「決勝戦までの三日間は、ここで練習してもらう」

「これは……泥でヤンス」

｢｢｢｢｢えぇ――っ!?｣｣｣｣｣


いつの間にかフィールドが変わっており、栗松が指を突っ込んで感触を確かめて言うと、みんなは驚きの声を上げた。


「どういうことですか!?　こんな泥の中で練習しろなんて」

「それより必殺技の特訓をすべきじゃないですか？　吹雪たちの連携必殺技だって、もう少しで完成するんです！」


泥のフィールドで練習しろと言う久遠とシンに、鬼道が問いかけて風丸の意見に吹雪も土方も頷いたのだが……。


「必殺技の特訓は必要ないよ」

「でも、神崎さん、監督――」

「お前たちは言われた通りにしてればいい」


シンが尚も否定すると円堂が声を上げるが、久遠が有無を言わさないと睨みつける。その迫力にイナズマジャパンは言葉が出なかった。


「何をしている。早くしろ！」

「本当に、こんな所で練習するでヤンスか……？」


理解不能な練習メニューに栗松と木暮と立向居は苦い顔で顔を見合わせるが……。


バチャ、ボチャ。


｢｢｢｢｢!?｣｣｣｣｣


先に入ったのは瑞貴とボールを持った豪炎寺だった。二人はフィールドにボールを落としたショックで泥がユニフォームに跳ねても気にせずパスをし合う。


バシャン！


「豪炎寺！　瑞貴！」


名前を呼ばれた二人が振り向くと、そこには同じように泥のフィールドに入った円堂だ。豪炎寺と瑞貴は顔を見合わせて頷くと、瑞貴は円堂なパスを出す。もちろん同じように円堂にも泥がユニフォームに飛び散る。


「円堂！」

「守、いくよ！」


前方で走っていく二人を円堂は真剣な顔で見る。


（一番辛いのはサッカーができなくなる豪炎寺自身だ。その豪炎寺が今、全てを懸けて決勝戦に挑もうとしている……。瑞貴もそれを理解しているんだ。俺は…俺は――！）


円堂はギュッと胸をつかんで決意する。


「豪炎寺！」

「瑞貴！」


円堂がボールを豪炎寺に向かってパスをすると、次に瑞貴にパスして三人はゴールへ向かっていく。その姿を冬花も風丸も鬼道たちも心を打たれる。


「マモルくん……。瑞貴ちゃん……」

「鬼道！」

「ああ。俺たちも行くぞ！」

｢｢｢｢｢オウッ!!｣｣｣｣｣


そして全員が泥のフィールドに入って練習を始めた。泥の中は足場も悪く転んだりマトモにドリブルもシュートもできない。そのせいで全身が泥の中に落ちてしまうこともあった。