瑞貴はみんなに元の世界で起こったサッカー部のいじめについて話した。

それを聞いたとき、全員瑞貴が言っていたことを理解した。そして、瑞貴が瞳子を信じている理由も。


「瑞貴ちゃんがそんな目に……」

「ヒドいですね。瑞貴さんはみんなと一緒に勝ちたいから、サッカーが好きだからがんばったのに」

「なんだよそいつら！　いくらなんでも海の広さに比べたって全然ちっぽけじゃねぇぞ！」

「その発端を起こした監督も、あたしスゴい気に入らない！」


みんな心から怒っている。それは瑞貴のことが大切だからだ。

瑞貴は自分が本当に幸せだとわかる。向こうの世界では綾香が唯一の味方であり仲間だと思っていた。だけど今はこんなに味方であり仲間がいる。それが心から嬉しかった。



☆☆☆☆☆


次の日。瑞貴はみんなと一緒に行かず、円堂の家に向かった。するとちょうど円堂が家から出てきて瑞貴に気づく。


「おはよう瑞貴！」

「おはよう！」


二人は並んで雷門中へ向かって歩き出す。


「そういえば立向居や綱海たちは？」

「雷門中へ先に行った。一哉と飛鳥とリカちゃんはどうするかわからないけど、みんな絶対に集まるって私は信じている」

「ああ、俺もだ。みんなのことも、瞳子監督のことも信じる」


二人が雷門中の校門をくぐると、グラウンド前に私服姿のヒロトがいた。


｢｢ヒロト……｣｣

「やあ、円堂くん、瑞貴ちゃん。おはよう」

「……おはよう」

「……おはよう、ヒロト」


何事もなく普通に挨拶するヒロトと違い、円堂と瑞貴は戸惑いながらも挨拶を返す。


「早くおいでよ。俺たちのホームグラウンドにさ」

「ヒロトの言うホームグラウンドって、富士山のこと？」

「正解」

「お前、本当はなんなんだよ？　瞳子監督とどんな関係があるっていうのさ!?」

「なんでもないさ。君たちには関係ない」

「それじゃ答えになってない！」

「そうかな？」

「――それに関係なくないよ」


円堂とは反対に冷静な声を放つ瑞貴に、二人は見つめる。


「瞳子監督は私たちの監督であり、そして――私が心から姉と慕っている人だから」

「！」


真っ直ぐで嘘偽りのない言葉にヒロトは一瞬目を見張り、円堂は瑞貴が瞳子を信じている理由がわかって改めてヒロトに訊く。


「話せよ、ヒロト！」

「――俺はジェネシスのグラン……基山ヒロトじゃない」


一つ目を閉じたヒロトは、鋭い瞳で円堂と瑞貴を見る。