「そんな足では戦力にならん」

「…………！」


久遠が冷静に出す判断に円堂の瞳が揺れ、その間に神崎シンが土方と吹雪の足を診る。神の力を使わずとも、病院を経営しているため医療の知識があるので診るくらいは容易い。


「特に吹雪くんのダメージがヒドいね。試合のあとに病院へ行こう」

「はい……」


自分の体は自分が一番わかっている。吹雪もシンの言葉に力無く顔をうつむける。

そして土方のポジションに木暮が、吹雪のポジションに虎丸が入って試合が始まった。


「みんな……がんばってくれ！」


円堂が応援の声を上げる中、緑川がドリブルで上がるとウンヨンが迫って来る。


「ライトニングアクセル！」

「いいぞ緑川！」


ウンヨンを突破した緑川に基山ヒロトが言葉をかける。すると続けてコ＝ソンファンが来たので緑川はバックパスで瑞貴にボールを渡した。


「よしっ！」

「俺が繋ぐ！」

「パーフェクトゾーンプレス！」

「うっ……！」

「近くで見るとおっかないよ、これ……！」


瑞貴と飛鷹はパーフェクトゾーンプレスに囲まれ、虎丸も木暮もベンチで見るのとピッチで見るのと迫力が違うので顔を歪める。


「瑞貴！　飛鷹！　ムリはするな！」

「やっぱり、実際に囲まれるとキツいな……」

「こんな奴ら、ケンカなら蹴りで一発なのに……！」


鬼道が言葉をかけるも瑞貴と飛鷹の冷静はすでに失っている。今このとき、あまりのプレッシャーに瑞貴は原作を忘れてしまった。


（思い出せ……。早く、原作を思い出すんだ！　この脱出方法を……！）

「っ!?」


原作を思い出そうとする瑞貴に、チャンスウは眉をしかめた。

焦るあまりに瑞貴はとうとうボールを奪われてしまった。さらにボールは飛鷹がいるＤＦの選手へ。


「取る！　うおおぉぉおおお！」


飛鷹が懸命にボールを追いかけようとするが、顔にボールがぶつかって倒れた。

ボールはパーフェクトゾーンプレスの外に出て涼野に渡る。そして流れるようにファイアードラゴンのフォーメーションが変わり、攻撃陣がイナズマジャパンのゴールへ向かって涼野がチャンスウにパスをする。


「行かせないっス！　ザ・ウォール！」

「ならく落とし！」


ジャンプしたチャンスウがならく落としで壁山にボールをぶつけて突破し、一気に立向居がいるゴール前に行く。そして南雲にパスした。


「アトミックフレア！」

「ムゲン・ザ・ハンドＧ５！」


だが、南雲のアトミックフレアの威力に敵わずゴールを許してしまった。


「なんやの!?　せっかく１点取ったのに全然いいとこなしやん！」

「勝てば世界だっていうのに……。みんなー！　がんばるんだー！」

「今日のジャパンはダメだねぇ。ずっとファイアードラゴンに遊ばれてる」


観客席にいる浦部リカも財前塔子も、ヒデと共にいるルカもイナズマジャパンの動きにキレがないことを理解する。