「みんな……。私は今日まで、エイリア学園を倒し父の計画を阻止するために戦ってきたきた……。でも……あなたたちを利用することになってしまったのかもしれない……私には、監督の資格が――」

｢｢違う！｣｣


瞳子の言葉を遮って声を上げたのは円堂と瑞貴だった。


「円堂くん……。井上さん……」

「監督は、俺たちの監督だ！　監督は、俺たちが強くなるための作戦を考えてくれた！　次に繋がる負け方を教えてくれた！」

「瞳子監督は私たちの挑戦をいつも見守ってくれました！　だから、ここまで来られたんです！」


二人に同意するように鬼道も豪炎寺も頷き、壁山も目金も綱海も木暮も立向居も、マネージャーたちも微笑む。


「監督のやり方は好きじゃなかったけど、今ならわかる。監督はずっと俺たちのことを思ってくれていたんだって！」

「スパイとか言うて、ごめんなさい！」

「監督のことを疑って、すみませんでした！」


富士山麓に来る前に疑っていた一之瀬もリカも土門も、瞳子が最初から自分たちの味方だとわかってくれた。


「あたしたちは、監督に鍛えてもらったんだ！」

「そうです。エイリア学園のためじゃない、俺たち自身のために！」

「監督に感謝っス！」

｢｢みんな……！｣｣


次々と瞳子への感謝の言葉が出て瑞貴も円堂も顔を綻ばすと、「監督」と吹雪士郎の声が上がった。


「僕も、監督に感謝しています」

「吹雪くん……！」


吹雪はサッカーが怖くなった。それは今も変わらず、いつもの瞳子ならメンバーから外すと告げられてもおかしくないのに、吹雪が立ち直るために必要な仲間がいるから残ることを許可してくれた。


「監督！　俺たちには瞳子監督が必要なんです！　最後まで一緒に戦ってください！」

「この戦いは、ここにいる全員が必要なんです！」

｢｢｢｢｢うん！｣｣｣｣｣

「みんな……！」


瞳子は感謝してもし尽くせない、そんな気持ちが溢れていた。すると瑞貴が瞳子の両手を優しく取る。


「それにまだ、私との約束を果たしていませんよ？」

「井上さん……」


瑞貴と瞳子が交わした約束――それは戦いが終わったら、瑞貴が瞳子のことを『姉さん』と呼ぶことだ。姉と慕っていると口にしても瑞貴は瞳子のことをそう呼ばなかった。


「なあ、約束ってなんだ？」

「私と瞳子監督の秘密。だから守たちには内緒」

「えぇっ!?　教えてくれよー！」

「ヤダ」

「じゃあ瞳子監督！」

「……内緒ね」

「そんな～！」

｢｢｢｢｢アハハハハッ！｣｣｣｣｣


こんなときでも場を明るくさせてくれる円堂と瑞貴。二人がキャプテンと副キャプテンのチームだからこそ、瞳子もここまで引っ張ってこれたのかもしれない。