新監督を探せ!
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「どうしたの、塀吾郎?」
「壁山!」
「……俺たち、負けっスよ」
低くか細い声で言う壁山に円堂と瑞貴は一瞬驚くが、すぐに気を取り直す。
「何言ってんだ!」
「弱気になってどうすんの!」
「どんなに練習したって、監督がいないんじゃ意味ないっスよ……」
顔を上げた壁山の目尻には涙が溜まっていた。他の部員もそれに同意するかのように顔をうつむける者もいる。これでは初めの頃と同じだ。これでは気合いが入らない。
円堂は壁山の肩に手を置き、いつもの笑顔で笑いかける。
「あきらめるなって! 監督になってくれる人はきっといるから!」
「ちょ、それ逆効果――」
「ホントっスかぁ?」
瑞貴が止めるも遅く、壁山は疑いの眼差しで円堂をジーッと見つめる。
「ホントにいるんですかぁ? 絶対そうだって――言い切れますかぁ!?」
壁山はすがるように円堂の体をつかむ、それを円堂は離れようと逃げるが壁山はなかなか離さない。
「今日はっ、疑り深いなっ、お前!」
「落ち着いて塀吾郎ー!」
壁山から離れようとする円堂とそれを止めるため追いかける瑞貴の様子に、今まで張りつめていた空気が嘘のように溶けていく。周りのみんなの様子を瑞貴は視線の端で捕らえ、自然と笑顔になる。
すると土門は誰かの視線を感じたのか、キョロキョロと周りを見渡し、橋にいる鬼道有人に気づいた。
「鬼道さん……」
「「「「「!」」」」」
土門の声で全員鬼道に気づき、あまりよくない空気が流れる。
「偵察に来たんだな」
「いやいや、不戦敗寸前の僕たちを笑いに来たかもしれませんよ」
「どっちにしろやな感じだぜ!」
半田と目金と染岡がそれぞれ言いたい放題言う。瑞貴と円堂は顔を見合わせて頷き、鬼道の元へ走った。
鬼道も二人が来たことに気づき、土手の上の道路にお互い向かい合う。
「冬海の件、謝りたかった。それに、土門のことも……」
「あっ、そのことはもういいんだ」
「もう過ぎたことですしね」
あっけからんという円堂と瑞貴に鬼道は驚いてうつむいていた頭を上げる。
「土門もさ、あいつ、サッカー上手いよな」
「あんなにいい選手を寄越してくれて感謝です」
円堂と瑞貴は不安そうな表情でこちらを見る土門に目を落とす。もう彼は帝国学園のスパイではなく、本当の雷門中サッカー部の一員だ。
「……うらやましいよ。お前たちが」
「「えっ?」」
「それに比べて俺たちは……帝国が全国の頂点に立ち続けていられたのは総帥の策略があったからだ。俺たちの実力じゃない」
「「そんなことないよ/ありません!」」
瑞貴と円堂は否定をするが、鬼道の顔は険しくなる一方だ。
「常に頂点に立つために、俺は人一倍努力してきたつもりだ。なのに、今までやってきたことは……全部偽物の勝利だった……!」
鬼道は拳をギュッと強く握り、悔しそうに見つめる。
「ンなことないって!」
「ありえません!」
「お前たちに何がわかる!」
「「わかるよ!」」
「!」
怒鳴り返した二人に鬼道は驚く。瑞貴でさえ、敬語がなくなったほどだ。
「俺、お前からいっぱいシュートくらってるんだぞ!?」
「私もデスゾーンをくらいました。スゴい強力なシュートです。帝国の強さは――」
瑞貴と円堂は手の平を自分の胸に当てる。
「「私/俺たちの体が知ってる/ぜ!」」
ニカッと笑う二人に鬼道はゴーグル越しの目を見開き、フッと笑う。
「お前たちとの試合、楽しめそうだな」
