「リュウジの動きがよくなったの、ヒロトのおかげだね。ありがとう」

「仲間なんだから当然だよ。これは、瑞貴ちゃんと円堂くんが教えてくれたことだからね」


するとヒロトは自然な動きで瑞貴の両手を取る。


「ヒロト？」

「特に瑞貴ちゃんの仲間を思う優しさに俺は深く感動した。君のそばでそれを見習いたい――」


バシンッ！


「いたっ！」

「ヒロト!?　えっ、なんでボールが!?」

「ごめんごめん。ちょっとリキみすぎたよ」


急に飛んできたボールがヒロトの後頭部に当たった。苦笑して謝る様子を見て犯人は緑川のようだ。

ヒロトは頭を抑えながら緑川を恨めしげに見ると、二人の空気が変わった。


（緑川、邪魔しないでくれるかな？）

（昨日、気づかせてくれたことには感謝するけど、それとこれは別だよ）

「えっ？　えっ？」


バチバチと火花を散らしている緑川とヒロトなな、瑞貴は困惑していた。


「なんか、みんなノってますよね！」

「だって次はいよいよ決勝戦！　勝てば世界へ行けるんだもん！」


選手がイキイキとプレーする様子を見て、春奈も木野秋も冬花も嬉しそうに笑っている。だけど逆に久遠道也は顎に手を当てて厳しい表情で見て、神崎シンは微笑みながら黙々と記録を取っていた。

グラウンドにいないメンバーの風丸は鉄塔広場で、綱海と壁山は河川敷のグラウンドで、不動は森で特訓していた。



――夕方になると土方と吹雪は連携必殺技の特訓を続けていた。


「いくぞ！　今度こそ！」

「うん！」

「うりゃああぁあああ！」


二人は走り出すと土方が強力なシュートを蹴って吹雪は反応して撃つが、またタイミングが合わずゴールから思いっきり外れた方向に向かった。しかもその先には飛鷹がいる。


「征矢！　よけて！」

「えっ？　わっ！」


急に呼ばれて飛鷹は頭を抑えようとしたが、土で滑ってバランスを崩してしまって反動で足が思いっきり上がる。そこから現れた風の防壁によりシュートの威力がなくなった。


「今のは！」

「あのときと同じだ！」


鬼道も飛鷹も選考試合のことを思い出していた。闇野シャドウのダークトルネードに飛鷹は足を振り上げてできた風によって威力が弱まったのだ。


「征矢、大丈夫？」

「ああ。なんとか」

「ホントにスマン！」

「ごめんね、飛鷹くん」


差し出された瑞貴の手をつかんで飛鷹は立ち上がると、原因となった土方と吹雪は謝りに来た。……一連の光景を見ていた久遠とシンは顔を見合わせて頷いたのだった。