「父さん！　そんなことをしたらみんなが……！」

〈怖じ気づいたのですか、グラン？　あなたにはガッカリです。ウルビダ、お前が指揮を取りなさい〉

「はい。お父様」

「父さん！」


ウルビダの声と共にヒロトの訴えも虚しくスクリーンは消える。そしてウルビダは雷門イレブンを強く睨んだ。何かを仕掛けてくるとわかっていても……とても嫌な予感がする。

それでも試合は続いているので、瑞貴はドリブルで上がっていく。それと同時にウルビダは右手を上げる。


「リミッター……解除」


ウルビダと共にヒロトもジェネシスもユニフォームのボタンを押した。瑞貴は警戒しつつウルビダを抜かすが、いつの間にか抜かれたはずのウルビダがボールを奪っていた。


｢｢｢｢｢なっ!?｣｣｣｣｣

「動きが……見えない!?」


雷門イレブンも、人並み以上に動体視力が優れた瑞貴でさえ、ウルビダの動きを見ることができなかった。

しかもウルビダを筆頭にジェネシスは超スピードでＭＦやＤＦを抜かしていく。その動きに鬼道たちは驚きを隠せない。


「人間の能力を超えている！　これがリミッター解除なのか!?」

〈人間は体を守るために限界を超える力を出さないよう、無意識に力を制御する。ではその全てを出し切れるとしたら――〉

「バカな！　そんなことしたら彼らは……！

「筋肉は悲鳴を上げ、体はボロボロになってしまう……！」

｢｢!?｣｣


スピーカーから聞こえる吉良が説明したリミッター解除の代償を、響木と瞳子は理解すると、それが聞こえた円堂と瑞貴は目を見開いた。


「父さん！　今すぐやめさせて！」

〈そうさせたのは瞳子、お前なのだよ？〉

「お父様の望みは私たちの望み！　これがジェネシス最強の必殺技！」


ヒロトとウィーズが飛び上がり、ウルビダがパワーを溜めると地から宇宙服を着た五羽のペンギンが飛び出し、ボールと共に空に上げる。それを先に上空にいたヒロトとウィーズが同時に撃った。


｢｢｢スペースペンギン！｣｣｣

「ムゲン・ザ・ハンド！」


ボールを抑えることができても、追加するペンギンの攻撃でムゲン・ザ・ハンドは砕け散り立向居を弾いてゴールに入る。


《ゴォ――ルッ!!　ムゲン・ザ・ハンド三度敗れる！　２対３！　ジェネシスにまたも勝ち越しを許してしまった――っ！》


だけど代償は大きい。現にジェネシスは体を抑えて苦しんでいた。


「お前たち……」

「ウルビダ……。ヒロト……」

「これくらい……お父様のためなら……！」

「そう……父さんのため……！」


瞳子が言ったようにジェネシスの筋肉は悲鳴を上げている。でもウルビダもヒロトもジェネシスも吉良のためと耐えている、


「なんだよ、これ……。ヒロトですら――ジェネシスですら道具なのかよ!?」

「自分の計画のためなら彼らがどうなったっていいって言うの!?」


こんな状態になってもヒロトたちジェネシスは吉良に尽くしている。それなのになんとも思わない吉良に、円堂や瑞貴や雷門イレブンは許されない行為をしている吉良を強く睨みつけた。