イナズマジャパンのゴールキックから始まるが、ナイツオブクイーンはアブソリュートナイツの体勢に入っている。


「よーし！　いくぞー！」

「瑞貴！　栗松！」

｢｢オウッ！｣｣


鬼道有人が先ほど破ったメンバーの二人を呼び、瑞貴がボールを受け取る。そのうしろには栗松と鬼道が共に走っている。


「まただと……？」


エドガーはアイコンタクトを送るとフィリップは頷いて駆け出す。

瑞貴が栗松にパスを出してフィリップをかわし、栗松が鬼道にボールを回してエリック＝パープルトンを抜き、鬼道がポールを突破するために瑞貴にパスを出すが……。


「やはり同じだ」

「ナメるな！」

「二度は通じないぞ！」


エドガーに続きゲイリーとピーター＝コールが走り出すが、それも鬼道たちの狙いだ。


「かかったな」


なんと宇都宮虎丸が切り込んでいたのだ。再びアブソリュートナイツが崩れ、瑞貴はそのチャンスを見逃さない。


「虎丸！」


瑞貴は虎丸へパスを出すがジョニー＝ガスコインがカットした。逆に裏をかかれて虎丸も鬼道も驚くと、エドガーは笑う。


「っ!?」

「読まれていたのか!?」

「フッ」

「エドガー！」

「行かせるかよ！」


ジョニーがエドガーにパスを出すが、イナズマジャパンもそれで終わらない。染岡が見事にカットしたのだ。


「染岡！」

「オウッ！」


豪炎寺の合図で染岡はパスする。デービット＝バッキンガムがマークに入るが、シュートを撃てない状態ではない。


「決めさせるか！」


フレディ＝マックイーンが構えると、豪炎寺は逆サイドにボールを回した。その先には染岡がいる。


「このユニフォームを着ることの重さは、俺が一番知っているんだ！　――くらえ！　ドラゴンスレイヤー！」


不意を突かれてフレディも対応できず、染岡の新必殺技・ドラゴンスレイヤーが見事に決まった。


《ゴォ――ルッ!!　イナズマジャパン、同点に追いつきましたー！》

「よっしゃあ――っ!!」


感極まって叫ぶ染岡の元に、風丸や栗松や鬼道たちが喜びながら集まる。


「やったじゃないか、染岡！」

「スゴい必殺技でヤンス！」

「これが世界での初得点だ」

「オウッ！　これからガンガン決めてやるぜ！」


ふと染岡は豪炎寺を見ると、彼も笑って頷いたので染岡も親指をグッと立てて笑った。


「スゴい……スゴいよ竜吾！　私も負けてられない！」

「いいぞ、染岡！　お前のあきらめない心が、デッカい実を結んだんだ！」


染岡のシュートに感化された瑞貴も気合いが入ってきた。円堂も染岡が選考試合に落ちてもあきらめず努力して代表になったことを知っているから、尚更嬉しく思う。


「染岡さんが決めましたよ！」

「うん！」

「う～ん！　素晴らしいシュートっス！」


春奈と木野秋が顔を見合わせて笑い、壁山も感動して涙を流す。


「よくやった。染岡」

「とてもいいシュートだったよ」


響木正剛もシンも微笑む中、久遠も静かに笑っていた。

するとナイツオブクイーンは選手を一気に四人も入れ替えてきた。


「な、なんだ？　あのフォーメーションは……」

「!?」


入れ替えた選手も含め、ナイツオブクイーンの不可思議なフォーメーションに虎丸と豪炎寺を始めみんなも驚く。


「あんなに両サイドを空けるとは……あれでは守備を捨てたのと同じだぞ」

「何を考えているんだ？」

「中央突破なのか？　それとも何かの罠か？」

「あれじゃ中盤は中央を意識するしかなくなる……」

「そう見せかけて、サイドから来るのかもしれないよ」


鬼道や風丸やヒロトは警戒し、立向居勇気や木暮夕弥はナイツオブクイーンの狙いを考える。


「やるじゃねぇか」


だけど不動明王だけは何かに気づいたようだ。


「矢印……いや、槍？」

「ん？　どうしたんだ？」

「あのフォーメーションの形だよ。矢印や槍に見えるんだ。アブソリュートナイツみたいに複雑そうに見えて、すぐに行動できるような案外単純な形かもしれない」

「なるほど……」


確かにアブソリュートナイツは事前にフォーメーションを組んでいたので、何か仕掛けることはすぐにわかった。今回も必殺タクティクスかもしれないと思い、鬼道は瑞貴の考えを頭に入れた。