一之瀬! 最後のキックオフ‼︎
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「どうしたの?」
「……それだけじゃ、ないよね」
「えっ」
「さっきまでの一哉、なんか思い詰めた表情をしてた。ナイツオブクイーンとの試合だって焦りが出ていたよ」
「……さすが瑞貴だね」
一之瀬は観念したように苦笑しると、繋いでいる手にギュッと少し力を入れて解放すると、ゆっくり話し始めた。
数年前に一之瀬の身に起こった事故の怪我は手術を受け、リハビリもがんばったおかげで完治した。……そう思ったのだが、最近になって後遺症が再発したのだ。
「そんな……! すっかりよくなったんじゃなかったの!?」
「俺もそう思っていた……。でも、あの事故の影響はまだ俺の体に残っていたらしい」
「手術、受けるんだよね?」
「ああ。でも、今回は失敗したら――二度とサッカーができなくなる」
さらに悪いことに時間が経てば命さえ落としかねない。一刻も早く手術を受けなければならないのだ。
「飛鳥や秋ちゃんにはこのことを?」
「土門には伝えたけど秋には言っていない。だから瑞貴も言わないでくれ」
「そうなんだ……」
「今回のユースは見送りになる……。プロでの最初の試合に、瑞貴を招待したかった……!」
歯を食いしばって顔をうつむける一之瀬。彼の姿を見て瑞貴は眉を下げる。
「イナズマジャパンとの試合を最後にする。瑞貴と円堂と思いっきりサッカーがしたいんだ。だから――」
「絶対治るよ!」
「えっ?」
「手術は絶対に成功する! だって一哉は一度復活してフィールドに戻って来た不死鳥だもん! 今回だってそう、また一緒にサッカーができる! 私は信じてる!」
「!」
真っ直ぐな瞳で訴える瑞貴に一之瀬は目を見開いた。病気が治ること、再びフィールドに戻ること、また一緒にサッカーができること……慰めなどではなく一点の曇りもなく信じる瑞貴に一之瀬は心を打たれた。
「まずは次の試合をお互いがんばろう! でも最後じゃない……絶対に次も一緒にサッカーやろうよ!」
「……そんな君だから、俺は」
「一哉? ……――っ!?」
チュ。
一之瀬が瑞貴の手を取り引き寄せる。同時に反動で瑞貴の傘が落ちてしまったが一之瀬の傘に入ったので濡れることはなかった。そしてなんと……一之瀬は瑞貴の唇のギリギリ端へキスしたのだ。
触れる程度で体を離した一之瀬は繋いだ手を離すと瑞貴の頬に移動させる。あまりのことに瑞貴は瞳を揺らして頬を赤くする。
「かず…や……?」
「好きだ」
「っ!」
「君が好きだよ、瑞貴。初めて会ったときから……ううん。シンさんに君のプレーを見せてもらったときから、ずっとずっと瑞貴を見ていた」
今度は一之瀬が真っ直ぐ見つめている。瑞貴の頬に当てた手を後頭部に回し、傘を持っている手も背中に腕を回して抱きしめる。突然のことで瑞貴は振り払うどころか動くこともできなかった。
「突然こんなことをして、ごめん……。でも、俺の気持ちは本当だ」
一之瀬は瑞貴を抱きしめる腕はそのままにして少し体を離し、顔を見合わせる。
「瑞貴……俺と一緒にアメリカに来てくれないか?」
「一哉と、アメリカに……?」
「君の存在が、サッカーと同じくらい心強くて俺に力を与えてくれるんだ。そばにいてくれたら、なんでもできる気がする」
呆然とする瑞貴に一之瀬は落ちた傘を差し出し、受け取ったのを確認すると完全に離れた。そして戸惑う瑞貴に向かって優しく微笑む。
「返事は次の試合が終わったあとでお願い……――いい試合にしよう」
「あっ、うん……」
「会えてよかった、瑞貴」
一之瀬はそう言い残して背を向けると去って行った。一度も振り返らずに。
