帝国のスパイ!
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「落ち着け。こいつに殴る価値なんて――」
「……せ」
「えっ?」
「離せ!」
今まで見たことのない瑞貴の表情に豪炎寺は思わず手の力をゆるめ、その隙に瑞貴は豪炎寺の手から離れる。
「おい瑞貴!」
「安心しろ。もう殴ったりしねぇよ。殴り足りねぇがな」
次いで止めようとする染岡を瑞貴は制し冬海の胸倉をつかむ。その恐ろしい表情に、冬海は「ヒィッ!」と声を上げるほど怯えていたが、瑞貴は構わずに冬海を睨む。
「お前、飛鳥の気持ちをわかってんのか? 飛鳥はこうなることも予想して夏未ちゃんに手紙を送ったんだ!」
その言葉に円堂たちは驚いて夏未を見ると、夏未は頷いて手紙を見せる。
「この字は――土門の字だ!」
「そんな……」
「土門くん……」
告発したのが誰かわかり、円堂や半田や秋や他のメンバーは驚く。
「飛鳥はなぁ、確かに帝国のスパイだったかもしんねぇ。でもな、あいつは帰る場所をなくす覚悟で裏切ったんだよ。――俺たちを守るために」
「「「「「!」」」」」
その言葉に全員の目が見開かれる。瑞貴が一人称を変えたということにも気づかないほどだ。
円堂と秋は土門を追いかけようとするが、チラリと瑞貴を見ると豪炎寺が「ここは任せろ」と言うように顎をクイッと動かし、二人は頷いて走っていった。
「俺がええ加減にしろと言ったのは飛鳥がスパイ云々のことじゃねぇ。お前がバラしたせいで、飛鳥は帝国にも雷門にも帰る場所をなくなった。これがどういう意味がわかるか? 影山さんのためにやった? ふざけんじゃねぇよ。テメェは自分のためにやったんだろうが。自分が無事でいられるように。そして飛鳥のことも道連れにしたんだ!」
瑞貴はグッと冬海をつかむ手を強める。
「だが飛鳥は俺たちの仲間だ。俺が飛鳥の帰る場所になってやる。――絶対に」
瑞貴は冬海から手を離し、冬海は倒れているので自然と見下すようになるがなお睨み続ける。冬海はその隙に殴られた頬を押さえ震えながら立ち上がると、瑞貴は「ああ、そうそう」とフッと笑う。
「このことで雷門中サッカー部を出場できないようにしてみろ。今までの会話を録音したこれを警察に持っていくからな」
瑞貴はズボンのポケットから小型レコーダーを取り出した。
「まあ影山さんの指示だという証拠はないからな。たとえ名を出したって苦しまぎれの言い訳に過ぎねぇだろ。どうする? 捕まるのはお前だけだぜ」
「なっ!?」
瑞貴が不敵に微笑むと冬海は青ざめる。
「さっさと消え失せろ!」
「ヒイイィィイイイ!!」
瑞貴が怒鳴ると、冬海はとうとう情けない悲鳴を上げながら逃げていった。
「……ごめん、みんな。今日、私帰る」
そう言って去る瑞貴を止める者は誰もいなかった。
☆☆☆☆☆
――時は少し遡る。土門は河川敷の芝生に腰をかけ、グラウンドで練習する少年サッカークラブ・稲妻KFCを見ていた。
すると芝生が踏まれた音が聞こえ、土門が振り向くとそこには秋がいた。秋の顔はグラウンドを見て、土門も視線を戻す。
「昔の私たち……あんなだったわよね」
秋は稲妻KFCを見て思い出しながら土門の隣に座る。
……秋と土門がアメリカに留学していた頃、『一之瀬』という少年と一緒に毎日サッカーをしていた。土門と一之瀬はアメリカのサッカークラブに入っていて、アメリカ少年リーグにも優勝していた。毎日が楽しい日々。しかしその幸せは音もなく崩れていく。
ある日、三人でお互いの夢を語りあって『一生サッカーをしよう』と誓い合ったときだった。車に轢かれそうになった仔犬を助けた一之瀬は代わりに事故に遭ってしまった。
「――あれからボールを見るのも嫌だったなぁ……。土門くんは、一之瀬くんとの約束をちゃんと守った。私って、弱いなぁって……。でもさ、こっちに帰ってきて円堂くんと出会ったの。あの子――おかしいんだ」
「?」
突然笑った秋に土門は視線を向ける。秋の顔はなんだか楽しそうだった。
「雨だろうがなんだろうがボール蹴って、いつまでもどこまでも……それも、スッゴく楽しそうに。楽しそうといえば――瑞貴ちゃんも」
「っ!」