「「ああ/はい!」」
「俺たちは前とは違うってこと見せてやる!」
「今度はこちらがコテンパンにしてやります!」
「だが決勝に出られるのか?」
そう、それが一番の問題だ。悩まずにはいられないところなのに、円堂は――。
「新監督ならなんとかなるさ!」
次世代の口癖を言ったので瑞貴は小さく笑う。
「そういうことです」
「っ!」
その行動に気づいた鬼道は瑞貴を見ると、瑞貴そう言ってニコッと笑った。その笑みに鬼道は頬を朱に染める。
「なあ、なんなら一緒に練習やらない?」
「あっ、それいい考え!」
「俺は敵だぞ?」
「そんなの関係ないよ」
「そうです。今日は仲間ってことでいいじゃありませんか」
答えない鬼道に不思議そうな顔をして円堂はコメカミをかくとニカッと笑う。瑞貴もそれに伴って満面の笑みを向ける。
鬼道は驚きつつも微笑を浮かべる。嫌味とかではなく、心からの。
「その内な」
鬼道は踵を返そうとすると、思い出したような顔をして足を止めた。瑞貴に近寄り、一枚の白い封筒を手渡す。
「これをお前に」
「えっ?」
聞き返そうとすると、鬼道は今度こそ去って行った。円堂と瑞貴は顔を見合わせ、笑って腕を上げる。
「「きっとだぞー/ですよー! 約束だ/ですからー!」」
鬼道は振り向きもせず何も言わずに手を振ってくれた。……それだけで充分だ。
瑞貴と円堂はグラウンドへ戻り、去って行く鬼道が乗った車を、橋の影で鬼瓦が、そしてグラウンドで春奈が見ていた。……春奈にいたっては悲しそうに、複雑そうに。
「あいつ、なんだって?」
「今度一緒に練習する約束してきた」
「ハァ!?」
円堂の返事に染岡を始めとする雷門中サッカー部は驚いていた。当然だろう。敵チームと一緒に、ましてやスパイを送り込んだ帝国と練習するなど以ての外(モッテノホカ)だ。
「壁山!」
「……俺たち、負けっスよ」
低くか細い声で言う壁山に円堂と瑞貴は一瞬驚くが、すぐに気を取り直す。
「何言ってんだ!」
「弱気になってどうすんの!」
「どんなに練習したって、監督がいないんじゃ意味ないっスよ……」
顔を上げた壁山の目尻には涙が溜まっていた。他の部員もそれに同意するかのように顔をうつむける者もいる。これでは初めの頃と同じだ。これでは気合いが入らない。
円堂は壁山の肩に手を置き、いつもの笑顔で笑いかける。
「あきらめるなって! 監督になってくれる人はきっといるから!」
「ちょ、それ逆効果――」
「ホントっスかぁ?」
瑞貴が止めるも遅く、壁山は疑いの眼差しで円堂をジーッと見つめる。
「ホントにいるんですかぁ? 絶対そうだって――言い切れますかぁ!?」
壁山はすがるように円堂の体をつかむ、それを円堂は離れようと逃げるが壁山はなかなか離さない。
「今日はっ、疑り深いなっ、お前!」
「落ち着いて塀吾郎ー!」
壁山から離れようとする円堂とそれを止めるため追いかける瑞貴の様子に、今まで張りつめていた空気が嘘のように溶けていく。周りのみんなの様子を瑞貴は視線の端で捕らえ、自然と笑顔になる。
すると土門は誰かの視線を感じたのか、キョロキョロと周りを見渡し、橋にいる鬼道有人に気づいた。
「鬼道さん……」
「「「「「!」」」」」
土門の声で全員鬼道に気づき、あまりよくない空気が流れる。
「偵察に来たんだな」
「いやいや、不戦敗寸前の僕たちを笑いに来たかもしれませんよ」
「どっちにしろやな感じだぜ!」
半田と目金と染岡がそれぞれ言いたい放題言う。瑞貴と円堂は顔を見合わせて頷き、鬼道の元へ走った。