一連の二人の様子を、木の陰で土門が傘も差さず隠れて見ていた。その表情はとても複雑そうだ。
「……それだけじゃ、ないよね」
「えっ」
「さっきまでの一哉、なんか思い詰めた表情をしてた。ナイツオブクイーンとの試合だって焦りが出ていたよ」
「……さすが瑞貴だね」
一之瀬は観念したように苦笑しると、繋いでいる手にギュッと少し力を入れて解放すると、ゆっくり話し始めた。
数年前に一之瀬の身に起こった事故の怪我は手術を受け、リハビリもがんばったおかげで完治した。……そう思ったのだが、最近になって後遺症が再発したのだ。
「そんな……! すっかりよくなったんじゃなかったの!?」
「俺もそう思っていた……。でも、あの事故の影響はまだ俺の体に残っていたらしい」
「手術、受けるんだよね?」
「ああ。でも、今回は失敗したら――二度とサッカーができなくなる」
さらに悪いことに時間が経てば命さえ落としかねない。一刻も早く手術を受けなければならないのだ。
「飛鳥や秋ちゃんにはこのことを?」
「土門には伝えたけど秋には言っていない。だから瑞貴も言わないでくれ」
「そうなんだ……」
「今回のユースは見送りになる……。プロでの最初の試合に、瑞貴を招待したかった……!」
歯を食いしばって顔をうつむける一之瀬。彼の姿を見て瑞貴は眉を下げる。
「イナズマジャパンとの試合を最後にする。瑞貴と円堂と思いっきりサッカーがしたいんだ。だから――」
「絶対治るよ!」
「えっ?」
「手術は絶対に成功する! だって一哉は一度復活してフィールドに戻って来た不死鳥だもん! 今回だってそう、また一緒にサッカーができる! 私は信じてる!」
「!」
真っ直ぐな瞳で訴える瑞貴に一之瀬は目を見開いた。病気が治ること、再びフィールドに戻ること、また一緒にサッカーができること……慰めなどではなく一点の曇りもなく信じる瑞貴に一之瀬は心を打たれた。
「まずは次の試合をお互いがんばろう! でも最後じゃない……絶対に次も一緒にサッカーやろうよ!」
「……そんな君だから、俺は」
「一哉? ……――っ!?」
チュ。
一之瀬が瑞貴の手を取り引き寄せる。同時に反動で瑞貴の傘が落ちてしまったが一之瀬の傘に入ったので濡れることはなかった。そしてなんと……一之瀬は瑞貴の唇のギリギリ端へキスしたのだ。
触れる程度で体を離した一之瀬は繋いだ手を離すと瑞貴の頬に移動させる。あまりのことに瑞貴は瞳を揺らして頬を赤くする。
「かず…や……?」
「好きだ」
「っ!」
「君が好きだよ、瑞貴。初めて会ったときから……ううん。シンさんに君のプレーを見せてもらったときから、ずっとずっと瑞貴を見ていた」
今度は一之瀬が真っ直ぐ見つめている。瑞貴の頬に当てた手を後頭部に回し、傘を持っている手も背中に腕を回して抱きしめる。突然のことで瑞貴は振り払うどころか動くこともできなかった。
「突然こんなことをして、ごめん……。でも、俺の気持ちは本当だ」
一之瀬は瑞貴を抱きしめる腕はそのままにして少し体を離し、顔を見合わせる。
「瑞貴……俺と一緒にアメリカに来てくれないか?」
「一哉と、アメリカに……?」
「君の存在が、サッカーと同じくらい心強くて俺に力を与えてくれるんだ。そばにいてくれたら、なんでもできる気がする」
呆然とする瑞貴に一之瀬は落ちた傘を差し出し、受け取ったのを確認すると完全に離れた。そして戸惑う瑞貴に向かって優しく微笑む。
「返事は次の試合が終わったあとでお願い……――いい試合にしよう」
「あっ、うん……」
「会えてよかった、瑞貴」
一之瀬はそう言い残して背を向けると去って行った。一度も振り返らずに。
一連の二人の様子を、木の陰で土門が傘も差さず隠れて見ていた。その表情はとても複雑そうだ。