新監督を探せ!
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〈そういうわけで今すぐ日本には帰れないんだ。ごめんね〉
「いや、俺たちのほうこそ突然ですみません」
本人が目の前にいるわけでもないのに頭を下げる円堂。
〈気にしないで。じゃ、フットボールフロンティアがんばってね!〉
プツッと電話が切れると円堂は瑞貴に携帯を返す。そして再び部室内では、安堵(瑞貴が社長令嬢ではない)と絶望(シンに監督を断られた)が入り交じった複雑な空気が流れていた。
「円堂」
「ん?」
その空気を破ったのは豪炎寺だった。
「雷雷軒のオヤジは、お前のおじいさんを知っていた。ということは……」
「そうか!」
―――さっそく雷門サッカー部は雷雷軒に行き、店主・響木正剛に頼みに来た。
「「「「「監督になってください! お願いします!!」」」」」
「仕事の邪魔だ」
「すいません……」
作業をしながらそう返す響木。現在サッカー部以外店の中にいるのは刑事・鬼瓦源五郎だけだ。彼もユニフォームを着たまま来店してきたサッカー部に驚きつつもあったが、瑞貴の表情を見て訳ありだと判断した。
円堂は一度引くが、すぐに元に戻る。
「あの! 俺のじいちゃん、知ってるんですよね? 秘伝書のことも知ってた。だったら、サッカーも詳しいんじゃないですか?」
響木はそれに答えず刻んだ葱をボウルに移す。
「あるいは、円堂のおじいさんとサッカーをやっていたんじゃないですか?」
「っ……」
土門の推測に、響木は初めて動揺して髭で覆われた口許が動く。もちろんそれに一番食いついてきたのは円堂だ。
「それホントか!?」
「カンだよ。秘伝書のことを知ってたんだ。伝説のイナズマイレブンだったんじゃないのかなって」
円堂はキラキラした目で響木を見るが、響木のサングラス越しに見る目は厳しいものだった。
「あのとき俺の言ったことを忘れたのか?」
「うぇ?」
「イナズマイレブンは災いをもたらすと言ったろう。恐ろしいことになるだけだ」
重い声で響木が言うと、雷門中サッカー部の数人は怖がってお互い抱き合っている。中には一方的な者もいるが。
(というか、もう災いだらけだと思うけど……)
帝国学園との練習試合を始め、さまざまなことがあったことを思い出し、瑞貴は苦笑しながら遠い目をする。しかし円堂は折れずに「でも!」と言う。
「俺たちここまで来たのに! 全国にいけるんだよ!」
また響木の口許が動いた。それから円堂と響木の見つめ合い(という名の睨み合い)が続く。
「……あのな」
やっと言葉を発した響木に、円堂は了承をもらえると思って顔を輝かす。しかし――。
「注文しないならとっとと出てけ」
そう言って注文表を見せる響木に瑞貴はズッコケそうになった。
(こんなときまで商人魂(アキンドダマシイ)を見せなくてもいいのに……)
「だったら注文すりゃいいんだろ!? ラーメン一丁!」
「はいよ。ラーメンね」
ヤケになったように席に座る円堂と答える響木。しかし円堂は何かを思い出したような顔をし、次いで冷や汗をかく。
今自分たちが着ているのはユニフォーム。財布は当然部室。円堂は助けを求めるように瑞貴と秋を見る。瑞貴は首を振り、秋は――。
「大丈夫。ちゃんと部室鍵かけてきたから」
安心して、とでもいうような秋の笑顔に、円堂は「そういう問題じゃなくて……」と言ってカラクリ人形のように響木に向き直る。常識人の瑞貴、風丸と豪炎寺と土門も呆れたような顔をした。
「注文…取り消し……」
申し訳なさそうに言うが、それが響木の怒りを買った。
「出てけ――っ!!」
円堂と染岡と半田から、栗松鉄平と目金と宍戸佐吉と松野空介。続いて壁山と少林寺歩と影野と土門と秋と春奈の順で店の外に投げ飛ばして山積みにし、風丸と豪炎寺は追い出される前に自ら店から出た。
ちなみに瑞貴は鬼瓦のそばに避難したのでまだ店の中にいる。恐る恐る顔を出すと、そこには鬼のような形相の響木が仁王立ちしていた。
「瑞貴…………」
「え、えーと……」
「お前も注文しないなら出て行け」
「すいません!」
手を合わせて謝った瑞貴も一目散に店の外に出て行き、山積みになっている仲間の救出にかかった。……響木が瑞貴の手を見て眉を寄せていたことには気づかずに。
(あいつ……!)
