「どうぞよろしく。鬼道クン」

「黙れ！」

「ご不満のようだけどさぁ、俺だって響木監督から認められてここに来てんだよ」

「……わかってる」

「わかりゃいいんだ。わかりゃ。フフッ」


不動の態度に佐久間は声を上げるが響木に呼ばれたののは事実だ。鬼道も口ではそう言っているが本心は違うだろう。円堂と土方と染岡は心配そうに鬼道に近づく。


「鬼道……」

「なんだあいつ？　いちいち嫌味だなぁ」

「相手にすんな」

（……それを竜吾が言うか？）


瑞貴は内心そう思いながら不動を見る。さっきの場から離れてもまだ説明はあるし、ちゃんと体育館の中にいるのでホッとした。


「円堂、鬼道。お前たちがそれぞれのキャプテンだ。いいな？」

「はい！」

「はい……」

「瑞貴、豪炎寺。お前たちは副キャプテンだ」

｢｢はい！｣｣

「試合は二日後。一人一人の能力を見るために連携技は禁止とする。持てる力の全てを出してぶつかれ！」

｢｢｢｢｢はい!!｣｣｣｣｣


そして今日は各チームの使うグラウンドを決めたあと解散となった。だけど瑞貴は響木から資料を受け取って声を上げる。


「夕弥、士郎、条介、勇気、雷電、ヒロト、リュウジ、不動くん」

｢｢｢｢｢ん？｣｣｣｣｣

「みんなは選考試合が終わるまで私の家に滞在することになったから。一緒に来て」

「俺はお断りだね。なんで試合前でも仲良ししなきゃなんねぇんだよ。しかも相手チームの副キャプテンさんの家なんかにな」

「お前、瑞貴姉にまでそんな言い方ないだろ！」

「いいよ、夕弥。不動くんには悪いですけど、響木監督の指示なんです。部屋はチームごとに分けていますから、安心してください」

「チッ」


木暮を抑えつけて問答無用で言う瑞貴の反応に、不動は面白くなさ気に舌打ちした。



☆☆☆☆☆


みんなを連れた家に着き瑞貴が扉を開けると、そこには意外な人物がいた。


「お帰り。瑞貴」

「シン!?　あんたまた唐突に……」


出迎えくれた神崎シンも、エイリア学園事件以来は会っていないので久しぶりの再会になる。

とりあえず瑞貴は全員を二段ベッドが二つずつある部屋に案内し、部屋割りは選抜チーム通りに、綱海と吹雪と土方とヒロト、木暮と不動と緑川と立向居となった。

夕食もシンがカレーとサラダを作ってくれたおかげで用意する手間が省けたが、瑞貴は衝撃的なことを聞かされる。


「夏未ちゃんが留学!?」

「うん。今夜発つよ。……行くかい？」


シンが車の鍵を出して問いかけると、瑞貴は頷いて急いで部屋に戻ってある物を取りに行く。今日のために用意しておいたのだ。


「みんな！　私ちょっと出かけてくる！　先に夕飯食べてて！」

｢｢｢｢｢？｣｣｣｣｣


慌てながら出て行く瑞貴にそれぞれが不思議思ったり顔を見合わせている。瑞貴は車庫に止めてあるシンが乗って待ってる車の助手席に乗り込んだ。


「準備オッケーだよ！」

「よし」


車が発進されて瑞貴の家の車庫から出ると、道路を走り出す。


「ねぇ、シン。夏未ちゃんの留学する理由って……」

「円堂くんのために調べに行くんだよ。僕も理事長に協力依頼をされたからね」



――そして東京国際空港に辿り着き、車から降りた瑞貴はエントランスで夏未と雷門総一郎の姿を見つける。


「夏未ちゃん！」

「瑞貴!?」


現れた親友に夏未は驚かずにいられなかった。やはり瑞貴には黙って旅立とうとしていたようだ。