サッカーやろうぜ!
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
☆☆☆☆☆
翌朝――。瑞貴は雷門中に登校すると、転校初日ということで理事長室にいた。
「私は理事長代理の雷門夏未。二年生よ。よろしく」
「あっ、はい。井上瑞貴です。こちらこそよろしくお願いします」
ペコリと瑞貴は頭を下げる。なんたって相手は雷門夏未なのだ。別に理事長の娘だからというわけではない。ただ初めて主要キャラと出会えて感激しているだけだ。頭をグルグルとかき混ぜていると夏未がクスッと笑う声が聞こえた。
「そんなに緊張しなくていいわ。そろそろあなたの担任になる先生がいらっしゃるから」
コンコン。
「噂をすればね。どうぞ」
扉からノックが聞こえ、夏未が許可をすると一人の男が入ってきた。
「お嬢様、失礼します」
「あなたの担任になる先生よ。先生、彼女が今日からあなたのクラスに入る転入生です。案内をお願いします」
「はい、お嬢様」
先生が部屋から出ると瑞貴もそれに続いて出て行こうとするが、何かを思い出したかのように振り返った。夏未もその様子に不思議そうな顔をする。
「何かしら?」
「あ、あの、もし、ご迷惑でなかったら友達になってくれませんか?」
「えっ」
その言葉に夏未は目を見開いた。彼女は瑞貴にとって仲良くなりたい子の内一人だったから。だが、夏未はすぐにそっぽを向いてしまう。
「ごめんなさい。変なことを言ってしま――」
「敬語」
「へっ……?」
「と、友達なら敬語は使わないのが常識でしょう?」
一瞬驚いたが、その言葉の意図を察した瑞貴は「うん!」と強く頷いた。
「た、たまになら理事長室にいらっしゃい。転校してきたばかりなんだからいろいろ教えてあげるわ」
よく見ると夏未の顔は赤くなっている。口調は強いが照れているのが丸わかりだ。
「ありがとう!」
「ほら早く行きなさい。先生を待たせてるわ」
「うん。これからよろしくね、夏未ちゃん!」
瑞貴が部屋から出て行くと、誰もいない部屋で夏未はクスッと笑った。
「よろしく、瑞貴」
――夏未と別れたあと瑞貴は教室の廊下で先生に待たされていた。それはいいが、隣にはもう一人転入生がいる。もちろん豪炎寺だ。
彼も今日転入すると知っていたが、まさか同じクラスになるとは思わなかった。豪炎寺も最初に瑞貴を見たときは驚いたように目を見開いていた。
「あ、あの」
「……なんだ」
さり気なく話しかけてみたが、思ったより結構クールだ。彼に話しかけるということはこれから転校生として紹介されるよりガッチガチに緊張する。綾香なら答えられるだけで倒れてしまいそうな気がするが。
「昨日は本当にありがとうございました。私、井上瑞貴といいます。よろしくお願いします」
「っ!」
瑞貴は一つ礼をしてニコッと笑う。豪炎寺は目を見開いたがすぐに顔を反らされた。挨拶失敗かと思いきや、心なしか豪炎寺の耳が赤い。
「……豪炎寺修也だ」
挨拶を返されたのでそれだけでも瑞貴にとっては充分嬉しかった。
「……お前、サッカーやるのか」
豪炎寺からの突然の質問に驚いたがハッキリと頷く。
「私、サッカーが大好きなんです。見るよりプレーをするのが」
女の子らしくないですよね、と瑞貴は頬をかきながら苦笑する。
「いいんじゃないか。……可愛いしな」
「えっ?」
「――それでは転校生を紹介します。入ってきてください」
聞き返そうとしたが先生に呼ばれたので、瑞貴と豪炎寺は教室に入ると……。
「あ――っ!!」
突然の叫び声に瑞貴はビクッと震えた。叫び声をあげた人物はもちろん円堂だ。驚きながら自分たちに向かって指差して次いで嬉しそうに笑う。
秋も驚いているようで目を見開いていた。豪炎寺は平然としているが瑞貴は予想通りの展開に苦笑いする。
「なんだ、知り合いか?」
「いやぁ、その、知り合いってわけじゃないんですけど……」
円堂は前の席で寝ている男子の頭を抑えて苦笑しながら言うとガッツポーズをする。
(じいちゃん、ありがとう!)
「いいから座れ」
「は、はい」
先生に言われ、円堂は苦笑しながら座る。
「今日から我が雷門中に転入となった、井上瑞貴さんだ」
「未熟な点もたくさんありますが、これからよろしくお願いします」
瑞貴は一つ礼をして微笑んだ。やっぱり第一印象は大事だ。しかし返ってきた反応はない。むしろ円堂だけでなく、全員ジーッとこっちを見ている。
(可愛い……!)
(あの笑顔は破壊力抜群!)
クラスの男女全員がそう思っていたことを、内心焦っていた瑞貴は知らない。