「南雲、涼野、アフロディ。なんなのですか？　あの少女は」

｢｢？｣｣

「何がだい？」


突然チャンスウからの問いに南雲と涼野は顔を見合わせ、アフロディは言葉をかけるとチャンスウは他のイナズマジャパンと共にゴールにいる瑞貴を見る。


「パーフェクトゾーンプレスの餌食になったとき、必死に冷静になって突破口を見つけようとしていました。そして今も……。なんなのですか？」


もう一度問うチャンスウ。その意図がわかった三人は、口の端を上げて笑う。


「なんだ。やっと気づきやがったか」

「だから何度も言っただろ？」

「彼女は強いよ。それも言葉で言い表せない――不思議な強さがね」


アフロディたちがそんな会話をしているとは知らず、イナズマジャパン側では立向居が止められなかったことに悔やんでいた。


「すみません……。守りきれなくて……」

「ううん。この１点は私たちのミスでもあるよ。私もあのとき、冷静を失ってしまった……」


今ですら原作で知った突破口を思い出せない瑞貴は、それを恥じるように顔をうつむける。


「パーフェクトゾーンプレスは、想像以上に手強い……」

「心配ないですよ、豪炎寺さん。次は俺たちの秘密兵器を奴らに見せてやりましょう！」

「あの必殺技か？」

「だけど、奴らのプレッシャーを受けたら必殺技どころじゃないぞ」

「っ、待ってくれ！」

「必殺技どころじゃない……」

｢｢｢｢｢？｣｣｣｣｣


風丸一郎太の言葉で鬼道と瑞貴は何かに気づくと、今日までの練習を思い出す。


『必殺技の特訓は必要ないよ』


シンが告げたあの言葉はパーフェクトゾーンプレスがあるから、必殺技を使うことができない、よって必殺技を頼る練習をする必要がないという意味だったのだ。むしろあの練習にこそ、逆転の秘策がある。

瑞貴と鬼道はベンチを見ると、閉じていた目を開いた久遠が告げる。


「そろそろ練習の成果を見せてくれないか」

｢｢！｣｣


その言葉で理解した瑞貴と鬼道は久遠に向かって頷くと、お互いも顔を見合わせて頷きみんなに顔を向ける。


「みんな、泥のフィールドを思い出して！」

「下を泥だと思ってコントロールするんだ！」

「泥……？」


急に出た瑞貴と鬼道の指示に壁山たちは不思議そうな表情を浮かべた。


「泥……そうか！　――っ!?」


円堂も気づいて瑞貴に顔を向けるが、逆に瑞貴は円堂を見ずに鬼道と話し合って仲間に指示を与えていた。その姿に円堂は寂しさを覚えて胸に手を当てる。


（いつもなら、俺が……）


普段なら円堂と顔を見合わせて頷き、仲間に作戦を伝えたり指示を出していた。だけど今回自分はベンチにいるし、代わりにピッチに鬼道がいるから自分に顔向ける必要はない。頭ではわかっているのに心がわかっていなかった。


（なんだ、この胸のモヤモヤした感覚は……!?　いや、今は久遠監督の答えを見つけなくちゃ！）


それは相棒という立場だからなのか、それとも別の気持ちなのか、円堂はその正体がわからず試合に集中する。