一之瀬! 最後のキックオフ‼︎
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「染岡!」
鬼道からパスを受け取った染岡は壁山のディフェンスを抜き、立向居勇気がいるゴールを奪う。
一連の様子を円堂はタオルを首に掛けながら、マネージャーたちがいるベンチへ歩み寄った。
「俺たちがこんなに熱くなってるのを一之瀬が知ったら驚くかな、秋?」
「そうね。それに土門くんも驚くと思うわよ」
「だな! 瑞貴もそう思う――……あれ?」
秋が笑顔で同意したので円堂はニカッと笑ったまま振り向くが、シンの元にいるはずだった瑞貴がいない。ピッチを見渡しても姿がなかった。
「神崎さん、瑞貴は?」
「今日の本来の練習が終わったから出かけたよ。なんか『自分の気持ちを整理したい』って言ってた」
「自分の…気持ち……?」
円堂の脳裏に浮かぶのは、昨日瑞貴が携帯の画面を見つめている姿。その画面には一之瀬の名前があったので、円堂は心臓がドクンドクンと激しく高鳴って顔をうつむける。
コツンッ。
「えっ?」
ボードで軽く頭を叩かれたので円堂は我に返って顔を上げると、シンが苦笑していた。
「コラコラ。キャプテンまでそんな顔しないの。早く練習に行っておいで」
「は、はい!」
円堂も慌ててグラウンドに戻る。その際、シンは先ほどと打って変わって眉をしかめていた。練習に集中している選手たちはもちろん、ピッチを見ているマネージャーたちも気づいていない。
(とうとうか……。さて、瑞貴はこのことを僕に願うか、願わないか、どちらに転ぶかな)
☆☆☆☆☆
練習を抜けた瑞貴は一人アメリカエリアに来ていた。現在ユニコーンの宿舎の前にいるが、どうすればいいか悩んでいる。
(ほぼ勢いで来ちゃったけど……次の対戦相手の選手がいるとマズいよね……。かと言って一哉に鉢合わせしたくないし……連絡して待ち合わせしたら一哉に気づかれる恐れもあったし……)
「――瑞貴ちゃん?」
「!」
自分の名前を呼ぶ声に振り向くと、両手に買い出しの荷物を持つ土門がいた。
「どうしてここに……ああ、一之瀬か!」
「違うよ……。飛鳥に会いに来たの。少し、時間をもらっていい?」
「……わかった。今日の練習は終わってるし時間は大丈夫。荷物置いてくるから、ちょっと待ってて」
瑞貴の真剣な表情に土門は何かを察したのか、了承の意味を込めて頷いた。
――土門が宿舎に荷物を置いたあと瑞貴と合流して、二人は街から離れた場所に移動してベンチに並んで座る。
「どうしたの? 瑞貴ちゃんがそんな顔するなんて珍しいね」
「……昨日、一哉に会ったんだ。プロリーグのユースに選ばれたこと、病気のことも聞いた。それと……告白された」
「そ、そうなんだ」
一之瀬と同じように瑞貴が好きな土門は複雑だった。しかし、顔をうつむける瑞貴を見て言わないでおく。
「私、一哉はずっと秋ちゃんが好きだと思ってた。初めて雷門中で出会ったとき私に惚れたって言ってたけど『プレーに惚れた』って意味と捉えていたんだ」
頬や手にキスされてもアメリカのスキンシップだと、浦部リカに自分とつき合っていると言ったのも誤魔化すために近くにいたから言ったのだと、瑞貴はずっと思っていたのだ。……一之瀬が不憫である。
「今まで家族や仲間だと思ってた一哉からの告白は正直嬉しかった。雷門中で他の男子に告白されてもすぐに断る返事ができたけど、一哉にはできない……それほど一哉は私にとって大切な人なんだってわかった。けど……!」
「!」
瑞貴は両手を組んでギュッと握る。土門は彼女が今まで見たことのないの表情をしていることに気づいた。
「それほど大切なのに、頭に浮かぶのは一哉じゃない別の人なんだ……。だけどその人は好きになっちゃいけない――絶対に両想いになれない人だから……。頭ではわかってるのに…最近心が追いつかないの……」
「瑞貴ちゃん……」
「次の試合の手前で飛鳥に相談しちゃいけないとわかってる。でも、最高の試合がしたいから飛鳥の元に来たんだ。この気持ちに決着つけないと私は本当のプレーが出せなかった……」
グラウンドで考えるのはサッカーのことだけ。しかし心の中で一之瀬のことが引っかかっているので満足なプレーができていないと、今日の練習で気づいた。
