フユッペの秘密
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――夜も遅いため久遠は瑞貴と円堂に帰るように伝えたが、瑞貴が手を離すと冬花がうなされる。久遠が同じように頭を撫でてもダメだったので瑞貴は残ることにした。
「井上、すまないな」
「いいえ。私ができるのは、これぐらいですから……」
だけど練習の疲れや精神的にも限界が来たのか、瑞貴は冬花のベッドに顔をうつむけて眠ってしまった。久遠は看護師からもらった毛布を瑞貴にかけてあげると、冬花は再びうなされ始めた。
「うっ……っ……」
暗闇の中で幼い冬花は泣いていた。寂しくて、心細くて、悲しくて、そんな悲しみの感情がたくさん流れていた。
『ひっく……うぅ……』
だけどそんな彼女の前に二つの手が差し伸べられた。
『ニヒッ!』
『フフッ』
差し出した手の持ち主はバンダナを巻いた少年と、今の自分よりも年上の少女。二人共自分に向けて笑顔を浮かべていた。
そのおかげで暗闇の世界が明るくなり、冬花も笑顔になった。
「マモルくん……瑞貴ちゃん……」
「ん?」
「冬花ちゃん!?」
小さな呟きに久遠が気づき、瑞貴も反応して起き上がった。すると冬花はゆっくりと目を開け、表情が和らいでいた。
「大丈夫か?」
「うん……」
「安心して眠りなさい」
「うん…お父さん……。瑞貴ちゃんも…ありがとう……。起きている間にずっと私の頭を撫でてくれたんだよね……」
「前にも言ったでしょ? 『これぐらいお安いご用』って」
「ねぇ瑞貴ちゃん…手を繋いでもらってもいい……? 撫でてもらうのと同じくらい…よく眠れそう……」
「うん。おやすみ、冬花ちゃん」
差し出された冬花の手に瑞貴も重ねる。もう一度眠った冬花はうなされることはなかった。
「……不思議なものだ」
「えっ?」
「井上が冬花と出会ったのは、サッカー部の練習をしたときで間違いないな」
「はい」
「記憶がなくなる前に出会ったわけではない。円堂はわかるが、冬花は最近お前のことをよく話している。それも楽しそうにな」
「冬花ちゃんが……」
幼馴染の円堂ならまだしも、自分のことを久遠に『楽しそう』とわかるほど話していたことに、瑞貴は嬉しかった。
「先日も一緒に寝たと言っていたが、お前が冬花の部屋の前にいたときか?」
「あっ、はい。やっぱり気になって尋ねて、一緒にカモミールティーを飲んでそのまま。冬花ちゃんは私のことを……複雑ですけど『お母さんみたい』って」
「同い年のお前にお母さんか」
「やっぱり女性として頼る存在がいなくて寂しいんでしょうね……。早く奥さんを見つけてあげてください」
「……余計な世話だ」
「フフッ」
少しそっぽを向いた久遠に瑞貴は微笑んだ。久遠の珍しい姿は笑顔を見ると同様にレアかもしれない。
それから瑞貴はもう一度ベッドにうつ伏せて眠りに入るもちろん、冬花と手を握ったままで。
(冬花、お前はやはり……)
記憶を戻すかどうか悩む久遠に、寝ぼけて顔を動かした冬花の方向にいた瑞貴に自然と目に入った。
(母親、か……)
少し思った久遠はすぐにそれを打ち消し、冬花と瑞貴にそれぞれかけてある毛布を直した。
☆☆☆☆☆
翌日。冬花は退院許可が出たのでシンに車で迎えに来てもらった。久遠は助手席に、瑞貴と冬花は後部座席に乗ってジャパンエリアに向かう。
「冬花ちゃんが元気になってよかったよ」
「心配かけてごめんなさい、神崎さん。瑞貴ちゃんもいろいろありがとう」
「どういたしまして。それと、その言葉はもう一人に言ってあげて」
「もう一人?」
「守だよ。冬花ちゃんのことをずっと心配してたんだから」
「そうだな、円堂にも礼を言うといい。私が帰すまで井上と共にお前のそばに付いててくれた」
「マモルくんが……!」
(……っ)
「…………」
