最後の試合
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一日経てばだいぶうまくなってきた。最初はできなかったパスもだんだん通るようになり、もちろんシュートも……。
「瑞貴!」
「てぇい!」
「ふんっ!」
風丸から空中でパスを受け取った瑞貴はそのまま円堂がいるゴールに向けてシュートを撃つ。コーナーを狙ったがジャンプした円堂にガッチリ止められてしまった。
「今のはいい動きだったぞ!」
「守こそ!」
瑞貴の顔には迷いがなかった。もう決めたのだ。
(一試合一試合の全ては大切な試合。だからこそ決勝戦も、たくさんの人たちの心に残る最高の試合にする! そのためにも伝えなくちゃ!)
次のボールを受け取った瑞貴は前にいる豪炎寺に目を向ける。
「修也!」
「ふんっ!」
瑞貴が空中に受けてパスを出すと、それを追った豪炎寺が円堂のいるゴールに向けてシュートを撃つ。それは正面でガッチリ止められてしまった。
それから何度も何度も、瑞貴がパスして豪炎寺がシュートを撃って円堂が止める、その繰り返しだったが他のみんなにも三人の――特に豪炎寺の気迫が伝わっていた。事情は知らずとも彼がどんな思いで決勝戦に臨もうとしているのかを。
――夕方。練習が終わった瑞貴と円堂は稲妻総合病院に向かった。廊下を歩いていると反対側からも誰かが来た。
その姿は豪炎寺に似た顔立ちを持つ男性――勝也だ。それがわかった円堂と瑞貴は声を上げる。
「俺、雷門中サッカー部・円堂守です!」
「私は同じく、雷門中サッカー部・井上瑞貴です」
「「お願いします!」」
二人は同時に深々と頭を下げた。その姿に勝也も少なからず目を見開く。
「豪炎寺からサッカーを取り上げないでください! あいつは、サッカーが好きなんです! 好きで好きで大好きで、でも夕香ちゃんのことに責任を感じて……自分から…サッカーを…やめて…今…やっと好きなサッカーができるようになったんです!」
「私たちも、みんなも、これからも修也くんと一緒にプレーしたいんです! 修也くんを必要としている仲間は大勢います! お願いします!」
「豪炎寺からサッカーを取り上げないでください!」
心から懇願(コンガン)する円堂と瑞貴を一瞥する勝也が、二人の横を通り過ぎてひと言――。
「急いでいるので失礼する」
「「!」」
二人の言葉の返事すらなかった。円堂と瑞貴は顔を上げて振り向くと勝也は歩調を緩めず進んで行く。
(なんで聞いてくれないんだ……。あいつは…豪炎寺は……サッカーが好きなのに――)
「試合、見に来てください!」
「えっ!?」
「…………」
突然の瑞貴の言葉に先ほどまで悔しそうに顔を歪めていた円堂は驚き、勝也も振り向きはせずとも足を止めた。