「ん？　よお、また会ったな」


ズド――ンッ!!


｢｢｢｢｢!?｣｣｣｣｣


雷門イレブンが言葉を発する前にサーフボードが、ちょうど少年の横に落ちたのでみんな思わず驚く。


「ん？　サッカーって砂浜でもやるもんなのか？」

「えっと、大抵はどこでもできるし、足場の悪い砂浜だといい特訓にもなりますから」

「へぇ、なるほど。がんばれよ」

「わっ」


少年は説明した礼なのか、瑞貴の頭をポンポンと叩く。そして離れた所でシートを敷き、サーフボードを日陰にして昼寝を始めた。

あまりのぶっ飛んだ出来事に、夢か現かと円堂は呟く。


「海から…飛んできた……？」

「……カッコいい」

｢｢｢｢｢ええっ!?｣｣｣｣｣


またもや瑞貴の呟きに全員が反応すると、それに気づいた瑞貴は顔を真っ赤にしてビクッと肩を震わせる。


「と、とにかく早く続きやろう！　守も正義の鉄拳を身につけなくちゃならないんだし、私たちもレベルアップしなきゃ！」


誤魔化すようにポジションに戻る瑞貴。いつもと様子が違うので、みんなはそれぞれ顔を見合わせる。

気を取り直して今度は一之瀬が塔子に向かってパスを送る。


「塔子！」

「でやぁ！」

「マジン・ザ・ハンド！」


完全にマジン・ザ・ハンドをモノにした立向居が、見事塔子のシュートを止めた。


「ナイス勇気！　完璧なマジン・ザ・ハンドだったよ！」

「ありがとうございます！」

「いいぞー塔子！　どんどん撃っていけー！」

「これじゃ、エイリア学園に通用しない……」


瑞貴からの賞賛に立向居は嬉しくなり、対して塔子は円堂の声にも反応せずリカを見た。


「リカ！」

「ん？　なんや？」

「あたしとバタフライドリームやってみないか？」

「ハアッ!?　なんであんたとやらなアカンの!?」

「あたしたちも、強くならないとダメなんだ！」

「そうだな。攻撃のバリエーションが増えれば、作戦の幅も広がる」

「アカンアカン！　あれはウチとダーリンのラブラブ技や！　それかハニーやないと！」

「まだ一度もできてないけどね。瑞貴姉となんてやったことないし。ウッシッシッシッ」


余計なことを言う木暮を横目で見たあと、リカは両手を腰に当てる。


「せやせや。ダーリンやハニーが許さへんわ！　なー、ダーリン！　ハニー！」

｢｢いいんじゃない/か？｣｣

「えっ」


アッサリと承諾した瑞貴と一之瀬に、リカは白くなって固まった。


「結構いけるかもしれないし」

「やってみなよ。ね？」

「んー！　やるやるぅ、ええ考えや。さすがダーリンとハニーは目の付け所がちゃうわ～。ほらほら！　何グズグズしとんねん塔子！　さっさと練習やるで！」

「オウッ！」


二人が賛同したからすぐに考えを変え、塔子と一緒にやると決めたリカ。そんな二人の様子にマネージャーたちは苦笑する。


「あの二人でうまくいきますかねぇ……？」

「意外に合うかもね……」

「ええ……」

「いくで、塔子！」

「オウッ！」

｢｢バタフライ――ああっ！｣｣

「クッ！」


リカと塔子はジャンプして空中で手を繋ぐがバランスを崩してしまう。ボールはそのまま塔子が蹴るが、ゴールから思いっきり反れてしまった。


「えっ、ちょっ、てぇい！」


ボールはなんと瑞貴に向かって来たので、咄嗟のことに瑞貴は対処できず別方向に蹴ってしまった。


「ごめん瑞貴！　ミスった！」

「焦りすぎやわ」


着地した塔子とリカを始め、全員ボールの飛んだ方向を見ると……。


「どわっ！」

｢｢｢｢あっ！｣｣｣｣


瑞貴と円堂と塔子とリカが叫んだのは無理もない。ボールは先ほどの少年のサーフボードに当たってしまい、さらに反動で顔にぶつけてしまった。


「なっ……うおおぉぉおおお!!」


サーフボードを持って起き上がった少年の元に、四人はすぐに向かった。


「申し訳ありません！」

「ごめん！　怪我しなかったか!?」

「……これ、蹴ったの誰だ？」

「私です！　本当に申し訳ありませんでした！」

「…………」


正直に言って勢いよく頭を下げる瑞貴。命の恩人に仇で返してしまったのだからムリはない。少年は拳を握って震えているので、殴ると思った円堂が「ちょっ！」と慌てて止めようとすると……。


「――サンキュ」

「へっ？」


なんと少年は拳を解いて瑞貴の肩に手を置いて礼を言った。思いがけない行動に瑞貴は驚く。