嬉しそうに微笑む冬花の表情に、瑞貴はホッとすると同時にチクリと胸が痛んだ。だけど理由を気づく前に首を振って打ち消す。その様子をシンはバックミラーで見ていたので悲しそうに少し眉を下げた。
「井上、すまないな」
「いいえ。私ができるのは、これぐらいですから……」
だけど練習の疲れや精神的にも限界が来たのか、瑞貴は冬花のベッドに顔をうつむけて眠ってしまった。久遠は看護師からもらった毛布を瑞貴にかけてあげると、冬花は再びうなされ始めた。
「うっ……っ……」
暗闇の中で幼い冬花は泣いていた。寂しくて、心細くて、悲しくて、そんな悲しみの感情がたくさん流れていた。
『ひっく……うぅ……』
だけどそんな彼女の前に二つの手が差し伸べられた。
『ニヒッ!』
『フフッ』
差し出した手の持ち主はバンダナを巻いた少年と、今の自分よりも年上の少女。二人共自分に向けて笑顔を浮かべていた。
そのおかげで暗闇の世界が明るくなり、冬花も笑顔になった。
「マモルくん……瑞貴ちゃん……」
「ん?」
「冬花ちゃん!?」
小さな呟きに久遠が気づき、瑞貴も反応して起き上がった。すると冬花はゆっくりと目を開け、表情が和らいでいた。
「大丈夫か?」
「うん……」
「安心して眠りなさい」
「うん…お父さん……。瑞貴ちゃんも…ありがとう……。起きている間にずっと私の頭を撫でてくれたんだよね……」
「前にも言ったでしょ? 『これぐらいお安いご用』って」
「ねぇ瑞貴ちゃん…手を繋いでもらってもいい……? 撫でてもらうのと同じくらい…よく眠れそう……」
「うん。おやすみ、冬花ちゃん」
差し出された冬花の手に瑞貴も重ねる。もう一度眠った冬花はうなされることはなかった。
「……不思議なものだ」
「えっ?」
「井上が冬花と出会ったのは、サッカー部の練習をしたときで間違いないな」
「はい」
「記憶がなくなる前に出会ったわけではない。円堂はわかるが、冬花は最近お前のことをよく話している。それも楽しそうにな」
「冬花ちゃんが……」
幼馴染の円堂ならまだしも、自分のことを久遠に『楽しそう』とわかるほど話していたことに、瑞貴は嬉しかった。
「先日も一緒に寝たと言っていたが、お前が冬花の部屋の前にいたときか?」
「あっ、はい。やっぱり気になって尋ねて、一緒にカモミールティーを飲んでそのまま。冬花ちゃんは私のことを……複雑ですけど『お母さんみたい』って」
「同い年のお前にお母さんか」
「やっぱり女性として頼る存在がいなくて寂しいんでしょうね……。早く奥さんを見つけてあげてください」
「……余計な世話だ」
「フフッ」
少しそっぽを向いた久遠に瑞貴は微笑んだ。久遠の珍しい姿は笑顔を見ると同様にレアかもしれない。
それから瑞貴はもう一度ベッドにうつ伏せて眠りに入るもちろん、冬花と手を握ったままで。
(冬花、お前はやはり……)
記憶を戻すかどうか悩む久遠に、寝ぼけて顔を動かした冬花の方向にいた瑞貴に自然と目に入った。
(母親、か……)
少し思った久遠はすぐにそれを打ち消し、冬花と瑞貴にそれぞれかけてある毛布を直した。
☆☆☆☆☆
翌日。冬花は退院許可が出たのでシンに車で迎えに来てもらった。久遠は助手席に、瑞貴と冬花は後部座席に乗ってジャパンエリアに向かう。
「冬花ちゃんが元気になってよかったよ」
「心配かけてごめんなさい、神崎さん。瑞貴ちゃんもいろいろありがとう」
「どういたしまして。それと、その言葉はもう一人に言ってあげて」
「もう一人?」
「守だよ。冬花ちゃんのことをずっと心配してたんだから」
「そうだな、円堂にも礼を言うといい。私が帰すまで井上と共にお前のそばに付いててくれた」
「マモルくんが……!」
(……っ)
「…………」
嬉しそうに微笑む冬花の表情に、瑞貴はホッとすると同時にチクリと胸が痛んだ。だけど理由を気づく前に首を振って打ち消す。その様子をシンはバックミラーで見ていたので悲しそうに少し眉を下げた。