「おいおい。まさかマジン・ザ・ハンドまで出せなくなったんじゃないだろーな？」

（マジン・ザ・ハンドは心臓の辺りに気を集めた……もし、違う形で集めることができたら？　やってみよう！）


どうやら立向居は何かをつかんだようだ。


「お願いします！」

「よくわかんねーけど、いくぞ！」


立向居が順調に進んでいく一方、反対側のコートでは……。


「鬼道！」

「あっ」


ドリブルする佐久間がパスを出すが、鬼道はボールを受け取り損なった。


「すまない……」

（鬼道……。影山のことが気になっているんだな……）

「有人？　次郎？」


珍しく練習中に浮かない顔をしている鬼道と佐久間に、瑞貴は首を傾げた。ゴールにいる円堂も不思議に思っている。


「いくぜ！」

「あっ」


不動に呼ばれて円堂は構える。だが不動のシュートはゴールより上に向かっていた。


「どうした!?　不動！」

「チッ……」

（不動と影山の関係も気になる……）


佐久間は次に不動を見る中、円堂は鬼道の、瑞貴は不動の元へ駆け寄る。


「鬼道、何かあったのか？」

「いや、何もない。練習を続けよう」

「ああ……」

「明王、どうしたの？」

「なんでもねぇよ。ほら、さっさと戻れ」

「うん……」


結局、二人共何も答えてくれなかったこで円堂と瑞貴は元の位置に戻っていく。


（この島のどこかに影山がいるかもしれない、そんな不確かなことを言って円堂を心配させたくない……）

「鬼道！　佐久間！　不動！」


三人は久遠道也に呼ばれてすぐに向かった。


「お前たちは、練習に集中できていない。グラウンドから出ろ」

｢｢｢｢｢えっ!?｣｣｣｣｣


三人への退場宣言に円堂や瑞貴たちは驚いた。


「鬼道！」

「いいんだ、円堂。監督の言う通りだ。確かに集中できていなかった……」

「円堂、お前は練習に戻れ」

「はい……」

「次郎……。明王……」

「すまない……」

「お前も練習に戻れ、バカ瑞貴」

「イタッ」


不動はベシッと瑞貴の頭を叩いた。もちろん強くやったわけじゃないが地味に痛い。

三人の姿を見て、円堂と瑞貴は一度顔を見合わせてから練習に戻った。