?リザードンよけるんだ!」
全身に傷を負いながらもクロバットは全身から悪意のオーラをリザードンの方へ狙い飛ばす。リザードンは黒く染まった波動は避けてみせたが、火炎放射をわざと地面近くで逃げ続け熱せられた地表、タイミングを見計らい巻き上げた風。
「リザードン!」
クロバットは追撃していないにも関わらず、リザードンはダメージを負って膝をつく。
「イズ……ずっと君の手が読めなかったがまさかこれを作るために?」
「リザードンのパワーは侮れませんから、その力利用できないからと思いまして。
あ、ダンデさん、少し下がっていた方がいいですよ。ポケモン達より弱い人は」
耳元を空が斬ったかと思えば、左頬に走る熱とピリッとした痛み。
右手で拭ってみると言った傍から飛んできたらしい。
「簡単にきれますから」
地表が熱せられることで上昇気流が巻き起こることで激しく渦を巻く突風が生まれる。私達がバトルを繰り広げるフィールド上にはリザードンの放出した熱を一定の地面に集約させ、クロバットが起こした風に乗ってできたつむじ風がクロバットとリザードンを隔てるように発生していた。
別称鎌鼬。シンオウにも根付いた一つの伝承、歩いていただけなのにいつの間にか服や皮膚がパックリと避けており、しかし痛みは感じなかったという。その現象の正体は風ポケモンの仕業と噂されることもあったが科学的根拠から自然現象だと指摘することもあったとか。はたまた別の存在が引き起こしたのかはさておき…。
「ホップー離れててねー危ないからー!」
「おう、わかったぞー!ありがとなー!」
ホップにも離れているよう告げれば声は通ってたようで、焦った様子ながらもちゃんと物影まで避難してくれた。
そういえば此処人の敷地だったなあ、やってしまった。
「ハ、ハハ…フハハ!スゴいなあ!まさかリザードンの技を逆手にとって」
ダンデさんは突然笑いを零し、帽子を被り直すと目の前に巻き上がる渦を睨めつけた。
「旋風を起こすとはね!」
1対1と言えども立派な試合、勝ちにこだわった私は旋風を人為的に引き起こすと、あくのはどうの技を利用し空気の通り道をリザードンの方に作った、旋風から発生した真空は出来上がった空気の流れを進むと見えない刃としてリザードンに降り注ぐ。
だけどこうして自然現象を利用すると、人間の思い通りにはならないこともあるわけで当然例外も発生する。あらぬ方向に向かっていった真空の刃は一定の距離ないであればその鋭利さは依然残るからその威力のまま辺りに襲いかかる。元々やろうとは思っていなかったから何の準備もしていないけれど、フィールドが開けたところにあって良かったと熟々思った。
「クロバット!あくのはどう連続、佳境だよ!」
「凄まじい威力だな、だが此処で負けては俺を慕ってくれる皆に顔向け出来ん!やるぞリザードン、竜巻もろともクロバットに向かってげんしのちからだ!」
「リザードンが近付いてる!気を付けて!三時の方向ににエアカッター!!」
竜巻を中心に互いの技がぶつかり合う、激しい衝撃音が鳴り響きその都度フィールドに黒煙が広がってしまう。煙から抜け出した両者は牽制しながら攻撃を繰り出していく。
ああ、終わってしまう。
全身の血が滾って燃えてしまいそうなほどに熱い。全神経を尖らせて、クロバットと同じ世界に立っている。
あなたはどう思っていますか、このバトル、楽しいですか。
私が楽しいだけで、あなたを心の底から楽しませることはできないかもしれない。周りの声に答えられるような、声を受け止められるような出来ではないのかもしれない。
それでも、これが今の私たちの全力で、私とクロバットの絆だと思うから。
「リザードンかえんほうしゃ!」
「負けるなクロバット!!クロスポイズンで打ち消せ!」
「げんしのちから!!」
「みきりッ!!」
リザードンの熱を受けて、弱まった竜巻は再び渦を巻き上げる。砂塵をまとった風に空気の刃を幾つも飛ばすことで、おしだされた高速の刃にはまるで礫のように相互へ襲いかかり体力を削っていく。その中で温存していた“みきり”で、一気に高めた感覚を頼りに攻撃を躱していくクロバット、お互い体力は残り僅か。決めるならここだ。
「突っ込めリザードン、かえんほうしゃだっ!!」
「迎え撃つ、あくのはどう!!」
旋風を挟んでそれぞれの技が竜巻に集約する。打ち消し合い、竜巻の均衡が崩れる中零れた互いの攻撃がリザードン、クロバットに命中した。
旋風が消え去ると共に発生した煙から地面へ落下する二匹の姿、地面に叩きつけられ土煙が立ち上り咄嗟に顔を腕で覆う。その晴れた先で立ち続けていたのは……。
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