鬼道も二人が来たことに気づき、土手の上の道路にお互い向かい合う。
「冬海の件、謝りたかった。それに、土門のことも……」
「あっ、そのことはもういいんだ」
「もう過ぎたことですしね」
あっけからんという円堂と瑞貴に鬼道は驚いてうつむいていた頭を上げる。
「土門もさ、あいつ、サッカー上手いよな」
「あんなにいい選手を寄越してくれて感謝です」
円堂と瑞貴は不安そうな表情でこちらを見る土門に目を落とす。もう彼は帝国学園のスパイではなく、本当の雷門中サッカー部の一員だ。
「……うらやましいよ。お前たちが」
「「えっ?」」
「それに比べて俺たちは……帝国が全国の頂点に立ち続けていられたのは総帥の策略があったからだ。俺たちの実力じゃない」
「「そんなことないよ/ありません!」」
瑞貴と円堂は否定をするが、鬼道の顔は険しくなる一方だ。
「常に頂点に立つために、俺は人一倍努力してきたつもりだ。なのに、今までやってきたことは……全部偽物の勝利だった……!」
鬼道は拳をギュッと強く握り、悔しそうに見つめる。
「ンなことないって!」
「ありえません!」
「お前たちに何がわかる!」
「「わかるよ!」」
「!」
怒鳴り返した二人に鬼道は驚く。瑞貴でさえ、敬語がなくなったほどだ。
「俺、お前からいっぱいシュートくらってるんだぞ!?」
「私もデスゾーンをくらいました。スゴい強力なシュートです。帝国の強さは――」
瑞貴と円堂は手の平を自分の胸に当てる。
「「私/俺たちの体が知ってる/ぜ!」」
ニカッと笑う二人に鬼道はゴーグル越しの目を見開き、フッと笑う。
「お前たちとの試合、楽しめそうだな」
「「ああ/はい!」」
「俺たちは前とは違うってこと見せてやる!」
「今度はこちらがコテンパンにしてやります!」
「だが決勝に出られるのか?」
そう、それが一番の問題だ。悩まずにはいられないところなのに、円堂は――。
「新監督ならなんとかなるさ!」
次世代の口癖を言ったので瑞貴は小さく笑う。
「そういうことです」
「っ!」
その行動に気づいた鬼道は瑞貴を見ると、瑞貴そう言ってニコッと笑った。その笑みに鬼道は頬を朱に染める。
「なあ、なんなら一緒に練習やらない?」
「あっ、それいい考え!」
「俺は敵だぞ?」
「そんなの関係ないよ」
「そうです。今日は仲間ってことでいいじゃありませんか」
答えない鬼道に不思議そうな顔をして円堂はコメカミをかくとニカッと笑う。瑞貴もそれに伴って満面の笑みを向ける。
鬼道は驚きつつも微笑を浮かべる。嫌味とかではなく、心からの。
「その内な」
鬼道は踵を返そうとすると、思い出したような顔をして足を止めた。瑞貴に近寄り、一枚の白い封筒を手渡す。
「これをお前に」
「えっ?」
聞き返そうとすると、鬼道は今度こそ去って行った。円堂と瑞貴は顔を見合わせ、笑って腕を上げる。
「「きっとだぞー/ですよー! 約束だ/ですからー!」」
鬼道は振り向きもせず何も言わずに手を振ってくれた。……それだけで充分だ。
瑞貴と円堂はグラウンドへ戻り、去って行く鬼道が乗った車を、橋の影で鬼瓦が、そしてグラウンドで春奈が見ていた。……春奈にいたっては悲しそうに、複雑そうに。
「あいつ、なんだって?」
「今度一緒に練習する約束してきた」
「ハァ!?」
円堂の返事に染岡を始めとする雷門中サッカー部は驚いていた。当然だろう。敵チームと一緒に、ましてやスパイを送り込んだ帝国と練習するなど以ての外(モッテノホカ)だ。