アジア予選一回戦で優勝候補のビッグウェイブスに勝利したイナズマジャパン。井上瑞貴も無意識に抑えていたプレーをこれからも思いっきり出すことを誓い意気込んでいた。

そして次の準決勝に向けて、今日も雷門中のグラウンドで練習に励んでいる。


「豪炎寺さん！」


宇都宮虎丸がゴールに向かう豪炎寺修也に声をかけると、ディフェンスの綱海条介と土方雷電が同時に駆け出して行く。


「させるかよ！」


一気に止めようとした二人だが、虎丸は隙を突いて豪炎寺にパスを送る。


「ナイスパスだ、虎丸！」

「ヘヘッ」

「ふっ！」


虎丸を褒めた豪炎寺は即座にゴールへ向けてシュートを撃つ。しかし円堂守がガッチリと止めた。


「よし！　今のはいい連携だったぞ！」

「はい！」


士気が高まってきたのも束の間。グラウンドにやってきた久遠道也と神崎シンに全員が注目する。


「全員集合！」


久遠たちは選手もマネージャーも全員食堂に集まらせてミーティングを始める。


「フットボールフロンティアインターナショナル・アジア予選第二試合の相手が決まった。――カタール代表デザートライオンだ」

「デザートライオン？」

「どんなチームなんスか？」


円堂と壁山塀吾郎が問いかけるとシンが説明する。


「このチームの特徴は、疲れ知らずの体力と当たり負けしない足腰の強さを備えているんだ」

「彼らと戦うためには、基礎体力と身体能力の強化が必要だ。カタール戦までにこの二点を徹底的に鍛えること、いいな」

｢｢｢｢｢はい!!｣｣｣｣｣


報告が終了して久遠とシンと食堂を出て行くと、久遠冬花も買い出しに出掛けた。残った者たちは課題について話し合いを始める。


「とは言っても、どんな練習をすればいいんだろう？」

「そんなモン、徹底的に走り込むしかねぇだろ。走って走って走りまくって、強い足腰を身に付けりゃいいんだ！」

「そうだな。それでいこう！」

「単純だが、それが一番か」

「あのー……すみません」


綱海の提案に円堂と鬼道が賛同すると、虎丸が控えめながらも声を上げた。


「申し訳ないですが、俺、これで失礼します」

「えっ、ああ……」

「また明日ね、虎丸くん」


戸惑う円堂と普通に挨拶を交わす瑞貴に、虎丸は礼をして食堂から出て行った。


「あいつ、またでヤンスか？」

「なんであいつだけ、いつも途中で帰っちまうんだ？」

「さあ？　なんでだろうな？」


合宿所ではなく自宅から通っているとはいえ、いつも途中で帰宅する虎丸に栗松鉄平も綱海も風丸一郎太も気になっていた。木野秋たちもそれを感じ取っている。


「みんな、虎丸くんの早退が気になってるみたい……」

「このままではチームの士気にも関わりかねません。ここは調査すべきかと――」

「わかりました！　任せてください！　キャプテン、瑞貴先輩、私たちで虎丸くんのことを調べてみます！　何かあったら連絡しますね！」

「ああ……」

「き、気をつけて……」

「行きましょう！　先輩！」

「わ、私も!?」


目金欠流も押しのけて発言した音無春奈に、円堂も瑞貴も呆気に取られて止められず、秋も連行されてしまった。テンションが上がっている春奈を止めるのは、兄の鬼道でも正直不可能なのである。



――ミーティングのあと久遠たちに練習内容を伝えた瑞貴たちはグラウンド走り込みをしていた。連日天候に恵まれたが逆に暑さが厳しくなっている。


「よし。今日の特訓はここまで！」

｢｢｢｢｢だぁ～～……｣｣｣｣｣


円堂が終了の合図を出すと、次々寝そべったり膝に手を当てたりなどみんなバテている。マトモに立っているのは瑞貴と円堂と豪炎寺と鬼道と不動明王だけだ。