初めて仲間から告白されたので、瑞貴は公私を分けられなかった。
鬼道からパスを受け取った染岡は壁山のディフェンスを抜き、立向居勇気がいるゴールを奪う。
一連の様子を円堂はタオルを首に掛けながら、マネージャーたちがいるベンチへ歩み寄った。
「俺たちがこんなに熱くなってるのを一之瀬が知ったら驚くかな、秋?」
「そうね。それに土門くんも驚くと思うわよ」
「だな! 瑞貴もそう思う――……あれ?」
秋が笑顔で同意したので円堂はニカッと笑ったまま振り向くが、シンの元にいるはずだった瑞貴がいない。ピッチを見渡しても姿がなかった。
「神崎さん、瑞貴は?」
「今日の本来の練習が終わったから出かけたよ。なんか『自分の気持ちを整理したい』って言ってた」
「自分の…気持ち……?」
円堂の脳裏に浮かぶのは、昨日瑞貴が携帯の画面を見つめている姿。その画面には一之瀬の名前があったので、円堂は心臓がドクンドクンと激しく高鳴って顔をうつむける。
コツンッ。
「えっ?」
ボードで軽く頭を叩かれたので円堂は我に返って顔を上げると、シンが苦笑していた。
「コラコラ。キャプテンまでそんな顔しないの。早く練習に行っておいで」
「は、はい!」
円堂も慌ててグラウンドに戻る。その際、シンは先ほどと打って変わって眉をしかめていた。練習に集中している選手たちはもちろん、ピッチを見ているマネージャーたちも気づいていない。
(とうとうか……。さて、瑞貴はこのことを僕に願うか、願わないか、どちらに転ぶかな)
☆☆☆☆☆
練習を抜けた瑞貴は一人アメリカエリアに来ていた。現在ユニコーンの宿舎の前にいるが、どうすればいいか悩んでいる。
(ほぼ勢いで来ちゃったけど……次の対戦相手の選手がいるとマズいよね……。かと言って一哉に鉢合わせしたくないし……連絡して待ち合わせしたら一哉に気づかれる恐れもあったし……)
「――瑞貴ちゃん?」
「!」
自分の名前を呼ぶ声に振り向くと、両手に買い出しの荷物を持つ土門がいた。
「どうしてここに……ああ、一之瀬か!」
「違うよ……。飛鳥に会いに来たの。少し、時間をもらっていい?」
「……わかった。今日の練習は終わってるし時間は大丈夫。荷物置いてくるから、ちょっと待ってて」
瑞貴の真剣な表情に土門は何かを察したのか、了承の意味を込めて頷いた。
――土門が宿舎に荷物を置いたあと瑞貴と合流して、二人は街から離れた場所に移動してベンチに並んで座る。
「どうしたの? 瑞貴ちゃんがそんな顔するなんて珍しいね」
「……昨日、一哉に会ったんだ。プロリーグのユースに選ばれたこと、病気のことも聞いた。それと……告白された」
「そ、そうなんだ」
一之瀬と同じように瑞貴が好きな土門は複雑だった。しかし、顔をうつむける瑞貴を見て言わないでおく。
「私、一哉はずっと秋ちゃんが好きだと思ってた。初めて雷門中で出会ったとき私に惚れたって言ってたけど『プレーに惚れた』って意味と捉えていたんだ」
頬や手にキスされてもアメリカのスキンシップだと、浦部リカに自分とつき合っていると言ったのも誤魔化すために近くにいたから言ったのだと、瑞貴はずっと思っていたのだ。……一之瀬が不憫である。
「今まで家族や仲間だと思ってた一哉からの告白は正直嬉しかった。雷門中で他の男子に告白されてもすぐに断る返事ができたけど、一哉にはできない……それほど一哉は私にとって大切な人なんだってわかった。けど……!」
「!」
瑞貴は両手を組んでギュッと握る。土門は彼女が今まで見たことのないの表情をしていることに気づいた。
「それほど大切なのに、頭に浮かぶのは一哉じゃない別の人なんだ……。だけどその人は好きになっちゃいけない――絶対に両想いになれない人だから……。頭ではわかってるのに…最近心が追いつかないの……」
「瑞貴ちゃん……」
「次の試合の手前で飛鳥に相談しちゃいけないとわかってる。でも、最高の試合がしたいから飛鳥の元に来たんだ。この気持ちに決着つけないと私は本当のプレーが出せなかった……」
グラウンドで考えるのはサッカーのことだけ。しかし心の中で一之瀬のことが引っかかっているので満足なプレーができていないと、今日の練習で気づいた。
初めて仲間から告白されたので、瑞貴は公私を分けられなかった。