響木は厨房に戻ろうとするが……。
「イナズマイレブンか……。いいチームだったよなぁ……」
鬼瓦は思い出すように呟くが、響木は何も言わない。
「あのキャプテンの坊やなぁ――ゴッドハンドを使えるぞ」
「!」
すると響木の目が変わり、初めて振り向いた。
☆☆☆☆☆
あのあと河川敷に行ってグラウンドで練習していると半田と風丸がボールを取り合っている。勝ったのは風丸だった。
「壁山!」
風丸が壁山にパスを送るが、壁山はグラウンドに座り込んでいて、ボールはそのまま当たりボヨンという音をして跳ね返す。
「コラー! 壁山ぁ!」
「どうしたんだ! シャキッとしろよ!」
円堂と半田が叱るが壁山はピクリともしない。瑞貴と円堂は壁山のそばに寄る。
「いや、俺たちのほうこそ突然ですみません」
本人が目の前にいるわけでもないのに頭を下げる円堂。
〈気にしないで。じゃ、フットボールフロンティアがんばってね!〉
プツッと電話が切れると円堂は瑞貴に携帯を返す。そして再び部室内では、安堵(瑞貴が社長令嬢ではない)と絶望(シンに監督を断られた)が入り交じった複雑な空気が流れていた。
「円堂」
「ん?」
その空気を破ったのは豪炎寺だった。
「雷雷軒のオヤジは、お前のおじいさんを知っていた。ということは……」
「そうか!」
―――さっそく雷門サッカー部は雷雷軒に行き、店主・響木正剛に頼みに来た。
「「「「「監督になってください! お願いします!!」」」」」
「仕事の邪魔だ」
「すいません……」
作業をしながらそう返す響木。現在サッカー部以外店の中にいるのは刑事・鬼瓦源五郎だけだ。彼もユニフォームを着たまま来店してきたサッカー部に驚きつつもあったが、瑞貴の表情を見て訳ありだと判断した。
円堂は一度引くが、すぐに元に戻る。
「あの! 俺のじいちゃん、知ってるんですよね? 秘伝書のことも知ってた。だったら、サッカーも詳しいんじゃないですか?」
響木はそれに答えず刻んだ葱をボウルに移す。
「あるいは、円堂のおじいさんとサッカーをやっていたんじゃないですか?」
「っ……」
土門の推測に、響木は初めて動揺して髭で覆われた口許が動く。もちろんそれに一番食いついてきたのは円堂だ。
「それホントか!?」
「カンだよ。秘伝書のことを知ってたんだ。伝説のイナズマイレブンだったんじゃないのかなって」
円堂はキラキラした目で響木を見るが、響木のサングラス越しに見る目は厳しいものだった。
「あのとき俺の言ったことを忘れたのか?」
「うぇ?」
「イナズマイレブンは災いをもたらすと言ったろう。恐ろしいことになるだけだ」
重い声で響木が言うと、雷門中サッカー部の数人は怖がってお互い抱き合っている。中には一方的な者もいるが。
(というか、もう災いだらけだと思うけど……)
帝国学園との練習試合を始め、さまざまなことがあったことを思い出し、瑞貴は苦笑しながら遠い目をする。しかし円堂は折れずに「でも!」と言う。
「俺たちここまで来たのに! 全国にいけるんだよ!」
また響木の口許が動いた。それから円堂と響木の見つめ合い(という名の睨み合い)が続く。
「……あのな」
やっと言葉を発した響木に、円堂は了承をもらえると思って顔を輝かす。しかし――。
「注文しないならとっとと出てけ」
そう言って注文表を見せる響木に瑞貴はズッコケそうになった。
(こんなときまで商人魂(アキンドダマシイ)を見せなくてもいいのに……)
「だったら注文すりゃいいんだろ!? ラーメン一丁!」
「はいよ。ラーメンね」
ヤケになったように席に座る円堂と答える響木。しかし円堂は何かを思い出したような顔をし、次いで冷や汗をかく。
今自分たちが着ているのはユニフォーム。財布は当然部室。円堂は助けを求めるように瑞貴と秋を見る。瑞貴は首を振り、秋は――。
「大丈夫。ちゃんと部室鍵かけてきたから」
安心して、とでもいうような秋の笑顔に、円堂は「そういう問題じゃなくて……」と言ってカラクリ人形のように響木に向き直る。常識人の瑞貴、風丸と豪炎寺と土門も呆れたような顔をした。
「注文…取り消し……」
申し訳なさそうに言うが、それが響木の怒りを買った。
「出てけ――っ!!」
円堂と染岡と半田から、栗松鉄平と目金と宍戸佐吉と松野空介。続いて壁山と少林寺歩と影野と土門と秋と春奈の順で店の外に投げ飛ばして山積みにし、風丸と豪炎寺は追い出される前に自ら店から出た。
ちなみに瑞貴は鬼瓦のそばに避難したのでまだ店の中にいる。恐る恐る顔を出すと、そこには鬼のような形相の響木が仁王立ちしていた。
「瑞貴…………」
「え、えーと……」
「お前も注文しないなら出て行け」
「すいません!」
手を合わせて謝った瑞貴も一目散に店の外に出て行き、山積みになっている仲間の救出にかかった。……響木が瑞貴の手を見て眉を寄せていたことには気づかずに。
(あいつ……!)
響木は厨房に戻ろうとするが……。
「イナズマイレブンか……。いいチームだったよなぁ……」
鬼瓦は思い出すように呟くが、響木は何も言わない。
「あのキャプテンの坊やなぁ――ゴッドハンドを使えるぞ」
「!」
すると響木の目が変わり、初めて振り向いた。
☆☆☆☆☆
あのあと河川敷に行ってグラウンドで練習していると半田と風丸がボールを取り合っている。勝ったのは風丸だった。
「壁山!」
風丸が壁山にパスを送るが、壁山はグラウンドに座り込んでいて、ボールはそのまま当たりボヨンという音をして跳ね返す。
「コラー! 壁山ぁ!」
「どうしたんだ! シャキッとしろよ!」
円堂と半田が叱るが壁山はピクリともしない。瑞貴と円堂は壁山のそばに寄る。