代理キャプテンをしていた風丸が交代したことで、キャプテンマークはヒロトに、副キャプテンマークは豪炎寺に託された。栗松がＤＦに入り、飛鷹がＭＦに入った。風丸は応援の声を上げる。


「みんな！　頼んだぞ！」


エステバンのスローイングで試合再開。セルヒオに回されるボールを栗松がカットした。


（風丸さんのプレー、ムダにはしないでヤンス！）

「いいぞ！」


しかしボールはピッチに入ったエステバンにいつの間にか取られてしまう。


「えっ？」

「レオーネ！」

「立向居！」


レオーネにボールが渡り、綱海はディフェンスに入りながら立向居に声をかける。


（どうすればいいんだ……？　ムゲン・ザ・ハンドじゃ止められないし、魔王・ザ・ハンドをやって……また、もし失敗したら……！）

「――怖がってんのか!?」

「えっ」


迫り来るレオーネに立向居が恐怖で冷や汗を流している中、飛鷹の声が上がる。


「失敗したっていい！　お前の全部をぶつけるんだ！」

（失敗してもいい……。俺の全部をぶつければ……）


ファイアードラゴン戦で円堂や瑞貴に言われた言葉を、飛鷹は立向居にも伝えた。そのおかげで顔から恐怖がなくなって真っ直ぐレオーネと向き合う。


「ヘルファイア！」

「これが俺の全部だ！　――魔王・ザ・ハンド！」


立向居の魔王が完全に現れたことにより、ガッチリとシュートをキャッチした。イナズマジャパンも瑞貴たちも喜び、テレスやレオーネたちは驚いた。


《止めた――っ!!　立向居がレオーネのヘルファイアを止めました――っ!!》

「止めた……」


ほとんど無我夢中だったようで、立向居も信じられない気持ちで手に治まっているボールを見る。

そして前半が終了し、栗松と綱海と木暮夕弥が立向居の元へ駆け寄る。


「やったでヤンス！」

「スッゲーぞ立向居！」

「ついにやったね！」

「…………」


未だに呆然としている立向居に、綱海が両肩に手を当てて軽く揺さぶる。


「完成したんだよ。必殺技がさ！」

「はい！　ありがとうございました！」


やっと実感した立向居は今まで協力してくれた綱海たちに礼を言うと、ベンチに向かう飛鷹に気づく。


「飛鷹さん！　ありがとうございました！」

「……キャプテンや瑞貴なら、ああ言うと思っただけだ」


半分だけ顔を向けた飛鷹は、クシを取り出して髪を整えると再びベンチへ向かっていく。


「飛鷹さん……！」

「よーし！　後半は点取っていくぞ！」

｢｢｢｢｢オウッ!!｣｣｣｣｣

「フンッ。ちょーっとシュートを止めたくらいで、おめでたい奴らだ」


意気込む染岡たちに、テレスは再び余裕の笑みでベンチに向かった。



☆☆☆☆☆


「円堂」

「ああ！　これなら後半も充分戦える！」

「ついに勇気も自分だけの必殺技を完成させたんだ！」

（あの追い詰められた状況で、あんな必殺技が出せるなんて……！）


喜び合う鬼道や円堂や瑞貴。フィディオは立向居の潜在能力も侮れないと思った。