瑞貴の名前が出た途端、土門の肩が跳ね上がった。秋は空を見上げていたので気づかない。
「……せ」
「えっ?」
「離せ!」
今まで見たことのない瑞貴の表情に豪炎寺は思わず手の力をゆるめ、その隙に瑞貴は豪炎寺の手から離れる。
「おい瑞貴!」
「安心しろ。もう殴ったりしねぇよ。殴り足りねぇがな」
次いで止めようとする染岡を瑞貴は制し冬海の胸倉をつかむ。その恐ろしい表情に、冬海は「ヒィッ!」と声を上げるほど怯えていたが、瑞貴は構わずに冬海を睨む。
「お前、飛鳥の気持ちをわかってんのか? 飛鳥はこうなることも予想して夏未ちゃんに手紙を送ったんだ!」
その言葉に円堂たちは驚いて夏未を見ると、夏未は頷いて手紙を見せる。
「この字は――土門の字だ!」
「そんな……」
「土門くん……」
告発したのが誰かわかり、円堂や半田や秋や他のメンバーは驚く。
「飛鳥はなぁ、確かに帝国のスパイだったかもしんねぇ。でもな、あいつは帰る場所をなくす覚悟で裏切ったんだよ。――俺たちを守るために」
「「「「「!」」」」」
その言葉に全員の目が見開かれる。瑞貴が一人称を変えたということにも気づかないほどだ。
円堂と秋は土門を追いかけようとするが、チラリと瑞貴を見ると豪炎寺が「ここは任せろ」と言うように顎をクイッと動かし、二人は頷いて走っていった。
「俺がええ加減にしろと言ったのは飛鳥がスパイ云々のことじゃねぇ。お前がバラしたせいで、飛鳥は帝国にも雷門にも帰る場所をなくなった。これがどういう意味がわかるか? 影山さんのためにやった? ふざけんじゃねぇよ。テメェは自分のためにやったんだろうが。自分が無事でいられるように。そして飛鳥のことも道連れにしたんだ!」
瑞貴はグッと冬海をつかむ手を強める。
「だが飛鳥は俺たちの仲間だ。俺が飛鳥の帰る場所になってやる。――絶対に」
瑞貴は冬海から手を離し、冬海は倒れているので自然と見下すようになるがなお睨み続ける。冬海はその隙に殴られた頬を押さえ震えながら立ち上がると、瑞貴は「ああ、そうそう」とフッと笑う。
「このことで雷門中サッカー部を出場できないようにしてみろ。今までの会話を録音したこれを警察に持っていくからな」
瑞貴はズボンのポケットから小型レコーダーを取り出した。
「まあ影山さんの指示だという証拠はないからな。たとえ名を出したって苦しまぎれの言い訳に過ぎねぇだろ。どうする? 捕まるのはお前だけだぜ」
「なっ!?」
瑞貴が不敵に微笑むと冬海は青ざめる。
「さっさと消え失せろ!」
「ヒイイィィイイイ!!」
瑞貴が怒鳴ると、冬海はとうとう情けない悲鳴を上げながら逃げていった。
「……ごめん、みんな。今日、私帰る」
そう言って去る瑞貴を止める者は誰もいなかった。
☆☆☆☆☆
――時は少し遡る。土門は河川敷の芝生に腰をかけ、グラウンドで練習する少年サッカークラブ・稲妻KFCを見ていた。
すると芝生が踏まれた音が聞こえ、土門が振り向くとそこには秋がいた。秋の顔はグラウンドを見て、土門も視線を戻す。
「昔の私たち……あんなだったわよね」
秋は稲妻KFCを見て思い出しながら土門の隣に座る。
……秋と土門がアメリカに留学していた頃、『一之瀬』という少年と一緒に毎日サッカーをしていた。土門と一之瀬はアメリカのサッカークラブに入っていて、アメリカ少年リーグにも優勝していた。毎日が楽しい日々。しかしその幸せは音もなく崩れていく。
ある日、三人でお互いの夢を語りあって『一生サッカーをしよう』と誓い合ったときだった。車に轢かれそうになった仔犬を助けた一之瀬は代わりに事故に遭ってしまった。
「――あれからボールを見るのも嫌だったなぁ……。土門くんは、一之瀬くんとの約束をちゃんと守った。私って、弱いなぁって……。でもさ、こっちに帰ってきて円堂くんと出会ったの。あの子――おかしいんだ」
「?」
突然笑った秋に土門は視線を向ける。秋の顔はなんだか楽しそうだった。
「雨だろうがなんだろうがボール蹴って、いつまでもどこまでも……それも、スッゴく楽しそうに。楽しそうといえば――瑞貴ちゃんも」
「っ!」
瑞貴の名前が出た途端、土門の肩が跳ね上がった。秋は空を見上げていたので気づかない。