ハートを乱舞して一之瀬一哉に抱きつく浦部リカ。

巻き込まれない内に瑞貴は吹雪を探しに行こうとすると、円堂が落ち込んでいた。幻覚だろうが犬耳と尻尾が垂れて見える。


「次は一緒に行こう？　私もあそこから見える夕日が好きだし、一緒に特訓もしよう」

「ホントか!?　楽しみにしてるな！」


さっきと打って変わり、イキイキと円堂は荷物を取りに行く。もう一度言う。幻覚だろうが犬耳と尻尾が見えた。しかも今度は耳がピンッと立って尻尾がブンブンと振っている。

それを見た瑞貴は微笑んで吹雪を探しに向かった。



――吹雪は稲妻町にあまり詳しくないので行く所が少ない。片っ端から探そうと瑞貴はまず河川敷に向かうと、吹雪は芝生に座っていた。


「見つけた、士郎」

「っ！　瑞貴ちゃん……！」


瑞貴が隣に座った途端、吹雪は瑞貴に抱きついた。突然のことで驚いたが吹雪は震えていることに気づく。


「……瑞貴ちゃん、僕はどうしたらいい？」

「士郎？」

「僕だってみんなとサッカーしたい……だけどボールを蹴ったらアツヤが出てしまう……。アツヤさえいなければと思ったのに…できないんだ……。追い出したら本当にアツヤがいなくなってしまう……！」


瑞貴は何も言うことができない。吹雪の問題であるし、ヘタな慰めをしてしまったら復帰するのが遅くなるかもしれない。


「……士郎、これだけは言わせて」

「？」

「士郎は一人じゃない。私やみんながいるよ」


そう言って瑞貴は吹雪の頭を撫でる。吹雪はその意味がよくわからなかったが、撫でてもらう感覚が心地良くてしばらくそうしていた。

……家に帰るまで吹雪が瑞貴の腕にしがみついたままだった。一之瀬や財前塔子は北海道でも見たからまだマシだが、リカと木暮と立向居と綱海が大騒ぎしたのは言うまでもない。